著者
鈴木 邦明 渋谷 真希子 長谷 由理 平沖 敏文 木村 幸文 藤澤 俊明
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.116-123, 2017-03

日常臨床において,全身麻酔も,局所麻酔も,高い安全性で実施されているが,全身麻酔薬及び局所麻酔薬の詳細な作用機序や,副作用の機序については,いまだに不明な点が多く残されている.全身麻酔の作用機序の仮説は,大きく,脂質に対する作用を重視する非特異説(リピド説)と,特定のタンパク質に対する作用を重視する特異説(タンパク説)とに分けられる.長年にわたる研究の中で,非特異説に傾いたり,特異説に傾いたりしてきたが,現在でも一致はみていない.本稿では,両説の現状を紹介した後に,非特異説に違いないと考えて著者らが行ってきた研究を紹介したい.局所麻酔薬の作用機構は,Na+チャネルを遮断して神経インパルスの発生と伝導を抑制する,として確定されているが,Na+チャネル以外のさまざまな受容体,イオンチャネルや酵素に作用することも認められている.局所麻酔作用に付随する種々の作用の詳細,あるいは副作用の機序という点では,不明な点も多い.本稿では局所麻酔薬の作用に関する現状を紹介した後,ATPaseを中心に著者らが行ってきた研究を紹介したい.