著者
川田 康介 高増 哲也 犬尾 千聡 相川 博之 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1403-1407, 2007
被引用文献数
7

症例は15歳の男児.平成12年(小学4年時)から外出時に顔面の発赤腫脹,水様性鼻汁を認めるようになった.平成15年(中学1年時),野球部に入部し,グランドでの練習中に喉が苦しい,息がしづらい,運動が続けられない,顔が腫れる,などの症状を経験するようになり,某病院にて喘息と診断され吸入ステロイド薬などの処方を受けたが改善しなかった.症状は夏に悪化し,冬には消失していた.平成16年12月,診断の再考目的で近医より当科を紹介された.肺機能(流量-量曲線)は正常で,ヒスタミンおよびアセチルコリン吸入試験は10000μg/dlまで陰性,運動負荷試験も陰性であった.血液検査で特異IgEは,カモガヤ56.2UA/ml,ハルガヤ48.2UA/ml,オオアワガエリ47.2UA/mlなどイネ科花粉が強陽性であった.以上より,喘息を合併しないイネ科花粉症と診断した.抗ヒスタミン薬内服とステロイド点鼻薬で部分的な症状の改善を認めた.平成18年3月より,花粉(オーツ麦,スズメノチャヒキ,スギ,ブタクサ)治療ワクチンを用いた急速免疫療法を開始し,良好な結果を得ている.