- 著者
-
平田 光彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.4, pp.4_1-4_8, 2014-11-30 (Released:2015-04-10)
- 参考文献数
- 25
本研究では,整斉を基調とした楷書の点画構成において,はねを有する画が与える美的印象を,感性評価によって実証的に検討した.調査対象は,右方向へ送筆後にはねる画と右下方向へ送筆後にはねる画の強調効果であった.刺激には,はねを有する画を強調した標準構成のサンプル文字と強調のないサンプル文字を用意し,SD法によって視覚的印象のデータを採集した.評価尺度には筆者らの先行研究で構成した3次元(「均整美」,「開放性(活動性)」,「力量性」)の尺度を使用した.サンプル文字の評価値には,採集データに項目反応理論を適用して求めた尺度値を使用し,分散分析による検定をおこなった. 調査の結果,はねを有する画は,右方向への強調構成によって均整美の評価を上げた.また開放性の評価結果から,はねを有する画が,視覚を通して身体運動への共感覚を喚起する可能性が推察された.最後に,右下に送筆後はねる画で,力量性の評価が向上する画の長さの範囲があることが示唆された.