著者
石田 陽子 三浦 奈都子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.58-65, 2004-04-30 (Released:2016-10-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

薬剤漏出による皮膚組織傷害に対する処置として, アクリノール湿布は日常的に用いられている. しかしながら, その効果を裏づける科学的な実証データは少ない. そこで本研究では, 薬剤漏出による組織傷害に対するアクリノール湿布の作用を明らかにすることを目的に, 実験動物を用いた基礎的研究を行った. 起壊死性抗がん剤であるドキソルビシン (アドリアシン®) と起炎症性薬剤として知られているジアゼパム注射液 (セルシン®) を使用し, ラット背部皮膚にこれらの薬剤を漏出後, アクリノール湿布を4日間施行した. 湿布貼用後, 薬剤漏出部の肉眼的観察および組織学的検索を行った. その結果, 各薬剤を漏出したラット皮膚において, 肉眼的に異常所見は認められなかったが, 組織学的に, 皮下組織に重篤な浮腫や炎症性細胞の浸潤が観察され, 薬剤漏出による組織傷害像を確認した. このような薬剤漏出部において, 組織傷害の程度を, アクリノール湿布を貼用した群と貼用しない群で比較検討した結果, アクリノール湿布の効果を示す知見は得られなかった.
著者
大﨑 真 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.231-237, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

点滴による静脈炎発症後の看護ケアとして,症状緩和のために冷罨法が行われているが,冷罨法の目的である炎症抑制効果に関する具体的な検討はなされていない.そこで本研究では,点滴による静脈炎に対し効果的な冷罨法の温度を明らかにすることを目的とし,ラットを用いた実験研究を行った.薬物を投与して実験的にラットの尾部に静脈炎を作製後,薬物注射部位の表面温度を 10℃,15℃,20℃となるよう冷罨法を施行し,罨法を施行しない対照群と肉眼的所見,腫脹について,症状の経過を比較検討した.その結果,腫脹の項目において温度による明らかな差が認められた.したがって,本実験条件下において静脈炎に対する冷罨法の適正温度は 20℃であると考えられた.
著者
高橋 有里 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.257-265, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
19
被引用文献数
3

精神科領域で使用される筋肉内注射製剤に起因する硬結に関し,看護師の経験と患者への思いを明らかにすることを目的に,質問紙調査および聞き取り調査を行った.その結果,つぎのことが明らかになった. 多くの看護師が硬結を経験しており,処置上の不都合を自覚,また,患者の困っていた様子を感じていた.硬結の性状は,薬剤の種類による特徴があり,特に油性の持効性注射剤に起因する硬結が大きく重症であった.看護師は,硬結に対しさまざまなケアを行っていたが,対峙する内容や,わからない,何もしていないとの回答もあった.自身が行っているケアによる硬結の改善の兆候は感じられていなかった.看護師は硬結が発生した患者に対し,同情や自責の念,専門職としての責務を自覚しつつも,有効性を実感できるケアを提供できておらず,硬結予防や硬結ケアに対し確かな方法を求めていた.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.64-71, 2013-08-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
18
被引用文献数
1

日本では看護師が患者の発熱時に腋窩や鼠径部等への複数クーリングを行うことが多いが,その効果については根拠が乏しい.今回,複数クーリングが患者の深部温,血圧,心拍変動に及ぼす影響について明らかにすることを目的に,患者3名の事例検討を行った.複数クーリングの必要性を決断したときの腋窩温は38.0~38.3℃であった.複数クーリングの方法は病棟で普段行われている後頭部,両腋窩の3点クーリングとした.その結果,1名は深部温が低下し,HFがやや上昇,収縮期 ・ 拡張期血圧,心拍数,LF/HFは変動が少なく安定していた.この事例の深部温の低下は複数クーリングによって解熱が図られたのではなく,発熱後の体温の下降期を示している可能性が推察された.また2名については深部温の低下が認められず,そのうち1名は拡張期血圧の低下,心拍数の増加がみられ,もう1名は収縮期 ・ 拡張期血圧の上昇,心拍数の大きな変動がみられた.
著者
武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.66-70, 2004-04-30 (Released:2016-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
3

筋肉内注射用薬剤が皮下組織に投与された場合の組織傷害性の有無について, 実験動物を用い検討した. 使用薬剤として, 筋注用製剤である硫酸カナマイシン, 硫酸ストレプトマイシン, アタラックス-P, アスドリンの4剤を選択した. 動物の種差による生体反応の特性や違いについても考察できるように, ラットとウサギの2種類の動物を実験に供した. 投与部位を除毛した後, 筋肉内および皮下組織に薬剤を投与し, 肉眼的検査と組織学的検査を実施した. その結果, 硫酸カナマイシンあるいは硫酸ストレプトマイシンを皮下組織または筋肉内に投与した場合, いずれの投与部位においても限局性で軽度な組織傷害が認められた. 一方, アタラックス-Pあるいはアスドリンを投与した筋肉内には重篤な炎症巣が認められ, 皮下組織では, 疎な組織内を薬剤が拡散し広範囲に潰瘍が認められた. このような傷害像は, ラットとウサギの両者に認められたことから, ヒトにおいても同様の組織傷害が認められる可能性が高いと考えられた. また, アタラックス-Pとアスドリンについては, いずれにもベンジルアルコールが添加物として含まれており, 特にこの添加物を含む筋注用製剤については, 確実に筋肉内に投与することが重要であると考えられた.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.25-34, 2009
被引用文献数
1

