著者
金城 和俊 渡嘉敷 義浩
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業研究 (ISSN:18828434)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.47-52, 2015 (Released:2016-03-29)
参考文献数
25

本研究ではジャーガルと国頭マージにおける硫安の施肥による塩基の可溶化のメカニズムを考察した.硫安の施肥量の増加に伴い,両土壌では共に土壌pHが低下し,硝酸の生成量は両土壌間で異なった.ジャーガルでは施肥した硫安由来のアンモニア態窒素の多くは硝酸態窒素に変化し,国頭マージでは硝酸態窒素の生成量は少なかった.土壌間における硝酸態窒素の生成量の違いはジャーガルと国頭マージの塩基の可溶化のメカニズムが異なることに起因した.土壌塩基の可溶化のメカニズムをまとめると,ジャーガルでは硝化作用に伴い,放出される水素イオン,国頭マージでは硝化されずに残存したアンモニウムイオンと一部硝化作用で放出される水素イオンが塩基の可溶化に関与していることが示唆された.
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.195-208, 1998-12-01
被引用文献数
2

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。
著者
徐 小牛 榎木 勉 渡嘉敷 義浩 平田 永二 Xu Xiaoniu Enoki Tsutomu Tokashiki Yoshihiro Hirata Eiji
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 = The Science Bulletin of the Faculty of Agriculture. University of the Ryukyus (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.45, pp.195-208, 1998-12-01

沖縄本島北部の琉球大学農学部附属与那演習林で, 天然生常緑広葉樹林のリターフォール量とそれによる養分還元量の季節変化を, 1996年5月から1998年2月までの2年間にわたって調べた結果, 以下のことが明らかになった。年間のリターフォール量は, 一年目には7328&acd;12700 kg ha^<-1>, 二年目に5577&acd;8073 kg ha^<-1>で, 年間の差が大きかった。これは, 台風の影響によるものと思われる。リターの内訳をみると, 落葉量, 落枝量, 生殖器官の落下量およびその他の平均割合が, それぞれ63.7%, 28.2%, 1.4%, 6.7%となった。リターフォールの年間量の平均値と林分構造との関係をみると, 平均直径, 平均樹高, ヘクタール当たり本数及び材積とは比較的高い相関が認められたが, ヘクタール当たり断面積との間には相関がなかった。リターフォールによる年間養分還元量は, 窒素61.3&acd;128.2 kg ha^<-1>, リン2.8&acd;6.0 kg ha^<-1>, カリウム20.8&acd;44.5 kg ha^<-1>, カルシウム40.0&acd;117.9 kg ha^<-1>, マグネシウム13.3&acd;28.3 kg ha^<-1>, いおう7.0&acd;14.6 kg ha^<-1>, ナトリウム8.4&acd;17.2 kg ha^<-1>, アルミニウム8.6&acd;16.6 kg ha^<-1>, マンガン2.6&acd;5.4 kg ha^<-1>, 鉄0.6&acd;1.4 kg ha^<-1>であった。しかし, 微量元素の銅, 亜鉛, モリブデン, コバルト及びホウ素の還元量は極めて少なかった。また, 養分還元量は8月に最も多く, 年間量の19.3%&acd;38.3%を占め, 1月には最も少なくて, 僅か年間量の1.2%&acd;2.0%であった。養分還元量は3月から8月までの間に集中し, この6か月間で年間総量の70%以上を占めた。リターフォールの養分含有率はプロット間に違いがみられたが, これは立地条件の違いのほかに樹種構成の変化とも関係しているものと思われる。Litter fall and the nutrient returns in a forest were studied. The results obtained from five plots in natural evergreen broadleaved forests at Northern Okinawa Island in the period May 3,1996 to May 1,1998. Annual rates of total litter fall ranged from 7328 to 12700kg ha^<-1> a^<-1> in the first year, and from 5577 to 8073kg ha^<-1> a^<-1> in the second year, with great variation between the two years being related to the effects of the stronger typhoon No. 12 from August 11 to 12,1996. And the foliage litter fall contributed the greatest amount, about 63.7% averagely ranging from 54.6 to 78.8% of the total litter mass, and peaked in March and August, respectively. The results from this investigation indicated that the annual mean litter fall rate was positively correlated with stem volumes, mean D.B.H. and mean height of the stand, however, was negatively correlated with the stand density and neither related to the stand basal area. The annual amounts of nutrient returned by litter fall in the sampling stands were, N from 61.3 to 128.2kg ha^<-1> a^<-1>, P from 2.8 to 6.0kg ha^<-1> a^<-1>, K from 20.8 to 44.5kg ha^<-1> a^<-1>, Ca from 40.0 to 117.9kg ha^<-1> a^<-1>, Mg from 13.3 to 28.3kg ha^<-1> a^<-1>, S from 7.0 to 14.6kg ha^<-1> a^<-1>, Na from 8.4 to 17.2kg ha^<-1> a^<-1>, Al from 8.6 to 16.6kg ha^<-1> a^<-1>, Fe from 0.6 to 1.4kg ha^<-1> a^<-1>, and Mn from 2.6 to 5.4kg ha^<-1> a^<-1>, respectively. However, the annual nutrient returns for microelements such as Cu, Zn, Mo, Co and B were very little. Within the annual cycle, monthly nutrient fall was the most in August and the least in January, and the former was 12&acd;31 times more than the latter. Spring and summer (from March to August) was most important, accounting for over 70% of the nutrients.
著者
大屋 一弘 渡嘉敷 義浩 高江洲 均 多喜 和彦 西垣 晋
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.165-176, 1976-12-01
被引用文献数
1

