著者
鈴木 邦明
出版者
帝京平成大学
雑誌
帝京平成大学紀要 (ISSN:13415182)
巻号頁・発行日
no.32, pp.183-188,

The current study has focused on elementary school curriculum guideline during a decade from 1945 when game of tag was positively adopted as a class at school. Objective was to analyze how the game of tag was handled and clarify educational system and social situation back then. A characteristic of game of tag is that players move their bodies in various ways. Previous studies have found that the game helps improve such abilities as stamina, running, and agility. Also, the game has been found to be good for not only physical aspects but also children's sociality and cooperation. As a result of the research, it has been proved that ratio of game of tag using certain tools was lower in the school curriculum guideline back then compared with that in 2017. It is believed to be associated with lack of supplies after the war. The game is also characterized as being playable without any tools. Furthermore, its rule is so flexible that it can be played depending on conditions. Those characteristics may have led to the results this time.
著者
鈴木 邦明
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.16-27, 2017-09

Na, K-ATPaseはNa-ポンプあるいはNa,K-ポンプと呼ばれる生理機能を担う酵素である.ほぼすべての動物細胞の形質膜に存在し,ATPの加水分解エネルギーを用いてNa+とK+の能動輸送をおこなう.その結果,細胞内外のNa+とK+の濃度勾配および電位差の維持を担い,細胞レベルでは細胞の容積や浸透圧の維持に関与する.特殊化した機能としては,神経や筋肉細胞の興奮性の維持,腎臓での水やNa+の再吸収に関与する.また,Na, K-ATPaseの形成したNa+の濃度勾配を利用して,小腸における糖やアミノ酸の吸収が行われる.その消費エネルギーは,安静時の代謝エネルギーの3割,神経系においては7割を占めるとされる. Na-ポンプ機能の実体がNa, K-ATPaseであると認められた頃から,ATPの持つ化学エネルギーを,どのようにNa+とK+の能動輸送という物理的なエネルギーに変換するのか,その機構の解明がNa, K-ATPase研究の焦点の一つであり,Na,K-ATPaseの反応機構の解明が進められた.20世紀後半には,Na,K-ATPaseの反応機構はほぼ確立され,その解析に大きな貢献のあった二人の研究者の名前をとってPost-Albersの反応機構と呼ばれる.この反応機構は,ATP加水分解中にATPの末端のリン酸を結合したリン酸化反応中間体(EP)を形成するのが特徴である.この反応機構では,EPの分子構造変化を中心に据えて,ATPの加水分解による,細胞内から細胞外へのNa+,細胞外から細胞内へのK+の輸送,すなわちNa-ポンプ機能をきれいに説明することができる.Na, K-ATPaseはEPを形成することからP型ATPaseと呼ばれる.Post-Albersの反応機構は,同じくP型ATPaseである筋小胞体や細胞の形質膜に存在するCa -ATPase,また,胃粘膜において胃酸分泌を担うH, K-ATPaseの反応機構の解析に大きな影響を与えた. 強心配糖体であるジギタリス(digitalis)やウアバイン(ouabain)がNa-ポンプ機能を抑制することが知られていたが,これらの薬物はその実体であるNa, K-ATPase活性を抑制する.Na, K-ATPaseの研究においてはouabainを使用することが多く,uabainはNa, K-ATPaseの特異的な阻害薬とされる.Na, K-ATPaseの反応機構の研究過程で,ouabainが不可逆的にEPに結合してNa, K-ATPase活性を抑制することが明らかにされ,強心配糖体による強心作用もNa, K-ATPase活性の抑制をもとに説明された.Na, K-ATPaseが全身の細胞に存在し重要な機能を担っているわりには,20世紀末の段階では,Na,K-ATPaseを標的とする重要な薬物は強心配糖体以外には知られていなかった.また,Na, K-ATPaseの反応機構に関する研究も終了した感があった. しかし,21世紀に入り,ここ20年くらいの間にNa, K-ATPaseとouabainを巡って大きな研究の進展があった.それまで,Na, K-ATPaseの機能はNa+とK+の濃度勾配形成の結果に基づくものであったが,その機構とは別に,Na, K-ATPaseが細胞内情報伝達系に作用することが明らかになり,高血圧症や発癌との関係で新たな展開があった.また,生体内にouabainあるいは類似した物質が存在することが明らかになった.これら内在性のouabain関連物質は,ホルモンとしてNa, K-ATPase活性を調節することにより高血圧症や発癌に関与する.また,強心作用薬であるouabainは,現在では,抗がん薬としても期待されている. 本特集では,Na, K-ATPaseおよび関連する薬物の現状と,筆者らが行ってきた研究を紹介したい.
著者
鈴木 邦明 渋谷 真希子 長谷 由理 平沖 敏文 木村 幸文 藤澤 俊明
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.116-123, 2017-03

