著者
中村 昭子 阿部 新助 平田 成
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.216-225, 2007-09-25

小惑星の多くが衝突破壊・再集積したラブルパイル天体であることは予想されていたが,平均直径320mの小惑星25143イトカワがラブルパイル天体であったことは新鮮な驚きと興奮をもたらし,小天体の内部構造や表面の進化に関わる衝突現象について,新たな疑問と興味を喚起している,本稿では,イトカワの内部・表面構造について改めて振り返り,また,関連する最近の実験的研究にっいて触れ,小天体の衝突過程に関する我々の知見に対して投げかけられたいくつかの間題について報告する.
著者
布施 綾太 阿部 新助 柳澤 正久 長谷川 直 Fuse Ryota Abe Shinsuke Yanagisawa Masahisa Hasegawa Sunao
出版者
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)
雑誌
平成30年度宇宙科学に関する室内実験シンポジウム 講演集 = Proceedings of 2019 Symposium on Laboratory Experiment for Space Science
巻号頁・発行日
2019-02

平成30年度宇宙科学に関する室内実験シンポジウム (2019年2月28日-3月1日. 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所(JAXA)(ISAS)相模原キャンパス), 相模原市, 神奈川県
著者
阿部 新助 山本 真行 矢野 創 海老塚 昇 渡部 潤一 向井 正
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.107-107, 2006

流星や隕石が、地球大気突入によりどのような物理化学発光素過程を経ているのかは、未解明な点が多い。特に 炭素や水などのアブレーション過程を理解することは、生命起源物質の地球到来過程を解明する上でも重要である。2006年1月15日、NASAのスターダストは、直径80cmのカプセルを人工物では史上最速の12.9 km/sで地球大気に突入させた。我々は、この人工流星をNASA-DC8観測航空機から超高感度ハイビジョンカメラ(UV-II-HDTV)と500 grooves/mmの反射型対物分光器を用いて300-650nm波長領域の分光観測を行った。
著者
阿部 新助
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2001

本論文は、流星および流星発光後に長時間輝くクラウド(永続痕;persistent trains)の未解明の発光過程について分光学的手法で観測的研究を行い 発光物質、励起温度、発光メカニズムなどについて明らかにした研究である。 「流星」とは、サイズがmmから数cm程度のダストが、秒速数10kmという高速で惑星間空間から地球大気に突入する際に、地球大気との衝突によって発光する現象である。発光高度は約100kmの電離圏(中間圏、熱圏)で、最小ダストの直径は0.1mm、質量にして1μg程度である。流星の中でも特に母天体が彗星や小惑星であるものを群流星と呼び、母天体から放出されたダストが形成するダストチューブの中を地球が通過する際に流星群として多数の流星が観測される。母彗星であるTempel-Tuttle彗星が逆行軌道のため、対地速度が最も速い(~71km/s)惑星間空間ダストの一団として観測されるのが「しし座流星群」である。「しし座流星群」の1時間あたりの流星数をみると、数百から数千、時には数万に達するいわゆる「流星雨」と呼ばれるような出現数も過去に記録されており、母彗星の回帰周期に伴い約33年毎に観測されてきた。私は、「しし座流星群」という希少な現象を確実に捕える目的で、7ヶ国から約30名の研究者達が集ったNASA主催の国際航空機観測ミッション(Leonid MAC)に1999年11月に参加し、主に分光観測を行ってきた。私が用いた分光装置は、370nmから850nmの帯域をカバーした光電子増倍管(I.I.)付のモノクロ・ハイビジョンTVカメラ(II-HDTV)に対物グレーティングを装着したもので、これまで観測が難しかった近紫外域(370-400nm付近)にピーク感度を持ち、更にデジタル10ビットの高いダイナミックレンジも備える全く新しい独創的な観測装置であった。国立天文台には、デジタル・ハイビジョンデー夕のコンバート処理を行う施設がないため、通信総合研究所や、民間の研究所の協力を仰ぎ、解析データの準備段階からかなりの労力を要した。