著者
日本老年医学会CGAツール選定・最適化WG 小宮 仁 梅垣 宏行 川嶋 修司 小島 太郎 竹屋 泰
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-12, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
22

著作権とは,無体財産権の一つで,著作物に対する独占的・排他的権利で,著作者を保護するため,その精神的な創作活動の所産である著作物に対して著作権法が認めたものである.老年医学の診療・研究において,高齢者総合機能評価(CGA:Comprehensive geriatric assessment)ツールが汎用されているところであるが,個々のCGAツールは著作物であり,その使用にあたっては,著作権侵害にならないように留意する必要がある.著作権法は無方式主義を採用しており,著作物の創作とともに著作権は自動的に発生する.また,著作権の保護期間は,原則著作者の死後70年間である.したがって,ほとんどのCGAツールは著作権法の保護を受ける.著作物を複製(コピー)する場合,私的使用目的などの例外的場合でない限り,著作権者に無断で行えば著作権を侵害する可能性がある.参考のために,CGAツールの著作権に関する情報について,可能な範囲で調査を行い,その結果を表で提示した.著作権者が不明で許諾を得ることができない場合には,著作権者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け,通常の使用料額に相当する補償金を供託することで,著作物を適法に利用することができるとする制度がある.
著者
木下 かほり 佐竹 昭介 西原 恵司 川嶋 修司 遠藤 英俊 荒井 秀典
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.188-197, 2019-04-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1

目的:外出低下は身体機能や抑うつの影響を受け,いずれも低栄養と関連する.低栄養の早期兆候である食事摂取量減少と外出低下との関連を検討した.方法:老年内科外来を初診で受診した高齢者で認知症あり,要介護認定あり,施設入所中,急性疾患で受診,調査項目に欠損がある者を除外し463名(男性184名,女性279名)を解析した.調査項目は性,年齢,BMI,服薬数,基本チェックリスト,MNA-SFとした.外出週1回未満を外出頻度低下とし,過去3カ月に中等度以上の食事摂取量減少ありを食事摂取量減少とした.外出頻度低下有無で2群に分け調査項目を比較した.目的変数を食事摂取量減少あり,説明変数を外出頻度低下ありとしたロジスティック回帰分析を行った.調整変数は,性,年齢,および,外出頻度低下有無2群間に差を認めた項目で多重共線性のなかった服薬数,基本チェックリストの栄養状態項目得点,口腔機能項目得点,身体機能項目得点,うつ項目得点とした.結果:平均年齢は男性79.6±5.9歳,女性79.9±6.1歳,外出頻度の低下は104名(22.5%).外出頻度低下あり群では外出頻度低下なし群と比べて,高年齢で服薬数が多く,MNA-SF合計点が低く,基本チェックリスト合計点が高かった(すべてp<0.05).ロジスティック回帰分析では性,年齢,服薬数,栄養状態項目得点,口腔機能項目得点で調整後,食事摂取量減少ありに対する外出頻度低下ありのオッズ比2.5,95%信頼区間1.5~4.4,さらに身体機能項目得点およびうつ項目得点で調整後のオッズ比2.0,95%信頼区間1.1~3.6であった.結論:生活機能の自立した高齢者では多変量調整後も外出頻度低下は食事摂取量減少と関連した.食事摂取量減少はエネルギー出納を負に傾け体重を減少させ低栄養をきたす.低栄養の早期予防には日常診療で高齢者の外出頻度に注目することが重要である.
著者
河合 めぐみ 佐藤 恵 川嶋 修司 大城 宏之 臼田 多佳夫 吉川 裕之 大篠 浩
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.66-70, 2004-06-25 (Released:2012-08-27)
参考文献数
12

聖隷予防検診センターにおけるヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌治療の現状と今後の展望について報告する。まず上部消化管内視鏡検査にて潰瘍の診断と,迅速ウレアーゼテストを行った。除菌治療を先行させた後,潰瘍の深さ,大きさに応じて抗潰瘍薬を投与した。そして再度内視鏡検査を施行し潰瘍治癒を確認した後,尿素呼気試験を施行した。2000年11月より,2003年10月までに尿素呼気試験を終了した症例は計193例,平均年齢54.0歳,男性158例,女性35例で,症例のうちわけは胃潰瘍73例,十二指腸潰瘍91例,両潰瘍合併29例であった。除菌成功率は85.5%で,副作用は下痢が最も多かったが,いずれも軽度であった。アルコールや喫煙の生活習慣と,除菌治療の成功率とは相関を認めなかった。除菌成功後の潰瘍再発率は3.2%と非常に低率であったが,除菌失敗後の潰瘍再発率は47.4%と高率であった。除菌治療は,成功すると潰瘍再発が少ないため,有効な治療法である。しかし,失敗すると再発率が47.4%と高率であった。潰瘍はストレスやアルコール,喫煙などの因子も関与するが,基本的に主因はH.pyloriであることを再認識した。1日も早い2次除菌治療法が確立され,保険適応になることが望まれる。