著者
奥田 一博 川瀬 知之 鈴木 啓展
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

歯周疾患により失われた歯肉および歯槽骨を成体由来細胞、増殖因子、マトリックスの三者を用いて組織工学的に再生させることを目的とした。とりわけ、細胞供給については少量の組織片から培養操作を経てシート状の大きさに拡大することにより初めて臨床応用が可能となった。具体的には歯肉組織片から上皮細胞と線維芽細胞に分離・培養して培養上皮シートと培養線維芽細胞シートを完成させた。また骨膜組織片から培養骨膜シートを完成させて、すでに報告済みの多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HAp)顆粒混合物に被覆する形で歯槽骨欠損部に臨床応用を行った。基礎的研究成果として、培養上皮シートの細胞挙動、動物製剤を含まない培地で歯肉スポンジを培養する方法、骨芽細胞・歯根膜細胞における肝細胞増殖因子(HGF)の作用、細胞外ATPおよびATPγSの歯根膜細胞増殖に対する作用について検討した。臨床的研究成果として、培養線維芽細胞シートを従来の結合組織移植片の代替物として用い露出根面の歯肉被覆に成功した。培養骨膜シートを多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HAp)顆粒混合物と用いることで、骨再生が飛躍的に向上した。今後、臨床研究については細胞プロセシングセンターでの培養を規格化し培養骨膜シートの症例数を増やしてかつ長期的予後を観察することで先進医療として申請したい。基礎的研究に関しては、さまざまな足場材料を検討するとともに細胞の播種方法に多血小板血漿やヒアルロン酸を応用することで細胞の更なる高密度の培養を図る予定である。