データ解析に際しても、多数の原子分子が折り重なった複雑な流星の輝線スペクトルの同定、物理量の導出の精度を上げる目的で、シンプレックス法を用いた波形処理を流星スペクトルへ適応させるなどの新たな解析手法も確立した。今回、解析に使用したのは、クオリティーの高い「しし座流星群(Leonid)」3イベント、および偶然観測に捕らえられた[おうし座流星群(Taurid)」1イベントの計4イベントのスペクトルである。Leonidスペクトル中のFeとMgの時間変化は、地球大気成分の発光である酸素原子と同様のプロファイルを示すが、Naはこれらの物質よりも高高度で光始め、急速に減衰していくことが分かった。これは、超高速突入のため、より揮発性の高いNaから蒸発したことによる。一方、TauridのNaは、Leonidと異なるプロファイルを示し、FeやMgと同様の変化を示した。これは、地球突入速度の違い、あるいは、惑星間空間を周回する間にNaが減少した事に起因すると思われる。また、Tauridスペクトル中のFe/Mgアバンダンスは、Leonidの約2倍も高いことから、Tauridの母天体であるエンケ彗星は、より岩石質な天体であることが推察できる。エンケ彗星は、周期が3.3年と短いために太陽によって表層の揮発性物質がかなり失われた天体であることが予想される。これまで流星の励起温度は、550nmより短波長の金属輝線を使った温度平衡モデルで説明されてきたが、更に私は、対地速度が速い流星で現れるポテンシャル・エネルギーの高い分子に着目し、金属輝線の少ない長波長側(600~800nm付近)に観測された窒素分子のfirst positiveバンド(B3Πg→A3Σ+u)について、分子モデル計算を介して電子、振動、回転温度を決定した。その結果、電子 - 振動温度はともに、Te,v=4,500K±500Kとなり、鉄輝線で求まる励起温度、T=4,500±300Kと非常に良い一致を示した。この事は、熱平衡モデル近似の妥当性を示している。一方、初めて流星中の回転温度を試みたところ、Tr=2,500±500Kという温度が得られた。これらの振動-回転温度の差異は、化学平衡が十分に達成されず、厳密には温度平衡状態にはないことが示唆される。今後、分解能を上げた観測を行えば、更に詳細な議論が行えるであろう。流星の母天体である彗星は、太陽系が形成された当時の物質を閉じ込めた始原的な天体であると共に、惑星間塵や地上で採取される隕石(炭素質コンドライト)などの供給源とも考えられている。しかしながら人類は未だ、物質分析的にその起源を彗星と証明できる微粒子を持っていない。流星観測は、「地球大気を巨大なダスト検出器」に見たてた「地球に居ながらにしての彗星・小惑星探査」ともいえる。ハレー彗星探査で、C,H,O,Nが豊富に存在している事が明らかになった事から、彗星物質(流星)には耐火性有機炭素が豊富に含まれ、それらが地球に供給されている事が指摘されているが、未だにその証拠な無い。私は、彗星コマ中で近紫外線の非常に強い輝線として観測されるCN分子(B2Σ+→X2Σ+)のモデルスペクトルと、流星スペクトルの近紫外部を比較する事から、CN分子の宇宙起源説の検証を行った。地球突入速度の遅い「おうし座流星群」の“光初め゛に、CN分子と思われる超過が認められたが、鉄輝線などのコンタミもあり更に慎重な議論が必要である。 「流星痕」とは、極めて明るい流星(火球)の流れた後に数分以上も残る輝くガス雲である。常に宇宙空間からエネルギーの供給があり輝いているオーロラなどと異なり、永続痕は一度だけの流星の衝突エネルギーだけで長時間輝き続ける。この長時間輝き続けるメカニズムが未解決であった。出現予測が全くつかない希少な現象にあるため、永続痕がどのような物質で構成されているかでさえ明らかにされていなかった為、私はこの突発天体現象を確実に捕えるための携帯式の分光器システムを製作した。「しし座流星群」は対地速度が大きく、大気との衝突で解放されるエネルギーも大きいため、流星痕が発生する確率が最も高い流星群である。その結果、1998年「しし座流星群」に伴う“流星痕の分光観測に成功し、これまでにない高いクオリティーのスペクトルを得ることができた。解析の結果、初期(流星消滅後約30数秒後まで)の永続痕には、マグネシウム、鉄が最も多く含まれ、次いでナトリウムやカルシウム、アルミニウムなどの金属原子が豊富に含まれている事が明らかになった。原子スペクトルのモデル計算を行い物理量の導出を試みた結果、初期(流星消滅後約20秒後)永続痕の励起温度は2,200Kという高温状態であることが明らかになった。しかし、流星消滅後約30秒後には約1,000Kへと急激にクーリングされ、40秒後にはもはや顕著な原子輝線はなく、600nm付近をピークに持つ分子バンドが支配している事が明らかになった。永続痕本体(0次光)の時間変化の比較から、クーリングが卓越した状況が推定でき、熱エネルギーが光エネルギーに何ら関与しない、化学ルミネッセンスが放射過程に効いていることが推察できる。流星起源のFe、Mg、Naと地球大気起源の酸素原子による反応で、高励起状態の分子(FeO,MgO,NaO)が生成され、長時間の発光に関与しているものと思われる。
