著者
西嶋 康一 高野 健二 平井 伸英
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

わが国ではmethamphetamine (METH)などのアンフェタミン類の流行が社会問題となっている。その過量投与は高熱を呈し死亡の危険があり、またその作用機序は十分に解明されていないため、本研究を実施した。その結果、METH 10 mg/kg の投与によりラットは42℃以上の高熱を呈した。Risperidone の前投与、後投与群ではMETH による体温上昇は有意に抑制された。5-HT_<2A> 受容体拮抗薬の前投与、後投与はMETH による高体温を有意に抑制したが、5-HT_<2B/2C>受容体拮抗薬の前投与はMETH による高体温を抑制しなかった。また、5-HT_<1A> 受容体拮抗薬もMETH による高体温は抑制しなかった。D1 受容体拮抗薬は前投与、METH による高体温を有意に抑制したが、D2受容体拮抗薬の前投与はMETHによる高体温を抑制しなかった。METHと、同じアンフェタミン類であるMDMA の投与により、視床下部のglutamate 投与300 分後から上昇した。それに対して、risperidone の前投与はglutamate の後半の上昇を有意に抑制した。ラット視床下部の一酸化窒素代謝物(NO)-はMETH を投与すると徐々に増加し基礎値の約180%まで増加したが、risperidone を前投与するとその上昇は有意に抑制された。またMETH はMDMA との合剤で使用されることが多く、以前我々はrisperidone はMDMA による高体温を抑制したことを報告した。これらを考え合わせるとrisperidone はMETH による体温上昇に対し臨床上有効な治療薬になると考えられる。その作用機序は、5-HT_<2A> 受容体、D_1受容体拮抗薬作用によるものと考えられた。またMETH によるNO, glutamate などのフリーラジカル上昇を抑制することも体温上昇を抑制している機構である可能性が示唆された