著者
成木 弘子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 = Journal of the National Institute of Public Health (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.47-55, 2016-02

超高齢社会を迎える2025年問題に対応する為に地域包括ケアシステムの構築が開始されている.地域包括ケアシステムは,英語ではCommunity-based integrated care systemsと表記され,ケアの統合を目指している.また,多職種および多機関の連携が重要であるが,統合や連携,および,システムのとらえ方は様々である.そこで本稿では,包括地域ケアシステムの構築における "連携"の課題と"統合" 促進の方策について,II.地域ケアにおけるシステムアプローチの基本,III.ケアシステムの連携と統合の概要,IV.地域包括ケアシステムを構築する為の統合(integration)の方法を整理した上で,V. 5 年後まで達成する課題をふまえながら対応方法を探求することを目的とした.その結果,「調整・協調(coordination)」レベルに統合した地域ケアシステムの構築が急務の課題であると考えられ, 5 年後にこの課題を達成する為には,(1)混乱している情報の整理と適切な情報の発信,(2)「調整・協調(coordination)」の統合レベルの地域包括ケアシステムへの推進方法の開発,(3)人材の育成が必要であると結論づけた.
著者
星野 明子 桂 敏樹 松谷 さおり 成木 弘子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-29, 2000-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
6

本研究の目的は, 地方都市における地域組織活動として位置づけられる保健推進員活動が, 活動参加者の心理的側面に与える影響を明らかにすることである. 対象は, 保健推進員活動の成員356名である. 調査項目は, 対象者の属性 (年齢, 学歴, 仕事の有無, 経済的ゆとり, ボランティア・福祉への関心, 以前の活動経験の有無) と, 主観的健康感, 活動満足度および自尊感情, 自己効力感, 自己実現的価値観である.その結果, 以上のことが明らかになった.1. 年齢とボランティア・福祉への関心は, 保健推進員の活動満足度を強めた.2. 活動満足度と経済的ゆとりは, 自尊感情を強める要因であった.3. ボランティア・福祉への関心と活動経験年数は, 自己効力感を強める要因だった.4. 年齢は自己実現的価値観を弱め, 活動満足度, 学歴, 経済的ゆとりは, 自己実現的価値観を強める要因であった.保健推進員活動は, 対象者のボランティアへの関心を満足させることで, 活動満足度を強め, 自尊感情と自己実現的価値観に影響を与えることが明らかになった.今後の課題として, 活動参加者に対する地域組織活動の効果を明らかにするために, 保健推進員の心理的側面 (自尊感情, 自己効力感, 自己実現的価値観) を縦断的に検討していくことが必要と思われた.
著者
星野 明子 桂 敏樹 成木 弘子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、京都市で最も高齢化率の高いA区において、高齢者と中高年対象にした交流の場を設置し、介護予防・閉じこもりのための自立支援システムを構築し、その機能について検討することを目的としている。本年度も、F商店街の空き店舗に高齢者の自立支援のための「すこやかサロン(以下、サロン)」を常設設置し(週3回、看護師または保健師の資格を持つスタッフが常駐する)運営してきた。昨年度に引き続き、開設日には商店街の通路を利用した体操(ストレッチ、音楽に合わせた手拭い体操と行進曲による足踏み運動など)も継続して実施してきた。さらに、周辺の組織の商店街振興組合や学区の女性会と連携し、「転倒予防」「骨粗鬆症」「メタボリック症候群」などのデーマによる講義と体操実施を組み合わせた健康講座を3回企画実施した。上記の活動をとうして、健康づくりの拠点として中高年と高齢者層を対象としたサロンの活用を試みた。今年度は、この活動が与える影響について、サロンの利用者とサロン周辺の商店主たちを対象に個別のインタビューを実施、さらに学区女性会メンバーと商店振興組合の商店主と成人家族を対象にデータ収集と分析を実施した。サロンは、体操参加者の運動習慣の維持や摂取カロリーへの意識づけに影響するだけでなく、会話することによる安心感の維持と孤立感の低下にも影響を与えていることが推測された。サロンは利用者である地域住民や住民同士の交流の場となるだけでなく、サロンと商店街振興組合、組合有志、さらに学区女性会などの地域組織との協働によって、介護予防のための小地域ネットワークシステム構築の拠点としての機能を持つことが考えられる。