著者
布谷 美樹 森原 徹 三浦 雄一郎 福島 秀晃 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-84, 2007 (Released:2008-01-18)
参考文献数
4
被引用文献数
1

We experienced cases that can elevate the humerus but can't maintain the position in shoulder flexion. It is generally thought that the inner muscles stabilize the humeral head in the glenoid, and the deltoid, which is one of the outer muscles, elevates the humerus during shoulder flexion. Kido et al. recently reported that all portions including the anterior, middle and posterior deltoid muscles have functions in stabilizing the shoulder. In this study, in order to evaluate the activity of the deltoid muscle, not only the anterior portion but the middle and posterior portions were analyzed at several positions of flexion by surface electromyography (EMG). Our results show that the deltoid muscle activity of the anterior portion increased with flexion, and especially the activity at over 90°C flexion was significantly increased over that at 30°C flexion. The activity of the middle and posterior portions over 120°C flexion were significantly increased over those at 30°C and 60°C flexion. In addition, at 150°C flexion, the activities of the middle and posterior deltoid muscles were significantly increased over that at 90°C flexion. This study demonstrates that the anterior portion of the deltoid muscle, mainly has the function of active flexion, and the middle and posterior portions as well as the inner muscles have functions which stabilize the glenohumeral joint during shoulder flexion.
著者
加古原 彩 三浦 雄一郎 福島 秀晃 布谷 美樹 田中 伸幸 近藤 克征
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.137-143, 2006 (Released:2007-01-30)
参考文献数
7

In this article, we describe physical therapy for a case of decline in muscular strength caused by axillary nervous paralysis with a dislocation of the shoulder joint. This case was characterized by difficulty in flexional movement in the scapulothoracic joint in primary flexion of the shoulder joint because of the adduction and lift of the scapula. We defined the alignment on the several phases that the specific movement of scapula appears. We practiced scapula alignment and performed electromyographic assessment. In this case, in addition to a decline of muscular activity in the deltoid muscle, the upper, middle and lower fibers of the trapezius muscle started to move before the anterior fibers of the deltoid muscle. So, we supposed that this phenomenon caused the disorder, the specific movement of the scapula. We observed the start of activity of the deltoid and trapezius muscles and administered a pendular movement as a therapeutic exercise. Improvement in both excursion of flexion and in patterns of muscular activity in the deltoid and trapezius muscles were confirmed. Furthermore, with repetition of kinesiatrics in the sitting position on the edge of a bed following results was acquired; an increase in muscular activation in the anterior fibers of the deltoid muscle and a muscle activation with same order. This lead to improvement of stability of the scapula because of a decrease in adduction and lift of the scapula in the start position. From the above, we suggest that choice of the method of kinesic therapy, paying attention to the posture of patients and paying attention to the stability of scapulothoracic joint is important.
