著者
本田 達朗 金原 正幸 酒井 梨名 張 文平 西村 甲 浦田 繁
出版者
The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.104-112, 2014

【目的】労働で繰り返しの使用により発生したと思われる左肘と左膝の疼痛に対して、M-Testで身体動作をチェックし、動きの制限を改善させる1回の鍼治療で5ヵ月間継続した症状が奏効したので報告する。<BR>【症例】50歳、女性。主訴:左肘内側痛、左膝内側痛。現病歴:2013年7月下旬頃から職場で食用油の一斗缶(18リットルの油)の上げ下げを頻繁に行っていた。同年12月に左肘、左膝の痛みが強くなったため本大学附属鍼灸センターを受診した。仕事で重い物を持ち上げることを繰り返したことが原因の軟部組織疼痛と思われる症例である。<BR> この患者に対して、M-Testを用いて身体上の制限動作をチェックした。制限動作から治療すべき経絡、経穴が導き出され治療を行った。患者の労働での具体的な動作は、左手は一斗缶の金具に指を引っかけ、手関節と肘関節は軽く屈曲させ持ち上げるものであった。また、食用油を鍋に注ぐ際に左手関節は背屈させ、缶を支えていた。M-Testの結果から、(1)左肘関節屈曲・伸展、(2)左肩関節伸展、(3)左股関節内旋・外旋動作の制限動作は労働における動作と関連性があると思われたため、これらをターゲットモーションに設定しM-Test理論に基づく鍼治療を行った。<BR>【経過】初診治療前と再診治療前のVisual Analog Scale (VAS)を比較すると、左肘が90mm→18mm、左膝は80mm→15mm (初診時前→再診時前) でいずれも症状は劇的に改善した。<BR>【考察】M-Testで判明した制限動作は身体上の異常箇所や治療経穴を特定でき、鍼刺激により身体の動きが改善したとともに動作時痛が改善した可能性がある。
著者
西村 甲 前嶋 啓孝 荒浪 暁彦 渡邉 賀子 福澤 素子 石井 弘一 秋葉 哲生 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.867-870, 2007-09-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
6

背景 : 2002年以降, メディア, 出版, インターネットなどを通して様々な活動を行ってきたが, その効果あるいは外来患者の特徴について検討することがなかった。目的と方法 : 当漢方クリニック受診患者の特徴とこれまでの広報活動の効果を調査し, 将来のクリニックのあり方について検討した。平成16年11月から1年間に当クリニックを初診した患者791例 (男229, 女562) を対象に受診に至る紹介・情報源, 年齢性構成, 疾患領域について調査した。結果 : 紹介・情報源に関しては, インターネットによるものが最も多く, 他施設からの紹介が極めて低かった。女性は男性の3倍前後を占めた。患者数は女性では30歳代が最も多く, 男性では全年齢で同様であった。16歳未満と70歳以上の患者数に男女差がみられなかった。疾患領域では, 内科, 産婦人科, 皮膚科疾患が66.9%を占めた。結論 : インターネット・ホームページによる漢方診療に関する情報提供が, 患者数増加に有用であることが示唆された。紹介率が極めて低いことから, 内科, 皮膚科, 産婦人科を中心に病診連携機能を高めていく必要がある。
著者
中田 英之 八重樫 稔 秋葉 哲生 西村 甲 石毛 敦 渡邉 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-55, 2007-01-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
5

競技スポーツは健康を目的とした運動に比べ, 身体に強い負荷を与える。特に女子選手においては, 身体の消耗が激しいため月経不順, 慢性疲労を始めとした体調不良に陥りやすい。そのため, 選手は練習プログラムの未消化, 成績の悪化, 競技の継続困難をきたすこともある。我々は, スポーツトレーニング負荷で生じる身体症状と血液検査所見および漢方医学的所見の関係, さらに身体症状に対する漢方薬投与の有効性について検討した。対象は陸上自衛隊東北方面隊女子駅伝チーム9名 (19歳から27歳, 中央値19歳) である。トレーニング負荷前後でHb, BUN, AST, ALT, CPKの測定, 漢方医学的診察, 身体症状の聴取を行った。身体症状出現予防に桂枝茯苓丸, 六君子湯, 四物湯をトレーニング期間中に投与し, 症状の変化について調査した。トレーニング負荷によりCPKが500IU/l以上になる症例では, 全身倦怠感, 膝痛, 腰痛などの身体症状が出現し, 漢方医学的所見として小腹にお血の圧痛が認められた。漢方薬投与により, トレーニングに伴う各種自覚症状は完全に消失し, 計画的にトレーニングを行うことができた。選手の記録は全例で向上した。以上の成績は, スポーツ選手の管理に漢方薬を利用することが有用であることを強く示唆する。
著者
沢井 かおり 松浦 恵子 今津 嘉宏 西村 甲 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.920-923, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

女性の外陰部痛は,炎症,外傷,腫瘍,加齢による萎縮乾燥などで生じるが,原因不明の場合はVulvodyniaと称され,しばしば難治性で,治療に難渋することがある。今回,牛車腎気丸で原因不明外陰部痛が軽快した症例を経験した。症例は92歳女性,2~3時間続く腟から尿道にかけての痛みが頻発し,夜間長時間眠れないため受診した。漢方医学的に,虚実中間証,寒証で,瘀血,腎虚の所見が認められた。高齢で,腎虚があり,尿路系の症状があることから,牛車腎気丸を処方したところ,夜間に痛みで起きる日が少なくなり,日中の外陰部痛も,著明に軽快した。また,時々起こしていた尿閉も起こさなくなった。難治性の原因不明外陰部痛では,補腎剤も治療の重要な選択肢のひとつと思われる。さらに排尿障害も改善し,複数の障害が一剤にて改善されるという,西洋薬にはない漢方治療の有用性が示された。