著者
佐々木 真紀子 石井 範子 菊地 由紀子 工藤 由紀子 杉山 令子 長谷部 真木子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.164-172, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
44
被引用文献数
3 2

目的:化学療法中の患者を看護している看護師の抗がん剤の職業性曝露の状況と看護内容との関連を検討する.対象:北東北2カ所の一般病院で化学療法中の患者を看護している女性看護師10名で,原則として抗がん剤の混合調製を実施していない看護師とした.方法:化学療法中の患者の看護に従事した日の24時間の尿を採取し,オランダのEXPOSURE CONTROL研究所に依頼して,尿中のシクロホスファミド(CP)とα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)の定量分析をガスクロマトグラフ質量分析で行った.また,年齢,化学療法中の患者への看護内容とその際の防護具装着状況,最近の健康状態等について質問した.結果:CPは9人の看護師の24の尿サンプルから検出された.CPの総排泄量は一人あたり5.4~44.2 ng/24 h,平均は16.8 ng/24 hで病院間に有意な差はなかった.FBALはいずれの尿サンプルからも検出されなかった.CPは勤務開始前の尿からも検出され,またCPの点滴中の患者を看護していない看護師の尿中からも検出された.健康状態では脱毛があると回答したものが9名で最も多かった.考察と結論:本研究ではCPの点滴中の患者の看護を行っていない場合でもCPによる曝露があることが明らかになった.曝露の経路としてCPの吸入や皮膚からの吸収が考えられる.曝露を最小限にするためには,看護の様々な場面でも適切な個人防護具の装着が必要である.また今後は環境中の抗がん剤のモニタリングや看護師の健康状態のモニタリングを定期的に行っていくことが重要である.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.64-71, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
18
被引用文献数
1

日本では看護師が患者の発熱時に腋窩や鼠径部等への複数クーリングを行うことが多いが,その効果については根拠が乏しい.今回,複数クーリングが患者の深部温,血圧,心拍変動に及ぼす影響について明らかにすることを目的に,患者3名の事例検討を行った.複数クーリングの必要性を決断したときの腋窩温は38.0~38.3℃であった.複数クーリングの方法は病棟で普段行われている後頭部,両腋窩の3点クーリングとした.その結果,1名は深部温が低下し,HFがやや上昇,収縮期 ・ 拡張期血圧,心拍数,LF/HFは変動が少なく安定していた.この事例の深部温の低下は複数クーリングによって解熱が図られたのではなく,発熱後の体温の下降期を示している可能性が推察された.また2名については深部温の低下が認められず,そのうち1名は拡張期血圧の低下,心拍数の増加がみられ,もう1名は収縮期 ・ 拡張期血圧の上昇,心拍数の大きな変動がみられた.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.25-34, 2009
被引用文献数
1

本研究では,後頭部への冷罨法の有効性に関する実証データを得ることを目的とし,蒸し暑い条件下で氷枕を使用した健康な成人を対象として研究を行った.対象は50歳代前後の成人男性13名(54.9±5.1歳) であった.冷罨法に対する対象の主観をもとに,属性,POMS,血圧,呼吸,心拍変動を検討した.<br/> その結果,主観的評価では冷罨法の好感度が高い「快適群」は7名,好感度が低下あるいは変化がない「非快適群」が6名であった.POMSではT-A (緊張-不安),D (抑うつ-落ち込み),F (疲労) において冷罨法前後の得点の主効果が有意であり,冷罨法後の得点が低下していた.血圧や呼吸などの循環動態では有意差がなかったが,心拍変動では心拍数において冷罨法前後で交互作用が認められ,「快適群」において冷罨法前後の単純主効果が有意であった (p<0.001).<br/> また「非快適群」の6名について個別に検討した結果,2名がPOMSのT-A (緊張-不安),F (疲労)において冷罨法後に得点が上昇していた.また冷罨法後に呼吸数,心拍数,LF/HFが上昇している対象がおり,それぞれPOMSのネガティブな気分が上昇している対象と同一であった.<br/> 以上の結果から,冷罨法を快適であると感じる対象に関してはPOMS,心拍変動の面から裏づけとなるデータを得ることができた.しかし冷罨法を快適と思わない対象に冷罨法を提供するのは,主観的な面,および生理学的視点から望ましくない影響があることが示唆された.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.25-34, 2009-12-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究では,後頭部への冷罨法の有効性に関する実証データを得ることを目的とし,蒸し暑い条件下で氷枕を使用した健康な成人を対象として研究を行った.対象は50歳代前後の成人男性13名(54.9±5.1歳) であった.冷罨法に対する対象の主観をもとに,属性,POMS,血圧,呼吸,心拍変動を検討した. その結果,主観的評価では冷罨法の好感度が高い「快適群」は7名,好感度が低下あるいは変化がない「非快適群」が6名であった.POMSではT-A (緊張-不安),D (抑うつ-落ち込み),F (疲労) において冷罨法前後の得点の主効果が有意であり,冷罨法後の得点が低下していた.血圧や呼吸などの循環動態では有意差がなかったが,心拍変動では心拍数において冷罨法前後で交互作用が認められ,「快適群」において冷罨法前後の単純主効果が有意であった (p<0.001). また「非快適群」の6名について個別に検討した結果,2名がPOMSのT-A (緊張-不安),F (疲労)において冷罨法後に得点が上昇していた.また冷罨法後に呼吸数,心拍数,LF/HFが上昇している対象がおり,それぞれPOMSのネガティブな気分が上昇している対象と同一であった. 以上の結果から,冷罨法を快適であると感じる対象に関してはPOMS,心拍変動の面から裏づけとなるデータを得ることができた.しかし冷罨法を快適と思わない対象に冷罨法を提供するのは,主観的な面,および生理学的視点から望ましくない影響があることが示唆された.