著者
川野 充弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1494-1501, 2021-07-10 (Released:2022-07-10)
参考文献数
15

IgG4(immunoglobulin G4)関連疾患は,高齢男性に好発し,さまざまな臓器に多数のIgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化を共通の病理所見とする病変を起こす原因不明の慢性炎症性疾患である.涙腺,唾液腺,膵臓,腎臓,後腹膜に好発し,糖質コルチコイドが著効するが,高頻度で再燃を認める.発症には,IgG4へのクラススイッチに重要なサイトカインであるヘルパーT2もしくは濾胞性ヘルパーT2細胞由来のIL(interleukin)-4や制御性T細胞由来のIL-10の関与が示唆され,線維化に関しては,TGF(transforming growth factor)-βの関与が示唆されている.その他,自然免疫担当細胞であるM2マクロファージや肥満細胞,好塩基球等の関与も示されてきた.一方で,活動期の末梢血中にはオリゴクローナルな形質芽球が増加していること,海外ではリツキシマブ等のB細胞をターゲットとした治療の有効性も報告されていることから,今後,B細胞の意義や認識する自己抗原についても解明が進むものと期待される.
著者
梅原 久範 岡崎 和一 川 茂幸 高橋 裕樹 後藤 浩 松井 祥子 石坂 信和 赤水 尚史 佐藤 康晴 川野 充弘 厚生労働省難治性疾患等政策研究事業IgG4関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究班 IgG4関連疾患包括診断基準改訂ワーキンググループ
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.962-969, 2021-05-10 (Released:2022-05-10)
参考文献数
31
被引用文献数
3

IgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)は,Mikulicz病,自己免疫疾患,間質性腎炎,前立腺炎,後腹膜線維症等多彩な疾患を含む病態で,今世紀に本邦から発信された興味深い疾患である.厚生労働省のIgG4関連疾患研究班は,2011年に世界で初めての診断基準であるIgG4関連疾患包括診断基準を発表した.これにより,この新疾患は広く世界に受け入れられ,世界中から多くの報告がなされた.しかし,実臨床においては,生検組織が得られない組織があること,血清IgG4(immunoglobulin G4)値や組織中IgG4陽性細胞数のカットオフ値に対する感度・特異度等の問題が生じてきた.そのため,厚生労働省IgG4関連疾患研究班は,IgG4関連疾患包括診断基準2011を改訂した,2020年 改訂 IgG4関連疾患包括診断基準を提唱する.改訂基準は,1)臨床的・放射線学的診断,2)血清学的診断,3)病理学的診断の3項目からなる.さらに,改訂された病理学的診断基準は,従来の2項目に加え,花筵様線維化と閉塞性静脈炎を含めた3項目から構成される.