著者
髙尾 昌樹 美原 盤 新井 康通 広瀨 信義 三村 將
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3+4, pp.158-163, 2017 (Released:2018-04-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

【要旨】110歳以上(超百寿者)4例の脳病理所見を検討した。アルツハイマー病の変化は、3例ではintermediateレベルにとどまり、十分な老人斑と神経原線維変化の存在を認めた症例はなかった。1例はprimary age-related tauopathyであり、老人斑はほとんど無く、神経原線維変化が優位であった。パーキンソン病やレビー小体型認知症病理は認めなかった。高齢者認知症の原因疾患として注目されている海馬硬化症は認めなかったが、一部の海馬でTDP-43沈着を認め、“cerebral age-related TDP-43 pathology and arteriolosclerosis” (CARTS)の初期ともいえる状態であった。近年注目される、aging-related tau astrogliopathy (ARTAG)という、加齢に関するアストロサイトのタウ沈着が全例でみられた。脳血管疾患は軽度であった。加齢とともにアルツハイマー病は増加するとされているが、超百寿者まで検討すると、そういった予想は当てはまらないかもしれない。また、アルツハイマー病以外の加齢に関する病理学的変化も目立たず、脳における加齢変化を検討する上で、超百寿者の脳を解析することは重要である。