著者
川崎 千恵 麻原 きよみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_52-4_62, 2012-12-20 (Released:2013-01-09)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的:在日中国人女性の,育児経験における困難と困難への対処のプロセスを記述する.方法:日本で出産を経験し学童までの子どもを育てた経験を持つ,首都圏近郊在住の中華人民共和国出身の在日中国人女性8名に半構造的面接を行い,質的記述的分析を行った.結果:育児で繰り返し遭遇する困難として«日本の文化的な母親をイメージできない»,«異文化の見えない壁に遮られる»,«異文化の中で自分を見失う»の3つの困難が段階的に抽出された.また,対処方法として,«予期できない困難に学習を重ね対処する»が抽出された.困難に繰り返し対処する結果得られるものに«母親としての新しい自分を見出す»が抽出された.困難への対処を経て得られたものとして,«母親としての新しい自分を見出す»が抽出された.結論:本研究の結果を困難の各段階でみられた在日中国人女性の心の変化や対処に着目したところ,Pedersenの5段階モデルと類似していたことから,育児を始めることで文化変容を迫られ,母親になると同時に異文化適応を経験していることが示唆された.
著者
川崎 千恵
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.602-614, 2018-10-15 (Released:2018-10-31)
参考文献数
26

目的 本研究は,乳幼児を育てる母親を対象とした地域活動の機能とその実態,機能の構造を明らかにするとともに,機能に関連する母親の先行要因,地域活動の形態を明らかにすることを目的とした。方法 先行研究から得られた概念枠組みに基づき,地域活動の機能を測定する5つの下位尺度から成る45項目,母親の先行要因,地域活動の形態等から成る調査票を作成し,首都圏近郊の地域活動に参加している母親に1,100人に配布した。各下位尺度の構成概念妥当性と信頼性について,確認的因子分析と信頼性係数により検討した。地域活動の機能を測定する5つの下位尺度の構造について,共分散構造分析により検討した。地域活動の機能に関連する母親の先行要因,地域活動の形態については,相関係数および重回帰分析の結果により検討した。結果 回答を得た405人(回収率36.8%)のうち379人を分析対象とした(有効回答率93.5%)。地域活動の機能を測定する「母親に効果をもたらす地域活動機能評価尺度」の確認的因子分析の結果,5つの各下位尺度(39項目)のモデル適合度と信頼性係数が高く,内的整合性が確保されていた。共分散構造分析の結果,下位尺度の構造が明らかになった(CFI=0.858, RMSEA=0.060)。重回帰分析の結果,地域活動の5つの機能に関連する母親の先行要因や地域活動の形態が明らかになった。結論 「母親に効果をもたらす地域活動機能評価尺度」(CAFES)で測定する,地域活動の5つの機能は,他の機能と関連しながら働くことが示唆された。地域活動の機能に関連する先行要因や活動の形態が確認され,とくに参加回数が「10回以上」であること,活動の形態では「運営に母親が携わる」「半日開催」であることが,機能を促進する可能性が示唆された。CAFESを一般化して使用するためには,集団特性に多様性を持たせ,精錬することが今後の課題である。
著者
川崎 千恵
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.90-97, 2014-03-31

目的:在日外国人女性の出産・育児の過程において経験する困難や,異文化社会で出産・育児を行うことの健康への影響,出産・育児の過程における支援ニーズを明らかにし,今後の在日外国人女性への育児支援策を検討するうえで示唆を得ることを目的とした.方法:医学中央雑誌,CINAHL,PubMedを用いて検索し,抽出した国内外の原著論文について分析を行った.結果:在日外国人女性は出産・育児の過程において,異文化間の葛藤やジレンマ,サポートを得られない,孤立や孤独感などの困難を経験していることが明らかになった.また,これらは産後うつなどの精神的な健康にも影響しており,情報やソーシャル・サポートのサービスへのアクセス,異文化に関連する困難への対処についての支援が必要であることが明らかになった.結論:文献レビューの結果,日本の文化の影響を考慮した在日外国人女性への具体的な支援策を検討することが今後の研究課題と考えられた.特に,在日外国人女性の支援ニーズを満たし,精神的な健康を維持するために必要な方法についての検討が求められていると考えられた.保健師等専門職は,情報やソーシャル・サポート,ソーシャル・ネットワークにつながる仕組みを整備するとともに,在日外国人女性が出産・育児の過程で直面していると考えられる困難に共感し継続的に支援を行う必要があること,家族に対する働きかけが必要であることが示唆された.