著者
阿部 新助 アベ シンスケ Shinsuke ABE
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2001-03-23

本論文は、流星および流星発光後に長時間輝くクラウド(永続痕;persistent trains)の未解明の発光過程について分光学的手法で観測的研究を行い 発光物質、励起温度、発光メカニズムなどについて明らかにした研究である。<br /> 「流星」とは、サイズがmmから数cm程度のダストが、秒速数10kmという高速で惑星間空間から地球大気に突入する際に、地球大気との衝突によって発光する現象である。発光高度は約100kmの電離圏(中間圏、熱圏)で、最小ダストの直径は0.1mm、質量にして1μg程度である。流星の中でも特に母天体が彗星や小惑星であるものを群流星と呼び、母天体から放出されたダストが形成するダストチューブの中を地球が通過する際に流星群として多数の流星が観測される。母彗星であるTempel-Tuttle彗星が逆行軌道のため、対地速度が最も速い(~71km/s)惑星間空間ダストの一団として観測されるのが「しし座流星群」である。「しし座流星群」の1時間あたりの流星数をみると、数百から数千、時には数万に達するいわゆる「流星雨」と呼ばれるような出現数も過去に記録されており、母彗星の回帰周期に伴い約33年毎に観測されてきた。私は、「しし座流星群」という希少な現象を確実に捕える目的で、7ヶ国から約30名の研究者達が集ったNASA主催の国際航空機観測ミッション(Leonid MAC)に1999年11月に参加し、主に分光観測を行ってきた。私が用いた分光装置は、370nmから850nmの帯域をカバーした光電子増倍管(I.I.)付のモノクロ・ハイビジョンTVカメラ(II-HDTV)に対物グレーティングを装着したもので、これまで観測が難しかった近紫外域(370-400nm付近)にピーク感度を持ち、更にデジタル10ビットの高いダイナミックレンジも備える全く新しい独創的な観測装置であった。国立天文台には、デジタル・ハイビジョンデー夕のコンバート処理を行う施設がないため、通信総合研究所や、民間の研究所の協力を仰ぎ、解析データの準備段階からかなりの労力を要した。データ解析に際しても、多数の原子分子が折り重なった複雑な流星の輝線スペクトルの同定、物理量の導出の精度を上げる目的で、シンプレックス法を用いた波形処理を流星スペクトルへ適応させるなどの新たな解析手法も確立した。今回、解析に使用したのは、クオリティーの高い「しし座流星群(Leonid)」3イベント、および偶然観測に捕らえられた[おうし座流星群(Taurid)」1イベントの計4イベントのスペクトルである。Leonidスペクトル中のFeとMgの時間変化は、地球大気成分の発光である酸素原子と同様のプロファイルを示すが、Naはこれらの物質よりも高高度で光始め、急速に減衰していくことが分かった。これは、超高速突入のため、より揮発性の高いNaから蒸発したことによる。一方、TauridのNaは、Leonidと異なるプロファイルを示し、FeやMgと同様の変化を示した。これは、地球突入速度の違い、あるいは、惑星間空間を周回する間にNaが減少した事に起因すると思われる。また、Tauridスペクトル中のFe/Mgアバンダンスは、Leonidの約2倍も高いことから、Tauridの母天体であるエンケ彗星は、より岩石質な天体であることが推察できる。エンケ彗星は、周期が3.3年と短いために太陽によって表層の揮発性物質がかなり失われた天体であることが予想される。これまで流星の励起温度は、550nmより短波長の金属輝線を使った温度平衡モデルで説明されてきたが、更に私は、対地速度が速い流星で現れるポテンシャル・エネルギーの高い分子に着目し、金属輝線の少ない長波長側(600~800nm付近)に観測された窒素分子のfirst positiveバンド(B3Πg→A3Σ+u)について、分子モデル計算を介して電子、振動、回転温度を決定した。その結果、電子 - 振動温度はともに、Te,v=4,500K±500Kとなり、鉄輝線で求まる励起温度、T=4,500±300Kと非常に良い一致を示した。この事は、熱平衡モデル近似の妥当性を示している。一方、初めて流星中の回転温度を試みたところ、Tr=2,500±500Kという温度が得られた。これらの振動-回転温度の差異は、化学平衡が十分に達成されず、厳密には温度平衡状態にはないことが示唆される。今後、分解能を上げた観測を行えば、更に詳細な議論が行えるであろう。