著者
内田 雅也 石橋 弘志 平野 将司 水川 葉月
出版者
有明工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年、分子内にフッ素原子・官能基が導入されたフッ素系農薬が盛んに研究開発され、殺虫剤の開発品の70%以上が「新世代の殺虫剤」と呼ばれる「フッ素系殺虫剤」である。フッ素系殺虫剤は、使用量も年々増加しており、おもに河川等を通じて海洋に流出し、海洋生態系への影響が懸念されるが、淡水生物を用いた影響評価しか実施されてなく、海産生物での影響評価例は少ないことから海域における環境リスクは不明である。本申請課題ではフッ素系殺虫剤の海域におけるモニタリング、海産甲殻類アミを用いた生態毒性試験およびトランスクリプトーム解析を実施し、海域におけるフッ素系殺虫剤の汚染実態と環境リスク評価を実施する。
著者
三浦 苑子 内田 雅也 平野 将司 山内 良子 吉津 伶美 草野 輝彦 古賀 実 有薗 幸司
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.195-201, 2013-09-30 (Released:2013-10-25)
参考文献数
26

トリクロサン(TCS)およびトリクロカルバン(TCC)は、薬用石鹸やシャンプー等様々な製品に幅広く使用され、産業廃水や生活排水を通じて環境中に広がり、水圏の野生生物に影響をおよぼすことが示唆されている。これらの研究は、水域生態系の生物を対象としたものが多く、化学物質の最終到達地点と考えられる海域に棲息する生物を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、海産甲殻類アミを用いたTCSおよびTCCの生態影響評価を目的とした。急性毒性試験は、USEPAの試験法(EPA/600/4-90/027F)に準拠し、96時間曝露の半数致死濃度を算出した。成長・成熟試験は、USEPAの試験法(EPA method 1007)に準拠し、14日間半止水式曝露を行った。曝露期間中、生死と脱皮数の観察を行い、曝露終了後、体長、体重及び頭胸甲長を測定し、二次性徴の形態観察から雌雄比を算出した。それぞれの半数致死濃度はTCSで70 µg/L、TCCで12 µg/Lであり、現在報告されているTCSとTCCの水環境中濃度よりも高かった。成長・成熟試験の結果、TCSは0.5 µg/L、TCCが0.05 µg/Lで、各測定項目に有意な減少が認められ、半数致死濃度よりも極めて低濃度であった。本研究の結果、環境中濃度が低濃度であっても、長期的な曝露でアミに対する成長・成熟への影響をおぼすことが示唆され、水域環境への影響が懸念された。