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 鈴木 俊明 森原 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0600, 2007

【目的】肩関節疾患患者が肩甲骨挙上筋群の過剰収縮と前鋸筋の収縮不全によって、肩関節屈曲初期より肩甲骨の不安定性を呈することを頻繁に経験する。そのため理学療法では前鋸筋の筋力強化や筋再教育、肩甲骨挙上筋群の抑制が必要となる。前鋸筋の筋力強化は諸家の報告により様々な方法が紹介されているが、これらの方法を有疾患患者に適応した場合、肩甲骨挙上筋群の過剰収縮を招きやすく本来の目的を達成しているかは疑問を感じる。本研究目的は、肩関節屈曲運動にて運動肢位を変化させた時の僧帽筋上部・下部線維、前鋸筋下部線維の筋活動を筋電図学的に分析し、肩甲胸郭関節の安定化に対する運動療法を再考することである。<BR>【方法】対象は健常男性5名両側10肢(平均年齢30.2±4.3歳、平均身長177.8±8.7cm、平均体重76.2±8.5kg)。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。測定筋は僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋下部線維、三角筋前部線維とし、筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。具体的な運動課題は座位、背臥位の各肢位にてそれぞれ肩関節を0°、30°、60°、90°、120°、150°屈曲位を5秒間保持させ、それを3回施行した。分析方法は座位での肩関節屈曲0°位の筋電図積分値を算出し、これを基準に各肢位、各角度での筋電図積分値相対値(以下、相対値)を算出した。各筋の相対値を各角度にて座位と背臥位間で対応のあるt検定を行った。<BR>【結果】僧帽筋上部線維の相対値は屈曲60°~150°間にて座位と比べ背臥位にて有意に減少した。僧帽筋下部線維および前鋸筋下部線維の相対値は屈曲30°では座位と比べ背臥位にて増加傾向を示したが、90°~150°間では有意に減少した。三角筋前部線維の相対値は屈曲30°では座位と比べ背臥位にて有意に増加し、60°~150°間では有意に減少した。<BR>【考察】背臥位での肩甲帯は胸郭に対し平面位となり、僧帽筋上部線維の活動は重力の影響が軽減される肢位である。肩関節屈曲60°より肩甲骨は上方回旋することから、屈曲60°以上での活動減少は、背臥位という運動肢位が僧帽筋上部線維の活動を発揮させにくい肢位であることが示唆された。三角筋前部線維の相対値は背臥位での屈曲30°にて有意に増加した。これは肩関節屈曲30°で生じる肩関節への力学的な伸展モーメントは背臥位の方が増大することから、これに抗するための筋活動増加であると考える。三角筋前部線維の活動は、肩甲骨と上腕骨の連結を行い、その伝達された力は浮遊骨である肩甲骨に不安定性を生じさせる。背臥位での屈曲30°で僧帽筋下部線維、前鋸筋下部線維の相対値が増加傾向を示したのは、肩甲骨の不安定性に対する制動の役割が座位よりも大きいことが示唆された。
著者
三浦 雄一郎 福島 秀晃 布谷 美樹 田中 伸幸 山本 栄里 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0634, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】我々はNgらによる腹筋群の解剖学的研究を参照とし、歩行時における個々の体幹筋の機能について報告してきた。内腹斜筋単独部位は立脚期に筋活動が増大し、骨盤の安定化に作用していることが示された。今回、上肢の運動に伴う体幹筋の機能に着目した。上肢の運動に伴う体幹筋の筋電図学的研究では、Hodgeらによると一側上肢を挙上運動させた時に反対側の腹横筋が三角筋の筋活動よりも先行して活動すると報告している。しかし、上肢挙上時における同側体幹筋の筋電図学的報告は少ない。そこで肩関節屈曲時の同側の体幹筋に着目し、その機能について検討したので報告する。【方 法】対象は健常者5名(男性3名、女性2名、平均年齢32±5歳)両側10肢とした。筋電計はマイオシステム(NORAXON社製)を用いた。運動課題は端座位での肩関節屈曲位保持とし、屈曲角度は下垂位、30°、60°、90°、120°、150°、180°とした。各屈曲肢位における上肢への負荷は体重の5%の重錘を持たせることとした。測定筋は運動側の三角筋前部線維、前鋸筋、腹直筋、外腹斜筋とした。サンプリングタイムは3秒間、測定回数は3回とし、平均値をもって個人のデータとした。下垂位における各筋の筋積分値を基準値とし、各角度における筋積分値相対値を求めた。各筋に対し角度間における一元配置の分散分析および多重比較検定を実施した。対象者には本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。【結 果】三角筋の筋積分値相対値は肩関節屈曲120°まで徐々に増大し、それ以上では変化を認めなかった。前鋸筋の筋積分値相対値は屈曲角度増大に伴い漸増的に増大した。腹直筋の筋積分値相対値は屈曲角度に関係なく変化が認められなかった。外腹斜筋の筋積分値相対値は肩関節屈曲60°で増大し、屈曲角度60°以上で漸増的にが増大した。【考 察】 肩関節を屈曲させる際、上腕骨の運動に伴って肩甲骨の上方回旋運動が生ずる。前鋸筋は肩甲骨を上方回旋させる作用があり、肩甲骨の外転方向の柔軟性と前鋸筋の求心性収縮が必要となる。しかし、前鋸筋は起始部が第1肋骨から第8肋骨の前鋸筋粗面(肋骨の外側面)であることから前鋸筋のみ求心性収縮が生じた場合、肋骨外側面を肩甲骨内側縁にひきつける力が生ずる。結果として体幹の反対側への回旋運動が生ずることになる。また、座位姿勢は骨盤上で脊柱を介して胸郭がのっている状態であり、きわめて不安定な状態であることから、この反対側の体幹回旋は容易に生じやすいことが考えられる。