流星の母天体である彗星は、太陽系が形成された当時の物質を閉じ込めた始原的な天体であると共に、惑星間塵や地上で採取される隕石(炭素質コンドライト)などの供給源とも考えられている。しかしながら人類は未だ、物質分析的にその起源を彗星と証明できる微粒子を持っていない。流星観測は、「地球大気を巨大なダスト検出器」に見たてた「地球に居ながらにしての彗星・小惑星探査」ともいえる。ハレー彗星探査で、C,H,O,Nが豊富に存在している事が明らかになった事から、彗星物質(流星)には耐火性有機炭素が豊富に含まれ、それらが地球に供給されている事が指摘されているが、未だにその証拠な無い。私は、彗星コマ中で近紫外線の非常に強い輝線として観測されるCN分子(B2Σ+→X2Σ+)のモデルスペクトルと、流星スペクトルの近紫外部を比較する事から、CN分子の宇宙起源説の検証を行った。地球突入速度の遅い「おうし座流星群」の“光初め゛に、CN分子と思われる超過が認められたが、鉄輝線などのコンタミもあり更に慎重な議論が必要である。<br /> 「流星痕」とは、極めて明るい流星(火球)の流れた後に数分以上も残る輝くガス雲である。常に宇宙空間からエネルギーの供給があり輝いているオーロラなどと異なり、永続痕は一度だけの流星の衝突エネルギーだけで長時間輝き続ける。この長時間輝き続けるメカニズムが未解決であった。出現予測が全くつかない希少な現象にあるため、永続痕がどのような物質で構成されているかでさえ明らかにされていなかった為、私はこの突発天体現象を確実に捕えるための携帯式の分光器システムを製作した。「しし座流星群」は対地速度が大きく、大気との衝突で解放されるエネルギーも大きいため、流星痕が発生する確率が最も高い流星群である。その結果、1998年「しし座流星群」に伴う“流星痕の分光観測に成功し、これまでにない高いクオリティーのスペクトルを得ることができた。解析の結果、初期(流星消滅後約30数秒後まで)の永続痕には、マグネシウム、鉄が最も多く含まれ、次いでナトリウムやカルシウム、アルミニウムなどの金属原子が豊富に含まれている事が明らかになった。原子スペクトルのモデル計算を行い物理量の導出を試みた結果、初期(流星消滅後約20秒後)永続痕の励起温度は2,200Kという高温状態であることが明らかになった。しかし、流星消滅後約30秒後には約1,000Kへと急激にクーリングされ、40秒後にはもはや顕著な原子輝線はなく、600nm付近をピークに持つ分子バンドが支配している事が明らかになった。永続痕本体(0次光)の時間変化の比較から、クーリングが卓越した状況が推定でき、熱エネルギーが光エネルギーに何ら関与しない、化学ルミネッセンスが放射過程に効いていることが推察できる。流星起源のFe、Mg、Naと地球大気起源の酸素原子による反応で、高励起状態の分子(FeO,MgO,NaO)が生成され、長時間の発光に関与しているものと思われる。
著者
阿部 新助
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、惑星間空間から地球へもたらさせる彗星・小惑星起源物質(流星ダスト)から、組成と軌道およびその進化を明らかにすること、流星の超高層大気での発光素過程を調べることである。平成18年度に開発を行った超高感度紫外分光TVカメラと汎用小型TVカメラを用い、平成19年度は、幾つかの観測を施行した。汎用小型TVカメラ一式は、京都大学生存圏研究所・MU 信楽観測所内に設置を行い、リモート観測を継続的に行った。関連成果として、Earth-grazing fireball(地球大気突入後、宇宙へ戻った隕石火球)の観測に成功し、近地球型アポロタイプ小惑星軌道であることなどを突き止めた(研究成果欄参照)。同型の小惑星である小惑星イトカワの探査データを用い、イトカワの平均密度、空隙率、組成や重力場の導出行い、申請者が筆頭あるいは主導的役割を担った論文は、Science, Nature他に掲載された。また、超高感度CCD-TV紫外分光観測システムを用い、2007年9月に長周期彗星起源流星の分光観測をハワイで行ったが、悪天候に阻まれた。同システムを用い、2007年10月オリオン座流星群、12月ふたご座流星群の分光観測に成功した。また、EMCCDカメラ(五藤光学研究所)を使い、流星体の月面衝突閃光を世界で始めてカラーで捉えることに成功した。これらのデータの一部は、論文や学会を通して発表を行った。また、彗星・小惑星と流星の関連について、「Meteoroids and Meteors - observations and connection to parent bodies(S. Abe), in Small Bodies in Planetary Systems(Eds. Ingrid Mann, Akiko Makamura, Tadashi Mukai, Springer-Verlag)」に大学院生向けの教科書としてまとめた。