著者
常見 美紀子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.9-18, 2004-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
33

「構成」はバウハウスに留学した水谷武彦がドイツ語の「Gestaltung」を翻訳した言葉である。構成教育は、戦前は普通教育の中に普及していたが、デザイン教育のための基礎および専門教育としては、戦後に発展をとげた。桑沢デザイン研究所では、当初から構成を基盤とするデザイン教育を行っていたことが教育課程などから明らかになった。とりわけ初期には、勝見勝と高橋正人が、研究所のデザイン教育に貢献していた。勝見はハーバート・リードとミューズ教育という幅広い造形概念の上に、バウハウスを起源とするデザイン理論を展開した。高橋は、デザイン教育における「基礎」として、美学・心理学・構成理論という純粋研究、人間工学・コミュニケーション理論のような基礎工学的研究、設計製作・印刷・写真などのような実際技術とこれに伴う技術理論という三領域を挙げ、「構成理論」は「構成の原理」という純粋研究を対象とすることを明確にした。「構成の原理」には、「造形の要素(造形言語)」と「造形の秩序(造形文法)」があり、造形の要素は形、色、材料、テクスチェア、光、運動が、造形の秩序にはリズムやコンポジションなどが含まれる。高橋は構成をデザインの基礎および専門教育と位置づけ、構成の原理の研究と教育を通じて、構成をより広くより高次元、すなわち構成学へと導いた。
著者
常見 美紀子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.9-18, 2004
参考文献数
33

「構成」はバウハウスに留学した水谷武彦がドイツ語の「Gestaltung」を翻訳した言葉である。構成教育は、戦前は普通教育の中に普及していたが、デザイン教育のための基礎および専門教育としては、戦後に発展をとげた。桑沢デザイン研究所では、当初から構成を基盤とするデザイン教育を行っていたことが教育課程などから明らかになった。とりわけ初期には、勝見勝と高橋正人が、研究所のデザイン教育に貢献していた。勝見はハーバート・リードとミューズ教育という幅広い造形概念の上に、バウハウスを起源とするデザイン理論を展開した。高橋は、デザイン教育における「基礎」として、美学・心理学・構成理論という純粋研究、人間工学・コミュニケーション理論のような基礎工学的研究、設計製作・印刷・写真などのような実際技術とこれに伴う技術理論という三領域を挙げ、「構成理論」は「構成の原理」という純粋研究を対象とすることを明確にした。「構成の原理」には、「造形の要素(造形言語)」と「造形の秩序(造形文法)」があり、造形の要素は形、色、材料、テクスチェア、光、運動が、造形の秩序にはリズムやコンポジションなどが含まれる。高橋は構成をデザインの基礎および専門教育と位置づけ、構成の原理の研究と教育を通じて、構成をより広くより高次元、すなわち構成学へと導いた。

2 0 0 0 OA 大野玉枝研究

著者
常見 美紀子
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.80, 2006 (Released:2006-08-10)

バウハウスの日本人留学生は、水谷武彦、山脇巌・山脇道子夫妻、そして大野玉枝の4人であった。前者3人は既にバウハウス関連研究では知られた人物であった。しかしながら、四人目のバウハウス入学者、大野玉枝は、ベルリンに移った私立バウハウスの学生名簿に明記されているにもかかわらず、情報はほんとんどなく、その後の消息は不明であった。 今回は戦前の『住宅』における大野のファッション作品と記事、『NIPPON』に掲載された紹介記事、および戦後における日展を中心とするテキスタイルデザイン作品について考察する。 特に、大野玉枝のその後の活動がなぜほとんど知られることがなかったという理由について、夫である大野俊一(ドイツ文学者)の当時の政治的な活動と関連することが明らかになった。
著者
常見 美紀子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.47-56, 2004-03-31
被引用文献数
2

桑沢洋子は1954年に「桑沢デザイン研究所」を創立した。その創立メンバーの一人、勝見勝は、その前後に「国際デザイン協会」を設立し、日本における1950年から60年代のデザイン運動を牽引した。デザイン運動とは、デザイン教育、デザイン研究、グッドデザイン運動という三つの活動の総体を指す。デザイン教育としては、専門デザイン教育機関としての桑沢デザイン研究所の創立、普通教育としての造形教育を推進するための「造形教育センター」の設立である。デザイン研究としては、「日本デザイン学会」の創立である。グッドデザイン運動としては、一般市民への啓蒙としての銀座松屋における「グッドデザインコーナー」の開設、生活を美しく豊かにするデザインの総合雑誌『リビングデザイン』の発刊である。すなわち、桑沢デザイン研究所は単にデザイン教育機関のみならず、デザイン運動の中で諸活動を有機的に関運づけるデザイン運動体でもあった。