本研究では,後頭部への冷罨法の有効性に関する実証データを得ることを目的とし,蒸し暑い条件下で氷枕を使用した健康な成人を対象として研究を行った.対象は50歳代前後の成人男性13名(54.9±5.1歳) であった.冷罨法に対する対象の主観をもとに,属性,POMS,血圧,呼吸,心拍変動を検討した.<br/> その結果,主観的評価では冷罨法の好感度が高い「快適群」は7名,好感度が低下あるいは変化がない「非快適群」が6名であった.POMSではT-A (緊張-不安),D (抑うつ-落ち込み),F (疲労) において冷罨法前後の得点の主効果が有意であり,冷罨法後の得点が低下していた.血圧や呼吸などの循環動態では有意差がなかったが,心拍変動では心拍数において冷罨法前後で交互作用が認められ,「快適群」において冷罨法前後の単純主効果が有意であった (p<0.001).<br/> また「非快適群」の6名について個別に検討した結果,2名がPOMSのT-A (緊張-不安),F (疲労)において冷罨法後に得点が上昇していた.また冷罨法後に呼吸数,心拍数,LF/HFが上昇している対象がおり,それぞれPOMSのネガティブな気分が上昇している対象と同一であった.<br/> 以上の結果から,冷罨法を快適であると感じる対象に関してはPOMS,心拍変動の面から裏づけとなるデータを得ることができた.しかし冷罨法を快適と思わない対象に冷罨法を提供するのは,主観的な面,および生理学的視点から望ましくない影響があることが示唆された.
著者
工藤 由紀子 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.25-34, 2009-12-05 (Released:2016-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究では,後頭部への冷罨法の有効性に関する実証データを得ることを目的とし,蒸し暑い条件下で氷枕を使用した健康な成人を対象として研究を行った.対象は50歳代前後の成人男性13名(54.9±5.1歳) であった.冷罨法に対する対象の主観をもとに,属性,POMS,血圧,呼吸,心拍変動を検討した. その結果,主観的評価では冷罨法の好感度が高い「快適群」は7名,好感度が低下あるいは変化がない「非快適群」が6名であった.POMSではT-A (緊張-不安),D (抑うつ-落ち込み),F (疲労) において冷罨法前後の得点の主効果が有意であり,冷罨法後の得点が低下していた.血圧や呼吸などの循環動態では有意差がなかったが,心拍変動では心拍数において冷罨法前後で交互作用が認められ,「快適群」において冷罨法前後の単純主効果が有意であった (p<0.001). また「非快適群」の6名について個別に検討した結果,2名がPOMSのT-A (緊張-不安),F (疲労)において冷罨法後に得点が上昇していた.また冷罨法後に呼吸数,心拍数,LF/HFが上昇している対象がおり,それぞれPOMSのネガティブな気分が上昇している対象と同一であった. 以上の結果から,冷罨法を快適であると感じる対象に関してはPOMS,心拍変動の面から裏づけとなるデータを得ることができた.しかし冷罨法を快適と思わない対象に冷罨法を提供するのは,主観的な面,および生理学的視点から望ましくない影響があることが示唆された.
著者
小池 祥太郎 武田 利明
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.223-230, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
18

看護師が輸液中の患者から採血する場合,輸液をしている側の上肢を採血部位として選択することは少ない.これは輸液が血液データに影響することを避けるためである.しかし,輸液を実施している側の上肢から採血した場合,輸液がどのように採血データに影響するかは明らかとなっていない.そこで,本研究では輸液実施側の中枢側・末梢側と輸液の影響がない反対側の採血データを比較し検討することを目的とした.実験動物として,日本白色種雄性ウサギを選択し,ウサギの耳介をヒトの上肢に見立てて,左耳介静脈からソリタ®T3Gを投与し輸液実施部位の中枢側・末梢側,そして反対側にあたる右耳介静脈から採血を行った.その結果,総蛋白・アルブミン・ナトリウム・クロール・カルシウム・マグネシウムの中枢側データは反対側にくらべて有意に低く,血糖・カリウムは有意に高かった.また,すべての項目で末梢側データと反対側で有意な差は認められなかったが,一部のデータで限局的に影響がみられた.よって,輸液実施部位より中枢側は採血部位として不適切であるが,末梢側は適切な採血部位としての可能性が示唆された.