- 著者
-
北井 征宏
大村 馨代
平井 聡里
荒井 洋
- 出版者
- 一般社団法人 日本小児神経学会
- 雑誌
- 脳と発達 (ISSN:00290831)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.1, pp.43-48, 2015 (Released:2015-03-20)
- 参考文献数
- 12
【目的】小児期発症低酸素性虚血性脳症 (HIE) の長期予後に影響する因子を明らかにし, 予後予測に基づく療育計画を提言する. 【方法】生後1カ月以降発症のHIE 42例 (男28例, 女14例, 発症年齢2カ月~13歳10カ月, 経過観察期間1年~14年) を, 粗大運動予後から軽度群 (独歩可), 中等度群 (歩行器歩行可), 重度群 (自力移動不可) に分け, 頭部MRI所見, 発症年齢, 臨床経過, 合併症を後方視的に比較検討した. 【結果】軽度群10例, 中等度群10例のMRI所見は全例限局性損傷, 重度群22例中19例は広範性損傷, 3例は乳児期発症の限局性損傷であった. 中等度群で新生児HIE類似の基底核視床+中心溝周囲病変を示した3例は生後5カ月未満発症であった. 軽度群10例中7例は5カ月以内に独歩を再獲得したが, 9例で中等度以上の知的障害, 3例で重度視覚障害を認めた. 重度群の過半数に外科的合併症 (股関節脱臼, 側彎, 気管切開, 胃瘻) を認め, 紹介までに半年以上を要した6例中5例は, 初診時すでに合併症が進行していた. 【考察】限局性脳損傷例は移動機能獲得を目指したリハビリテーションとともに, 早期に独歩を獲得できても知的障害や視覚障害に対する療育の重要性が高い. 広範性脳損傷例は, 機能獲得は困難だが, 合併症予防のため早期からのリハビリテーションが重要である. MRI所見, 発症年齢, 臨床経過から予後を予測し, 適切な療育計画を立てる必要がある.