著者
平井 清子
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.81-103, 2015-03-31 (Released:2017-06-23)
参考文献数
18

日本の英語教育が、ディスカッション、ディベートなどを含むコミュニケーション重視の授業 に転換してから久しいが、日本の文化的背景から、このような学習者主体の授業の実践は容易で はなく、いまだ授業では、従来の暗記型の要素が強いことが否めない。文科省では小中高を通し ての論理的・批判的思考力の養成の奨励がなされ、英語においても、詰め込み教育、受け身の教 育では果たせない、自ら考える力、論理的・批判的思考力を育み、併せて四技能に配慮した統合 的なコミュニケーション能力の育成が促進されている。同時に、これらの能力を育成することで、 英語での発信力の養成が可能となる。このための新しいアプローチとして、 「内容重視の教授法」 (Content-based Instruction:以下CBI)の授業の提案がある。CBIには「年齢相応の思考力を伴う 言語発達の必要性」を説くバイリンガリズムの観点から「言語発達には思考力と言語力の両輪が 必要である」という基本概念がある。 「仕事で英語が使える」 人材育成の出口である大学英語教育の役割はますます重要となる。 とり わけ、専門課程に入る前の初年次英語教育では、CBIのように「数学」や「生物学」などの教科の 教育と言語教育を統合した英語教育が、 「英語」 の授業や選択制の専科の授業で取り入れられるこ とが必要となってくるであろう。 本研究は、CBI発祥の地であるアメリカの高等学校CBI-ESLの授業の参与観察から、日本での 応用を、特に大学での実践を考慮し提案するものである。米国の現地校の授業の参与観察により、 以下の点が日本でCBIの授業を導入する際に提案される。1)各課ごとに「教科(内容)目標」と 「言語目標」を定め、言語指導では教科学習に必要な語彙や表現と同時に、 「学習スキル」を養成 する。2)インプットとアウトプットのバランスを考慮し、四技能を統合的に取り入れる。3)「評 価の基準(ル―ブリック) 」の効果的使用。使われる発問は、自分の答えを証拠の裏付けをしなが ら論理的に述べる本質的な質問(essential questions)であること。4)これらを協働学習を通し て行う。
著者
平井 清子
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.81-103, 2015

&emsp;日本の英語教育が、ディスカッション、ディベートなどを含むコミュニケーション重視の授業に転換してから久しいが、日本の文化的背景から、このような学習者主体の授業の実践は容易ではなく、いまだ授業では、従来の暗記型の要素が強いことが否めない。文科省では小中高を通しての論理的・批判的思考力の養成の奨励がなされ、英語においても、詰め込み教育、受け身の教育では果たせない、自ら考える力、論理的・批判的思考力を育み、併せて四技能に配慮した統合的なコミュニケーション能力の育成が促進されている。同時に、これらの能力を育成することで、英語での発信力の養成が可能となる。このための新しいアプローチとして、「内容重視の教授法」(Content-based Instruction:以下CBI)の授業の提案がある。CBIには「年齢相応の思考力を伴う言語発達の必要性」を説くバイリンガリズムの観点から「言語発達には思考力と言語力の両輪が必要である」という基本概念がある。<br> &emsp;「仕事で英語が使える」人材育成の出口である大学英語教育の役割はますます重要となる。とりわけ、専門課程に入る前の初年次英語教育では、CBIのように「数学」や「生物学」などの教科の教育と言語教育を統合した英語教育が、「英語」の授業や選択制の専科の授業で取り入れられることが必要となってくるであろう。<br> &emsp;本研究は、CBI発祥の地であるアメリカの高等学校CBI-ESLの授業の参与観察から、日本での応用を、特に大学での実践を考慮し提案するものである。米国の現地校の授業の参与観察により、以下の点が日本でCBIの授業を導入する際に提案される。1)各課ごとに「教科(内容)目標」と「言語目標」を定め、言語指導では教科学習に必要な語彙や表現と同時に、「学習スキル」を養成する。2)インプットとアウトプットのバランスを考慮し、四技能を統合的に取り入れる。3)「評価の基準(ル―ブリック)」の効果的使用。使われる発問は、自分の答えを証拠の裏付けをしながら論理的に述べる本質的な質問(essential questions)であること。4)これらを協働学習を通して行う。
著者
平井 清子
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.67-101, 2017-03-31 (Released:2017-05-30)
参考文献数
49

本研究は、台湾の戦後から現在までの英語教育の変遷と特徴、そして、その要因を、比較教育学の観点から、社会・文化的、政治・経済的、歴史的背景から考察する研究の一部である。台湾では、戦後70年間(1945年~2015年)に6つの学習指導要領が発布された。本稿では、このうち、1983年以降に発布された3つの学習指導要領に準拠した高等学校英語教科書の、それぞれ高校3年間分の教科書(全42冊)の各章(全502章)で扱われている題材内容を、日本十進分類法(NDC)に基づいて分類し、その結果を質的特色に考慮して分析・検討することによって、特徴とその要因を実証的に明らかにする。本研究目的は以下のようになる。1) 現代の台湾高校英語教科書で扱われる題材内容の内容構成の特徴を、歴史的観点から明確にする。さらには日本の英語教育に応用できる側面を明らかにする。2) 台湾の高等学校英語教科書の題材内容が、どのような社会・文化的、政治・経済的、そして歴史的背景や要因によって編纂されてきたかを明らかにする。台湾の教科書の題材内容の特徴が、今後、日本の英語教育にどのような示唆を与えるかについては、1983年版の教科書から2008年準拠版に至るまで変わらず、とりわけ1995年以降は、実用英語を重視しつつ「文学」的素養の人間教育を重んじ、これらを両輪としていることが上げられる。比較教育学の観点からは、1980年代からの民主化、自由化の動きが、その後、1987年に戒厳令解除後の1990年代後半からは「本土化」の動きが、教科書の題材内容に反映されていることが実証的に確認された。その他、経済、社会、歴史、イデオロギーの観点からの影響も、台湾の複雑な民族国家の要因や歴史的な経緯と絡み合い、教科書の題材内容の選択に影響を与えていることが明らかとなった。
著者
平井 清子 岡 秀夫 鈴木 広子 河野 円 金丸 芙美 飯田 深雪
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の英語教育が海外の言語教育から学べる点をバイリンガリズムの視点で分析した。その結果、言語を介して新しい概念を習得させ、考えていることや理解したことを言語で「話す」、「書く」ことを通して表現させるCALPを養成することが重要であり、思考を伴う言語教育が高いコミュニケーション能力を育成する上で重要であることが示唆された。その方法として、認知的に深い思考を要求し、比較・評価・判断という活動を可能にする、内容重視の教授法(content-based instruction)やイマージョン教育など、学習内容を中心とした学習者主体の授業の有効性が実証された。