著者
杉田 典子 中曽根 直弘 花井 悠貴 高橋 昌之 伊藤 晴江 両角 俊哉 久保田 健彦 奥田 一博 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.219-228, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
24

目的 : 化学的プラークコントロール法としてグルコン酸クロルヘキシジン (CHG) 配合洗口液が効果的であるが, アレルギーなどの副作用が問題視されている. そこで今回, 塩酸クロルヘキシジン (CHH) と塩化セチルピリジニウム (CPC) を抗菌成分として配合した洗口液を開発し, 基本治療終了後の歯周炎患者が4週間使用した場合の口腔細菌に対する効果を評価した.  材料と方法 : 新潟大学医歯学総合病院歯周病科を受診中で, 20歯以上を有し歯周基本治療後5mm以上の歯周ポケットを1~7部位有する歯周炎患者30名を対象とした. 新洗口液 (CHH+CPC群), CHG配合のコンクールF (CHG群), 抗菌成分を含まないコントロール洗口液 (コントロール群) を使用する3群にランダムに各10名を割付け, 二重盲検法で比較した. ベースラインおよび使用4週後に唾液・舌苔・歯肉縁上プラークを採取し, 総菌数, 総レンサ球菌数, Porphyromonas gingivalisおよびStreptococcus mutansの菌数を測定した. またterminal restriction fragment length polymorphism (T-RFLP) 法による解析を行った.  成績 : いずれの洗口液でも有害事象は認められなかった. ベースライン (術前) と4週目を比較した結果, CHH+CPC群において唾液中総菌数とS. mutans数, 舌苔中総菌数, 縁上プラーク中総レンサ球菌数が有意に減少していた. CHG群においては, 縁上プラーク中総菌数の有意な減少が認められた. コントロール群では舌苔中総菌数および総レンサ球菌数が有意に減少していた. T-RFLP解析の結果, CHH+CPC群の唾液中において制限酵素Msp I切断断片から推定されるStreptococcus群, Hha I切断断片から推定されるStreptococcus・Eubacterium群, Parvimonas群およびPorphyromonas・Prevotella群が有意に減少していた. 縁上プラーク中の細菌については, Hha I切断断片から推定されるStreptococcus・Veillonella群がCHG群で有意に減少していた. その他に有意な変化は認められなかった.  結論 : これらの結果より, CHH+CPC配合洗口液はより安全に使用でき, CHG配合洗口液と同程度以上の抗菌効果をもつことが示唆された.
著者
奥田 一博 川瀬 知之 鈴木 啓展
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

歯周疾患により失われた歯肉および歯槽骨を成体由来細胞、増殖因子、マトリックスの三者を用いて組織工学的に再生させることを目的とした。とりわけ、細胞供給については少量の組織片から培養操作を経てシート状の大きさに拡大することにより初めて臨床応用が可能となった。具体的には歯肉組織片から上皮細胞と線維芽細胞に分離・培養して培養上皮シートと培養線維芽細胞シートを完成させた。また骨膜組織片から培養骨膜シートを完成させて、すでに報告済みの多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HAp)顆粒混合物に被覆する形で歯槽骨欠損部に臨床応用を行った。基礎的研究成果として、培養上皮シートの細胞挙動、動物製剤を含まない培地で歯肉スポンジを培養する方法、骨芽細胞・歯根膜細胞における肝細胞増殖因子(HGF)の作用、細胞外ATPおよびATPγSの歯根膜細胞増殖に対する作用について検討した。臨床的研究成果として、培養線維芽細胞シートを従来の結合組織移植片の代替物として用い露出根面の歯肉被覆に成功した。培養骨膜シートを多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HAp)顆粒混合物と用いることで、骨再生が飛躍的に向上した。今後、臨床研究については細胞プロセシングセンターでの培養を規格化し培養骨膜シートの症例数を増やしてかつ長期的予後を観察することで先進医療として申請したい。基礎的研究に関しては、さまざまな足場材料を検討するとともに細胞の播種方法に多血小板血漿やヒアルロン酸を応用することで細胞の更なる高密度の培養を図る予定である。