運動側の外腹斜筋はこの体幹の反対側への回旋を制御し、体幹安定化に作用していることが推察される。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 田中 伸幸 山本 栄里 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0635, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】我々は、肩関節疾患患者の肩甲上腕リズムの乱れに関して、肩関節屈曲に伴い肩甲骨には力学的に前傾方向へのモーメントが加わり、これを制動できない場合は、肩甲骨の安定した円滑な上方回旋に支障が生ずるのではないかと考えている。そこで、第44回近畿理学療法学術集会にて、屈曲30°位において僧帽筋下部線維は上部・中部線維と比較して有意に筋活動が増大したことから、この前傾モーメントを制動するには解剖学的に僧帽筋下部線維が有効であると報告した。このことから、上肢の運動に伴い肩甲骨には力学的なモーメントが生じ、また運動方向の違いによって肩甲骨にかかるモーメントも異なることが示唆された。今回、肩関節外転運動に着目し、肩関節屈曲運動と比較して肩甲骨に生じるモーメントが異なると仮定し、肩関節初期屈曲・外転角度における僧帽筋の肩甲骨安定化機能を筋電図学的に比較・検証したので報告する。【対象と方法】対象は健常男性7名(平均年齢28.7±4.2歳)、両上肢(14肢)とした。運動課題は端座位姿勢での上肢下垂位、屈曲30°位および外転30°位をそれぞれ5秒間保持し、それを3回施行した。測定筋は僧帽筋上部・中部・下部線維とし筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。分析方法は下垂位の筋積分値を基準に屈曲30°位と外転30°位の筋積分値相対値を算出し、各線維ごとに対応のあるt検定を行った。なお、対象者には本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。【結果と考察】僧帽筋上部・中部線維の筋積分値相対値は、屈曲位と比較して外転位において有意に増大した(p<0.01)。一方、下部線維の筋積分値相対値は屈曲位と比較して外転位において減少傾向となった。肩甲上腕リズムでは屈曲60°、外転30°までは肩甲骨の運動なしに肩甲上腕関節固有の運動でなされるsetting phaseの時期である。本研究における運動課題もsetting phaseの時期であり、この時期での僧帽筋の活動は肩甲骨と体幹を固定するための活動であると考える。山本らは正常な肩甲骨の動きは胸鎖関節を支点として三次元的に制動方向が導かれることとなるが、その動的な制御は肩甲骨と胸郭を連結している筋群のバランスと肩鎖関節の安定性により決定されるとしている。僧帽筋上部・中部線維については解剖学的に鎖骨外側1/3・肩峰・肩甲棘上縁に付着しており上肢の外転運動に伴う肩甲骨の下方回旋モーメントへの制御に機能したと考える。一方、下部線維については解剖学的に肩甲棘内側下部(肩甲棘三角)に付着しており上肢の屈曲運動に伴う肩甲骨の前傾モーメントへの制御により機能したと考える。以上より、上肢の運動方向が異なれば肩甲骨に生じる力学的なモーメントも異なり、そのモーメントに応じて選択的に僧帽筋の各線維がより活動し肩甲骨を制御することが示唆された。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 近藤 克征 加古原 彩 鈴木 俊明 森原 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A1290, 2008

【はじめに】<BR>肩関節疾患症例において肩甲上腕リズムが破綻している症例を頻繁に経験する。Ludewigらは僧帽筋上部線維の過剰収縮が肩甲骨の異常な運動を引き起こすとしており、理学療法では僧帽筋上部線維の過剰収縮を抑制することが重要である。一方、我々は上肢挙上に伴う肩甲骨の安定化と上方回旋機能の役割として僧帽筋下部線維が重要であることを報告してきた。よって上肢挙上時の僧帽筋各線維の協調した肩甲骨の上方回旋機能を改善させていくには過剰収縮している僧帽筋上部線維の抑制と僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促す方法を考慮していく必要性がある。 <BR>そこで、我々は肩甲胸郭関節の安定化に対するアプローチとして運動肢位に着目している。今回、側臥位という運動肢位で肩関節外転保持を行った時の僧帽筋各線維の筋活動を筋電図学的に分析し、肩甲胸郭関節の安定化に対する理学療法アプローチを検討したので報告する。<BR>【対象と方法】<BR>対象は健常男性5名両側10肢(平均年齢29.0±4.2歳、平均身長177±9.3cm、平均体重68.8±7.2kg)である。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。測定筋は僧帽筋上部線維、中部線維、下部線維とし、筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。電極貼付位置は、Richard(2003、2004)、下野らの方法を参考にした。具体的な運動課題は側臥位において肩関節を30°、60°、90°、120°、150°外転位を5秒間保持させ、それを3回施行した。3回の平均値を個人データとした。分析方法は座位での上肢下垂位の筋電図積分値を求め、これを基準に各角度での筋電図積分値相対値(以下、相対値)を算出した。統計処理には角度間での分散分析(tukey多重比較)を行った。<BR>【結果と考察】<BR>外転角度の増大に伴い僧帽筋上部、中部線維の相対値は漸減傾向を、下部線維の相対値は漸増傾向を示した。上部、中部線維は30°と比較して120°以降有意に減少し、下部線維は30°~90°と比較して150°で有意に増加した。側臥位での肩関節外転保持は90°を境に抗重力下から従重力下へと変化する。このことから90°以降では上肢自重に伴い肩甲骨には挙上方向に対する制動が必要になると考えられる。90°以降では肩甲骨は上方回旋位を呈していることから、鎖骨、肩峰、肩甲棘上縁に停止する上部、中部線維の筋活動は減少し、拮抗作用を有する下部線維が肩甲骨の制動に関与したのではないかと考える。 <BR>臨床上、上肢挙上角度の増大に伴う、僧帽筋上部線維の過剰収縮と僧帽筋下部線維の収縮不全によって肩甲骨の上方回旋不良が生じている症例に対し側臥位での外転120°以降では僧帽筋上部線維の抑制が、外転150°保持では僧帽筋上部線維の抑制及び僧帽筋下部線維の筋活動促通が可能であることが示唆された。<BR><BR><BR>