著者
大沢 つね子 平野 年秋 南川 幸
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.73-80, 1970-03-15

日本産の肉質キノコ類の消化に関して,ラットに給餌し,糞の検鏡により形態的に観察,不消化物の状態について試験を行った.その結果は次の通りである.1) BasidiomycetesにおいてはTricholomataceae, Amanitaceae, Cortinariaceae, Russulaceae, AscomycetesにおいてはClavariaceaeのFamilyはよく消化されていた.2)BasidiomycetesにおいてはBletaceae, Strobilomycetaceae, AscomycetesにおいてはCantharellaceae, PhylacteriaceaeなどのFamilyに不消化の種類が多い傾向が認められた.3)特に不消化に近い形で排泄されるのを認められたLeccinum scabrum, L. rugosiceps, Strobilomyces floccopus, Boletellus russelliiについて菌傘部,菌柄部にわけて試験した結果,菌傘部に不消化物が多いことを認めた.4)菌傘部の表面と裏面の管孔部にわけて試験したが,管孔部が特に不消化物が多い傾向を認めた.5)管孔部を除いたイグチ科,オニイグチ科は普通の消化のよい肉質キノコと変りがなかった.
著者
平野 年秋
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.69-72, 1979-03-15

(1)ホウレンソウから分離したたんぱく質の生物価は64であった.この値は,たとえば穀類のたんぱく質のそれと比較すると,穀類のうちでも高い方に相当すると考えられる.しかし,消消化率がいくらか低下しているが,これについてはたんぱく質分離操作に問題があると考えられる.(2)米のたんぱく質に対して,粗製ホウレンソウたんぱくは補足効果を示した.(3)粗製ホウレンソウたんぱくを米に加えた場合,消化率の低下は見られなかった.
著者
南川 幸 塩谷 つね子 平野 年秋 ミナミカワ エンヤ ヒラノ M. MINAMIKAWA T. ENYA T. HIRANO
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
巻号頁・発行日
vol.19, pp.21-34, 1973-03-15

"日本産ヒダナジタケ目Aphyllophorales中の肉質キノコ類に関し,その菌類分類学的位置および種の特徴をまとめ,肉質キノコ類を含む科の菌類分類学的特徴について言及し,ヒダナシタケ目中最も美味で広く世界的に利用されているアンズタケ科Cantharellusの成分,特にPro-Bitamine D_2 エルゴステリンに関して定量測定を進め次の結果を得た.1.アンズタケ科のエルゴステリンの含有量はほぼ0.08%から0.2%ぐらいまである.2.アンズタケ科のうちオオムラサキアンズタケが0.19%,ヒナアンズタケの0.17%,アンズタケの0.16%が比較的多く,つづいてベニウスタケ,ミキイロウスタケ,クロラッパタケ,シロアンズタケモドキの0,10%で,アクイロウスタケ,アカラッパタケは比較的少ない.3.エルゴステリンは成熟が進むにつれて増加する傾向が明らかになった.4.エルゴステリンは子実体の各部位により含有量に大きな差がある.すなわち菌傘部に多く菌柄部が少ない."
著者
内島 幸江 平野 年秋 南 廣子 胡 国文
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.125-135, 1994-03-05

近年,照葉樹林文化論を中心として日本文化の基層を追求する研究が展開されている.最近の比較民族学的研究により,中国西南部(貴州省・雲南省)からヒマラヤ南麓にいたる照葉樹林帯における民族文化の特色と,わが国の伝統的な文化の間には極めて強い共通性と類似性が見られることが明らかにされてきた.すなわち,モチ,茶,大豆発酵食品をはじめとする食文化や,歌垣,各種の民話や稲作を中心とした農耕文化などの日本と共通した特色がみられることが知られるようになった.また,栽培稲の起源地として,このアジア大陸の亜熱帯圏に属する丘陵山岳地帯である「アッサム・雲南」を中心に考えられており,この地域から揚子江流域へと伝播し揚子江に沿って東へ展開した稲作が,江南一帯から東シナ海を渡って日本の北九州に達しだとするのが,日本へのコメ渡来説の中で最も確実性が高いルートの一つと考えられている.この稲の起源地の周辺の雲南・貴州一帯に走る大高原は起伏の激しい山地であり,そこにさまざまな民族が錯綜して居住している.中国ではそれぞれの民族が相互に交渉しつつ中国の歴史を形成してきたのであり,各民族の習俗・習慣も相互に影響を受けながら,種々の要素が複合した文化を育んできたものと考えられる.貴州省では現在少数民族として公認された集団のなかで苗族が最も多く,第2位は布依族が占めている.中国の苗族総人口の約半数が貴州省で生活(368.6万人)し,また全国の布依族のほとんどが貴州省に居住(247.8万人)しており,両民族とも古い歴史を持ち,多くは漢族の南下に伴い,漢族の勢力に圧迫されてこの地に移住してきた民族であり,照葉樹林文化を継承してきた人々である.一般に少数民族のあいだには,東アジアの古層文化が残存していると考えられているが,貴州省についてのこれまでの民族文化に関する報告は東部,中部を主体としており,西南部地域の苗族,布体族の人々の食生活の実態については,いまだ多くの知見は見られない.この貴州省西南部は交通の不便な辺境の地であるが,数年後に完成予定の鉄道敷設や空港建設,大型ダムの建設計画があり,今後これらの急激な開発の影響を受けて自然環境や社会環境が変化し民族の特色が消失する危惧が持たれるところである.なお,中国の経済政策等の変化も注目されるところであり,それに伴って食生活も多元的に変容するものと思われる.そこで現在の食形態を調査し,この地域の苗族および布依族の食文化の特色を明らかにし,今後の食生活の方向を探ることを目的として本研究を行った.本報ではこの地域の苗族,布依族の現在の食生活状況を把握するため現地調査を行い,食文化の諸側面のうち食品の利用状況について比較検討した.