著者
榎並 正樹 増田 俊明 平原 靖大
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

顕微ラマン分光装置に組み込むための,超小型点接触変形装置を設計・製作した.この装置は,結晶にかかる局所応力のその場(in-situ)観察をすることを目的とし,精密可動ステージ,超小型ロードセル,アンプとダイヤモンド圧子からなり,試料への荷重の調製は手動で行う.変形観察する試料は石英の単結晶薄板であり,その下面をダイヤモンド圧子で点接触変形させ,それにともなうラマン・シフトの様子を,上面より薄板を通過させたレーザー光で観察する.1. この装置を利用して点接触変形をおこした際のデータと比較するために,まず応力解放後点接触面の2次元マッピングを行い,接触痕と残留圧力分布の関係を解析し,その結果を論文投稿した(投稿中).2. 点接触面の点分析により,石英とは異なる複数のピークが観察された.これは,点接触により,石英とは異なるSiO2相が掲載されたことを強く指示する.現在このピークの同定および,加重のキャリブレーションを行っている.3. ラマン分光分析の鉱物学的研究への適用例として,Enami et al.(2007)によって提唱されたラマン残留圧力計を,三波川変成帯高温部に適用し,エクロジャイト相変成作用の痕跡を検出する試みを前年度に引き続き行った.その結果,(1) 従来はエクロジャイト相変成作用の痕跡が報告されていなかった変泥質岩も,エクロジャイト相の圧力に対応する残留圧力を保持している場合があること,(2) そのような岩石中には,エクロジャイト相を代表すると思われるオンファス輝石やアラゴナイトが,ざくろ石中の包有物として産する場合があることが明らかとなった.これらの成果に関する論文2編を投稿中である.