著者
山田 明夫 佐藤 基佳 宮原 和郎 広瀬 恒夫
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.783-787, 1984
被引用文献数
1

1981年1月から1982年11月までに, 北海道北部および東部で実施した大動物用X線診療車によって臨床的に一見健康な乳牛2,037頭の集団検診を行いその所見のうち, 第四胃が明視できた1,976頭における第四胃内異物の存在率とその性状について検索した.<BR>1) 第四胃内に全属異物が1,976頭中697頭 (35.3%), 砂粒状物が1,907頭 (96.5%), 磁石が9頭 (0.5%), 塊状陰影物が4頭 (0.2%) に認められた. この成績は, 一般酪農家に飼養されている乳牛の多くが, 金属異物や砂粒状物にもとつく胃粘膜への損傷ないし刺激が原因の一つと考えられている第四胃炎や第四胃潰瘍の危険に曝されていることが示唆された. また, 第四胃に金属異物が到達することはあっても, その可能性はきわめてまれであるという従来の見解を否定する成績であった.<BR>2) 第四胃内金属異物の存在率は, 第二胃内磁石存在群で25.7%, 第二胃内磁石非存在群で42.2%であり, そのうち5cm以上の金属異物は, 前者で2頭, 後者で43頭に認められた. したがって, 第二胃内の磁石は金属異物, とくに5cm以上の長い金属異物の前胃から第四胃への移動を阻止するのに効果のあることが示唆された.
著者
山田 明夫 佐藤 基佳 宮原 和郎 広瀬 恒夫
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.783-787, 1984-12-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

1981年1月から1982年11月までに, 北海道北部および東部で実施した大動物用X線診療車によって臨床的に一見健康な乳牛2,037頭の集団検診を行いその所見のうち, 第四胃が明視できた1,976頭における第四胃内異物の存在率とその性状について検索した.1) 第四胃内に全属異物が1,976頭中697頭 (35.3%), 砂粒状物が1,907頭 (96.5%), 磁石が9頭 (0.5%), 塊状陰影物が4頭 (0.2%) に認められた. この成績は, 一般酪農家に飼養されている乳牛の多くが, 金属異物や砂粒状物にもとつく胃粘膜への損傷ないし刺激が原因の一つと考えられている第四胃炎や第四胃潰瘍の危険に曝されていることが示唆された. また, 第四胃に金属異物が到達することはあっても, その可能性はきわめてまれであるという従来の見解を否定する成績であった.2) 第四胃内金属異物の存在率は, 第二胃内磁石存在群で25.7%, 第二胃内磁石非存在群で42.2%であり, そのうち5cm以上の金属異物は, 前者で2頭, 後者で43頭に認められた. したがって, 第二胃内の磁石は金属異物, とくに5cm以上の長い金属異物の前胃から第四胃への移動を阻止するのに効果のあることが示唆された.
著者
久保 周一郎 八木 康一 小山 次郎 広瀬 恒夫 高橋 迪雄 伊沢 久夫
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1987

獣医学は本来,総ゆる動物に係る医学である. 今日の獣医学は幾多の曲析を経て多くの学際領域をもつ. このことは獣医学の多様性と表現され,多様化の傾向は諸外国に比ベ我が国で著しい. 本研究の目的は,獣医学の在り方について獣医学およびその関連領域の研究者が議論し,21世紀に対応できる獣医学の未来像を構築することである. このため,検討すベき領域および分担者を以下のように決め,各領域から見た獣医学の内容を調査分析し,その成果を昭和62年8月25日北海道大学学術交流会館において全国から参集した獣医学会員(約350名)を対象に公開シンポジウムを開催した. 1.久保,伊沢班員(北大・獣),高橋班員(東大・農),広瀬班員が(帯畜大)は獣医学の現状を分析し,比較医学および比較生物学としての獣医学および臨床分野における高度情報化システムの確立の重要性を強調した. 2.深沢利行班員(九大・農),羽田野六男班員(北大・水産),八木班員(北大・理)は動物性タンパク質確保とその生産動物の疾病防除に関し,畜産学・水産学および獣医学の研究組織の連帯の確立を指摘した. 3.日高敏隆班員(京大・理)は伴侶動物および産業動物の精神衛生について動物行動学の関与の必要性を強調した. 4.加藤巌班員(千葉大・医),小山班員(北大・薬)は実験動物あるいは動物実験の分野の発展に対する獣医学のより一層の貢献を要望した. 5.伊藤浩司班員(北大大学院環境科学)は環境科学および生態学の立場から獣医学における動物の生命倫理の確立を提案した. 6.葛西道生班員(大阪大・基礎工)は21世紀の獣医学の発展のため,獣医学領域における生物工学の研究体制の早期確立を強調した.以上の成果を総合し, その詳細を昭和62年度科学研究費総合研究(B)成果報告書(様式1, 冊子)に紹介すべく準備中である.