沖縄本島南部, 糸満市阿波根および西原村棚原に堆積する典型的な2つの"ジヤーガル"土壌断面を選定し, 各断面をおのおの5層に分け, 土壌断面中の理化学性, 粘土鉱物組成, および水溶性成分の移動・集積について調べた。粘土鉱物組成は主として選択溶解法とX線回折分析法を用い, 水溶性成分は蒸留水の浸出で溶出する成分中Siを比色法, Fe, Ca, Mgを原子吸光法, Na, Kを炎光法を用いておのおの測定した。典型的な"ジヤーガル"とその母材の土壌反応はいずれも弱アルカリ性反応を呈し, 粒径分布はシルト部分や細砂部分の含量が高く, 土性はSiCLあるいはLを示した。また, 有機炭素は1%以下で, CEC25&acd;34me/100gを示し, 置換性塩基中Caは31&acd;39me/100gで最も多量に含まれた。Kは1&acd;3me/100gで最上層と最下層に多く含まれ, Mgは1&acd;4me/100g, Naは1&acd;2me/100gでいずれも上層から下層へ漸次増加した。粘土部分の非晶質成分はジチオナイト可溶成分が4&acd;11%, そのうちFe_2O_3が2&acd;4%含まれ, 0.15Mシュウ酸ナトリウム可溶成分が8&acd;22%含まれた。後者の成分は上層から下層へ量的に漸次減少し, いずれもSiO_2/Al_2O_3分子比が2に近い値を示した。また, 粘土部分の結晶質成分は71&acd;85%含まれ, 上層から下層へ幾分増加した。断面中の鉱物組成は, 全層にモンモリロナイトが主体を占め他にイライト, Al-バーミキュライト, クロライト, カオリナイトがいずれも少量随伴した。一方, シルト部分は著しく多量の石英とごく少量の長石とが全層に含まれ, 両鉱物の他にごく少量のカルサイト, ドロマイト, クリストバライトが付随し, これらの鉱物の存否は各層間で異なった。"ジヤーガル"土壌断面での水溶性成分中Si, Feの溶出量および溶出の型は土壌断面の各層間で異なった。これに対しCa, Mg, K, Naの塩基類は溶出量および溶出の型に土壌断面の各層間でほぼ一定の傾向がみられた。Caは数10PP^m溶出し, 5mの深さの泥灰岩層に著しく多かった。Mg, Naの溶出量は1&acd;3ppmで上層から下層へ漸次増加し, 特にMgは最下層の泥灰岩層では5ppmに達した。Kは2&acd;4ppm溶出し最上層と最下層の泥灰岩に多く, 中間層ではMgとNaの溶出量の間にあった。なお, 連続的に抽出測定される水溶性塩基のMg, K, Naは或る比率をもって置換性部分から放出されるものと思われる。また, Caの大部分は遊離のCaCO_3として存在することが示唆された。