著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.195-208, 1998-12-01
被引用文献数
2

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二 Xu Xiaoniu Enoki Tsutomu Tokashiki Yoshihiro Hirata Eiji
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = The Science Bulletin of the Faculty of Agriculture. University of the Ryukyus (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.45, pp.195-208, 1998-12-01

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。Litter fall and the nutrient returns in a forest were studied. The results obtained from five plots in natural evergreen broadleaved forests at Northern Okinawa Island in the period May 3,1996 to May 1,1998. Annual rates of total litter fall ranged from 7328 to 12700kg ha^<-1> a^<-1> in the first year, and from 5577 to 8073kg ha^<-1> a^<-1> in the second year, with great variation between the two years being related to the effects of the stronger typhoon No. 12 from August 11 to 12,1996. And the foliage litter fall contributed the greatest amount, about 63.7% averagely ranging from 54.6 to 78.8% of the total litter mass, and peaked in March and August, respectively. The results from this investigation indicated that the annual mean litter fall rate was positively correlated with stem volumes, mean D.B.H. and mean height of the stand, however, was negatively correlated with the stand density and neither related to the stand basal area. The annual amounts of nutrient returned by litter fall in the sampling stands were, N from 61.3 to 128.2kg ha^<-1> a^<-1>, P from 2.8 to 6.0kg ha^<-1> a^<-1>, K from 20.8 to 44.5kg ha^<-1> a^<-1>, Ca from 40.0 to 117.9kg ha^<-1> a^<-1>, Mg from 13.3 to 28.3kg ha^<-1> a^<-1>, S from 7.0 to 14.6kg ha^<-1> a^<-1>, Na from 8.4 to 17.2kg ha^<-1> a^<-1>, Al from 8.6 to 16.6kg ha^<-1> a^<-1>, Fe from 0.6 to 1.4kg ha^<-1> a^<-1>, and Mn from 2.6 to 5.4kg ha^<-1> a^<-1>, respectively. However, the annual nutrient returns for microelements such as Cu, Zn, Mo, Co and B were very little. Within the annual cycle, monthly nutrient fall was the most in August and the least in January, and the former was 12&acd;31 times more than the latter. Spring and summer (from March to August) was most important, accounting for over 70% of the nutrients.
著者
安里 練雄 平田 永二 新本 光孝 篠原 武夫
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.61-70, 1999-12-01

沖縄県における林業従事者の雇用の促進や就労環境の改善に寄与することを目的に,森林組合傘下の13作業班について,年間の就労日数や作業内容等の就労実態調査を行った。その結果を要約するとおよそ次の通りである。1) 作業班員には60歳以上の者が多く,5年以上の林業経験者が約60%を占めている。2) 沖縄本島の作業班は,班長の個人経営体的性格が強く,森林組合と班長の間で「下請け」契約を交わして事業を行っている。宮古,八重山の作業班は,森林組合が作業班員を直接雇用し,作業班長は連絡調整の役割を担っている。3) 作業班の年間の平均就労日数は162.6日で,労働日の66%に相当し,就労の機会が少ない。作業班の差も大きい。4) 作業班の月平均就労日数は13.6日である。月別の平均就労日数率は,5月の最低28%から2月の最高82%と,時期的に変動が大きい。5) 13作業班の全作業員(179人)による年間の就労のべ人数は,23,763人/日である。月別の平均就労人数は1,980.3人である。6) 作業班の年間の就労人数率は平均53%である。作業班により11%から103%と,就労機会に大きな差がある。7) 作業班の月別就労人数率は,5月が最低で21%,1月が最高で70%となって,月別の差が大きい。年間を通じて就労の機会が不安定である。8) 作業の内容は,複層林の下刈り作業が最も多く,次いでマツ防除作業,単層林下刈り作業,育成天然林作業などとなっている。複層林下刈り作業は国頭村及び宮古森林組合傘下の作業班に多く,マツ防除作業は沖縄北部森林組合傘下の作業班に多い。9) 作業班全体での年間作業総日数は2,114日である。このうち65.6%は市町村有林の事業で,32.0%は県有林又は県の事業で,これ以外の事業はごくわずかである。県や市町村主導の林業活動が展開されており,行政の取り組みの影響が極めて大きい。10) 多くの作業班長は就労日数の増加を望んでいる。全ての森林組合,作業員のほとんどが「事業量の安定確保による通年雇用の確保」を最重要課題としている。