著者
村上 健 平島 ユイ子 城間 将江 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.45-54, 2013 (Released:2014-04-01)
参考文献数
7

福岡市内の聴覚障害児の就学時の進路は二通りある。一つは普通小学校の通常学級に在籍し、きこえとことばの教室に通う通級指導と、もう一つは聾学校(現在の聴覚特別支援学校)への進学である。教育環境の異なる聴覚障害児の国語力を数研式標準学力検査 CRT-II(国語版)を用いて評価し、全国平均を含め、比較、検討した。今回、対象とした児童は 23 名である。またそれぞれにおいて、国語の授業で使用しているコミュニケーションモードおよび時間外に行われている補習についてアンケート調査を行った。その結果、通級児童の CRT-II の平均得点率が70%以上と高得点を示し、聾学校在籍児の平均得点率も60%以上と標準以上の成績であった。しかし、聾学校、通級指導とも高学年群で「書く能力」が全国平均得点率の伸びよりも低い結果であった。聴覚障害児の問題を裏付けている「書く能力」の向上は、就学先にかかわらず、今後の課題と考えられた。
著者
平島 ユイ子
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.29-33, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
5

学習障害の一つである読み書き障害の主な原因は音韻意識(音に対応する文字の記憶や音声からの意味の想起など)の育ちにくさであるが、視機能の問題を併せ持つこともある。視機能の問題があると読み書きはより困難になる。周囲が視機能の問題を理解し、支援するためには、学校でどのような困難さが現れるのかを明らかにする必要があった。そこで、視機能の問題を持つ学習障害児1症例の学校における困難さを明らかにし、支援について検討した。症例は視機能に問題があることに8歳で初めて気づいた。書字の特異な部分省略と文字が動くという訴えによって眼科受診し、斜視と診断された。フレネル膜付き眼鏡が処方されたことで文字のずれや省略が軽減した。また、照明や文字の拡大等の支援を学校で得ることで視覚的な困難さが減り、読み書きを伴う学習に取り組める様になった。
著者
岡田 三津子 岡 孝和 田中 くみ 渡口 あかり 原之薗 裕三枝 平島 ユイ子 大田 恵子 筒井 康子 角田 智恵美 岩田 仲生
出版者
九州女子大学・九州女子短期大学
雑誌
九州女子大学紀要. 自然科学編 (ISSN:0916216X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.43-61, 2008

背景と目的:最近、児童生徒のうつ病の有病率の高さが注目されている。うつ病の治療法は確立されており、早期発見すれば治療できる。児童生徒のうつ病のケアのためには、早期発見早期治療システムの構築が必要であろう。養護教諭は学校におけるメンタルヘルスケアにおいて中心的な役割を果たすことが期待されている。しかし、養護教諭は医師との日頃からの連携がなければ、その達成は不可能である。そこで、連携の現状、連携推進の問題点について、小学校に勤務する養護教諭を対象にして質問票調査を行った。方法:福岡県Y市教育委員会の協力を得て、Y市の公立小学校に勤務する12養護教諭を対象にして、精神科専門医との連携についての自記式質問票調査を行った。質問票の内容は、(1)養護教諭が経験した児童の心の問題について(2)児童の心の問題の対処に関する現状について(3)精神科や心療内科の専門医との連携による児童のうつ病の早期発見についてであった。質問票の回収率は100%であった。結果:養護教諭が頻繁に経験した困難な児童の心の問題は、主として、不登校と不定愁訴だった。次に多かったのが、行為障害や反抗挑戦性障害等の学級経営を著しく妨害する行動だった。すべての養護教諭が学校単独では児童の心の問題をケアすることはできないと考えていた。しかし、小学校と心療内科や精神科専門医との連携はほとんどなく、半数以上の養護教諭が連携に困難を感じていた。また、うつ病の早期発見早期治療システムの構築については、良いことだとは認めるものの、実現可能と考えている養護教諭は少なかった。結論:養護教諭が頻繁に経験した困難な小学生の心の問題は小児のうつ病と密接な関係があるものだった。しかしながら、小学校と心療内科や精神科専門医との連携は乏しかった。協力して児童の心の問題をケアするためには、懇談会などを通じて、率直な意見の交換やお互いの立場の理解を深めることが大切であろう。