- 著者
-
川真田 聖一
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2005
生体の主要な有機成分は、タンパク、糖と脂質である。これらのうちタンパクと糖については、研究が進展している。しかし、脂質は、試料作製の脱水操作で失われたり、特定の脂質に結合する物質がほとんど無いため、脂質の種類の同定は極めて困難である。本研究の目的は、組織や細胞中の脂質を、質量分析法(mass spectrometry)で角翠析して、脂質の種類を同定し定量化する方法を開拓し、ステロイドホルモン産生器官に応用することである。脂質の質量分析には、2つの技術的課題がある。第1に、脂質はイオン化しにくい傾向があるので、良いイオン化条件の検討が必要である。第2は、細胞や組織には多種類の脂質が含まれているので、測定や解析を困難にするおそれがある。研究では、ラットの副腎を取り出し、メタノールで抽出した。抽出液を、50%メタノールと0.1%蟻酸を含む水溶液で希釈して、イオンスプレー法(APCI)法を使い、イオンスプレー電圧5.500 Vで測定した。しかし、安定したピークは得られなかった。そのため、成分が既知の物質で測定を試みた。コレステロールなどのステロイド化合物をメタノールで溶解し、イオンスプレー法(APCI)法で測定したが、明瞭なピークは検出されなかった。次に、これらの測定物質を積極的にイオン化する必要があると考え、トリメチルクロロシランでシリル化させるなど、ガスクロマトグラフィーで使用される手法を試みているが、未だ安定して測定する方法を確立するには至っていない。