- 著者
-
工藤 佳久
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.2, pp.58-63, 2017 (Released:2019-01-19)
- 参考文献数
- 15
ヒトの脳におけるアストロサイトの数はニューロンより多い。発見以来長い間この細胞は血液脳関門としての機能や神経伝達物質の取り込み,ニューロンへのグルコースの供給などニューロン活動の支持役として機能しているのだと考えられてきた。電気活性の欠如のために情報処理装置としての脳機能への関与は低いと判断されてきたのだ。ところが,20 世紀末になって,アストロサイトが様々な神経伝達物質に細胞内Ca²⁺濃度上昇の形で応答するダイナミックな細胞であることが判明した。また,ニューロンが放出するほとんど神経伝達物質に対する受容体をG-タンパク質共役型の形で発現し,アストロサイト自身もグルタミン酸,ATP およびD-セリンなどのグリオトランスミッターを遊離することが明らかになった。現在では,アストロサイトはニューロン間のシナプスに組み込まれたトライパータイトシナプスとして機能し,高次機能の発現に関与する可能性が高いと考えられるようになっている。