著者
川端 光昭 佐野 可寸志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.246-257, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
18

持続的な地域公共交通網形成には,地域の実情に合わせ多様な運行主体の組合せを検討する必要がある.本稿では,タクシー事業者の地域公共交通への参画状況,自治体のタクシー事業者の活用意向を明らかにする.加えて,先行事例の分析を通して,官民協働による地域公共交通のマネジメントに役立つ知見を得ることを目的とする.おおよそ半数の自治体が,公共交通事業をタクシー事業者に委託しており,タクシー事業者の参画が進んでいることがわかった.しかし,事業委託による運転士増等の雇用創出効果は限定的であること,委託事業者との情報共有が不十分な自治体が多いことが明らかとなった.先行事例の分析を通して,持続的な公共交通網形成には,タクシー事業者の経営資源を有効活用することの重要性を確認した.さらに,タクシー事業者の経営体力を十分に情報共有・理解し,実行可能な公共交通サービスを官民協働で制度設計するプロセスが不可欠と言える.
著者
川端 光昭 阪上 弘彬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.25-34, 2020 (Released:2020-03-20)
参考文献数
23

土木の社会的役割・責任を理解した土木技術者の育成のためには,専門科目を学習する初期段階からシティズンシップの醸成を視野に入れた授業カリキュラムの展開が必要である.本稿では,高等専門学校の低学年を対象に,土木と地理が連携したモビリティ・マネジメント教育の実践内容を報告するとともに,この学習成果を分析し今後の授業展開に向けた知見を得ることを目的とする.学習成果の分析の結果,学生は地理で事前に学習した知識を土木分野の具体的社会問題(本稿で言えば岐阜市へのLRTの導入是非)に対応づけて考察できていることを確認した.一方で,交通計画や都市計画に関する専門知識の習得が進めば賛否態度が変容すると思われる思考過程も確認できたことから,学習段階(学年)に応じたカリキュラム設計が今後の課題と言える.
著者
阪上 弘彬 川端 光昭
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.549-559, 2018 (Released:2018-12-29)
参考文献数
22
被引用文献数
1

近年,地理と土木の連携が注目されており,また土木技術者の育成において地理を学ぶことの重要性が指摘されている.本稿の目的は,高等専門学校(以下,高専とする)における地理と土木が連携したモビリティ・マネジメント教育(以下,MM教育とする)の学習単元開発・実践を示すこと,およびそれを踏まえて高専地理が土木と連携してMM教育に取組む意義について示すことである.岐阜市におけるコンパクトシティ構想を題材に,政策提案者の立場から,LRT導入の影響を持続可能な開発の観点から判断し,交通政策を提案する学習単元を開発し,実践した.開発・実践を踏まえて,地理が土木と連携してMM教育に取組む意義として,土木技術者の育成と公民的資質の涵養双方に貢献できる点,地理の学習成果が土木の学習においても活用できることを学生に気付かせることができる点,街づくりをより実社会のやり方に即して学習することができる点を指摘した.