日常臨床において,全身麻酔も,局所麻酔も,高い安全性で実施されているが,全身麻酔薬及び局所麻酔薬の詳細な作用機序や,副作用の機序については,いまだに不明な点が多く残されている.全身麻酔の作用機序の仮説は,大きく,脂質に対する作用を重視する非特異説(リピド説)と,特定のタンパク質に対する作用を重視する特異説(タンパク説)とに分けられる.長年にわたる研究の中で,非特異説に傾いたり,特異説に傾いたりしてきたが,現在でも一致はみていない.本稿では,両説の現状を紹介した後に,非特異説に違いないと考えて著者らが行ってきた研究を紹介したい.局所麻酔薬の作用機構は,Na+チャネルを遮断して神経インパルスの発生と伝導を抑制する,として確定されているが,Na+チャネル以外のさまざまな受容体,イオンチャネルや酵素に作用することも認められている.局所麻酔作用に付随する種々の作用の詳細,あるいは副作用の機序という点では,不明な点も多い.本稿では局所麻酔薬の作用に関する現状を紹介した後,ATPaseを中心に著者らが行ってきた研究を紹介したい.
著者
山下 知巳 鈴木 邦明 出山 義昭 山岡 真茂 北田 秀昭 福田 博
出版者
JAPANESE SOCIETY OF ORAL THERAPEUTICS AND PHARMACOLOGY
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.4-12, 2002-04-01 (Released:2010-06-08)
参考文献数
19

Nedaplatin (NDP), an anticancer platinum complex, is supposed to have stronger action on malignant tumor and less nephrotoxicity than cisplatin. As details of the nephrotoxicity of NDP are not known, we studied the effect of NDP on pig kidney Na+, K+-ATPase activity and human renal proximal tubule epithelial cells (HRPTE cells) . The pig kidney Na+, K+-ATPase activity was inhibited by NDP, and the inhibition depended on the incubation time and the concentration of NDP, and the activity was recovered by sulfides. NDP decreased Na+, K+-ATPase and acid phosphatase activities of HRPTE cells, and the decrease was partially inhibited by addition of 2-mercaptoethanol (2ME) . HRPTE cell death by apoptosis was observed in the presence of NDP, and it was also partially inhibited by 2ME. These results suggest that the inhibition of enzyme activities by NDP may be related to nephrotoxicity, and that some sulfides can recover the activities and may reduce nephrotoxicity.
著者
鈴木 邦明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

骨芽細胞様細胞株であるMC3T3-E1細胞は、コンフルエンス後石灰化基質を分泌し、石灰化部位形成時期にかけて蛋白質チロシンホスファターゼ(PTP)活性、蛋白質チロシンキナーゼ(PTK)活性、分子量263,224,29.5,28.2kDaの蛋白質のリン酸化チロシンレベルが上昇した。PTK,PTPは、細胞の増殖、分化に重要な役割を果たしているとされており、その中の石灰化過程におけるPTPの役割を調べるため、MC3T3-E1細胞のPTPの精製を試み、性質を調べた。MC3T3-E1細胞の細胞質画分から3種類のPTPを部分精製した。そのうち2種類はイムノブロッティング法により抗PTP1B,PTP1D抗体と反応し、PTP1B,PTP1Dと判明した。これらPTP1B,PTP1Dは細胞が増殖、分化し、基質を分泌し石灰化する過程で発現量が増加し、またオリゴマーとして存在していることが推測された。市販の抗体と反応しなかった他の1種類のPTPの精製を試み、カラムクロマトグラフィーにより全細胞ホモジネートに比較して、4779.1倍精製した標品を得た。この標品の分子量はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により33あるいは39kDaであり、またゲル濾過による見かけの分子量は933kDaであった。PTP活性の至適pHはpH6付近であった。活性は一般的なPTPの阻害剤であるバナジン酸、モリブデン酸、亜鉛によって阻害され、セリン/スレオニンホスファターゼの阻害剤であるオカダ酸によっては阻害されなかった。また、マグネシウムによって活性が増強され、EDTAによって活性が阻害された。以上の結果からPTPが石灰化過程においてMC3T3-E1細胞の細胞増殖、基質合成に深く関わっている可能性と、MC3T3-E1細胞が新種のPTPを有している可能性が示唆された。