著者
平井 敬二 青山 博 庭田 寧 安江 徳太郎 福田 秀行 鈴江 清吾 入倉 勉
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement2, pp.1-10, 1990-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
7

新キノロン系抗菌剤であるfleroxacinのin vitro抗菌力について検討した. FleroxacinはEnterobacterimeae, Neisseria spp.及びHaemophilus influenzaeに対し強い抗菌力を示し, また, staphylococci, Pseudomonas aeruginosa及びBranhamella catarrhalisに対しても良好な抗菌活性が認められた. 臨床分離株に対するfleroxacinの抗菌力はnornoxacin及びofloxacinと同程度であったが, ciprofloxacinよりは幾分劣っていた. なお, fleroxacinはmethicillin耐性Staphylococcus aureus及びgentamicin耐性P.aeruginosaに対しても優れた抗菌活性を示した. Fieroxacinの抗菌力は, 培地の種類, 培地のpH, 接種菌量, 金属イオンの添加及びヒト血清の添加による影響をほとんど受けなかった. MICとMBCはほぼ一致していた. Fleroxacinは他のキノロン剤同様Escherichia coli及びP. aeruginosaから分離したDNA gyraseのスーパーコイリング活性を強く阻害した. Fleroxacinは大腸菌, 緑膿菌, ブドウ球菌に対し良好なpost antibiotic effect (PAE) を有していた.
著者
平井 敬二
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.349-356, 2005

ニューキノロン薬の先駆けとなったノルフロキサシンが臨床現場で使用され始めて20年以上が経つが, その後も数多くのニューキノロン薬が開発されてきている。これらの新薬の開発と並行してキノロン薬の作用機序, 耐性機構の研究も飛躍的に進歩してきた。本総説ではわれわれの研究内容も含め, キノロン薬の作用機序, 耐性機構研究の約四半世紀の歴史を紹介する。<BR>(1) 作用機序: 標的酵素 (DNAジャイレース, トポイソメラーゼIV) 研究: われわれがキノロン研究を開始した1975年当時ではキノロン薬の詳細な作用メカニズムはまだ不明であったが, ノルフロキサシンを発見したのと同時期にキノロン薬がDNAジャイレースに作用することが報告された。その後DNAジャイレースの研究が進み, 作用様式 (キノロン・DNA・酵素の3者複合体), 抗菌力との相関, 耐性化機構 (耐性決定領域での変異) などが明らかとなった、さらにDNAジャイレース以外に新たな標的酵素としてトポイソメラーゼWが1990年に見出され, その研究からグラム陽性菌に対する抗菌力, 高度耐性化との関連が明確となった。<BR>(2) 膜透過性 (排出機構) 研究: ノルフロキサシンを用いた研究から, 大腸菌をはじめとする腸内細菌では外膜のポーリンと呼ばれる透過孔を介してキノロン薬が菌体内に透過することを明らかにした。一方, 緑膿菌におけるノルフロキサシン耐性機構の解析から膜透過性に関与する<I>nfx</I>B, <I>nfx</I>C, <I>nal</I>B変異遺伝子を見出したが, この耐性機構についてはその後多くの研究者により精力的な研究が行われ, キノロン薬に限らず緑膿菌の薬剤耐性に排出ポンプが大きく関与していることが明らかにされた。<BR>最近, プラスミド性のキノロン耐性 (qnr遺伝子) が中国や米国で報告された。この発見は新たなキノロン耐性として今後の課題となりそうである。