著者
佐藤 文昭 見上 彪 林 正信 喜田 宏 桑原 幹典 小沼 操 遠藤 大二 児玉 洋 久保 周一郎
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究の主眼は有用な動物用リコンビナント多価ワクチンの作出に必要な基磯実験の実施にある。リコンビナント多価ワクチンはベ-スとなるベクタ-ウイルスとワクチンの決定抗原遺伝子を結合することにより作出される。ベクタ-ウイルスとしてはマレック病ウイルス(MDV)と鶏痘ウイルスに着目し、それらのチミジンキナ-ゼ遺伝子中に挿入部位を設定した。また同時に、MDVの感染から発病の過程に関る種々の抗原遺伝子の解折とクロ-ニングを行った。すなわち、ワクシニアウイルスをベ-スとしてNDVのHN蛋白遺伝子を組み込んだリコンビナントワクシニアウイルスを作出し、NDV感染防御におけるHN蛋白に対する免疫応答が感染防御に重要な役割を果たすことを明かにした。加えて、インフルエンザウイルスおよびニュ-カッスル病ウイルスの感染防御に関る抗原遺伝子の解折により、抗原遺伝子群の変異を検討した。続けて上記のウイルスベクタ-に外来遺伝子を組み込み、リコンビナント多価ワクチン実用化への可能性を検討した。すなわち、ニュ-カッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN蛋白)とマレック病ウイルスのA抗原の遺伝子をバキュロウイルスベクタ-に組み込み、生物活性と抗原性をほぼ完全に保持した蛋白を得ることができ、ワクチンとしての使用に有望な結果を得た。MDVの単純ヘルペスウイルス(HSV)のB糖蛋白類以蛋白遺伝子をバキュロウイルスベクタ-へ組み込み、高純度の蛋白を得た。さらに、本研究では、将来非常に有用なワクチンを作出するための基磯的な知見とリコンビナント多価ワクチンの実用化を近年中に可能にする実験結果も含むといえる。これらの有用な知見により、本研究は初期の目的を達成したばかりではなく、リコンビナントワクチン実用化への次の目標である野外試験による効用の証明のためにも一助となったといえる。
著者
久保 周一郎 八木 康一 小山 次郎 広瀬 恒夫 高橋 迪雄 伊沢 久夫
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1987

獣医学は本来,総ゆる動物に係る医学である. 今日の獣医学は幾多の曲析を経て多くの学際領域をもつ. このことは獣医学の多様性と表現され,多様化の傾向は諸外国に比ベ我が国で著しい. 本研究の目的は,獣医学の在り方について獣医学およびその関連領域の研究者が議論し,21世紀に対応できる獣医学の未来像を構築することである. このため,検討すベき領域および分担者を以下のように決め,各領域から見た獣医学の内容を調査分析し,その成果を昭和62年8月25日北海道大学学術交流会館において全国から参集した獣医学会員(約350名)を対象に公開シンポジウムを開催した. 1.久保,伊沢班員(北大・獣),高橋班員(東大・農),広瀬班員が(帯畜大)は獣医学の現状を分析し,比較医学および比較生物学としての獣医学および臨床分野における高度情報化システムの確立の重要性を強調した. 2.深沢利行班員(九大・農),羽田野六男班員(北大・水産),八木班員(北大・理)は動物性タンパク質確保とその生産動物の疾病防除に関し,畜産学・水産学および獣医学の研究組織の連帯の確立を指摘した. 3.日高敏隆班員(京大・理)は伴侶動物および産業動物の精神衛生について動物行動学の関与の必要性を強調した. 4.加藤巌班員(千葉大・医),小山班員(北大・薬)は実験動物あるいは動物実験の分野の発展に対する獣医学のより一層の貢献を要望した. 5.伊藤浩司班員(北大大学院環境科学)は環境科学および生態学の立場から獣医学における動物の生命倫理の確立を提案した. 6.葛西道生班員(大阪大・基礎工)は21世紀の獣医学の発展のため,獣医学領域における生物工学の研究体制の早期確立を強調した.以上の成果を総合し, その詳細を昭和62年度科学研究費総合研究(B)成果報告書(様式1, 冊子)に紹介すべく準備中である.
著者
伊沢 久夫 根路銘 国昭 児玉 道 見上 彪 藤原 公策 久保 周一郎 KODAMA Michi
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

ボツリヌス中毒:動物のボツリヌス中毒の原因毒素であるボツリヌス菌【C_1】型およびD型毒素、その重鎖および軽鎖を精製して單クローン性抗体(以下MAb)を作出し、本邦で保存する菌株の全ての毒素と反応させ、毒素が4つのグループに別れることを明らかにした。マウス肝炎:1株のマウス肝炎ウイルスに対するMAbを作出し、1部MAbはウイルスポリマーと、残るMAbはウイルス核酸と特異性を示すこと、また両MAbは他のマウス肝炎ウイルス株とも反応することを見い出した。マレック病:本病による腫瘍に由来する株化細胞の表面抗原に対するMAbを作出した。MAbは野外発病鶏の腫瘍細胞とも野外飼育鶏の末梢血細胞とも大差なく反応し、陽性例にあっても腫瘍また末梢血細胞を問わず陽性細胞の出現率は低率であることが分った。豚コレラ(以下HC):ブタ白血病由来腫瘍細胞とHC免疫豚の系、また精製HCウイルス免疫マウス脾細胞とP3U1細胞の系では融合は不成功に終ったが、HC感染豚腎細胞免疫マウスの脾細胞を供試し抗体産生細胞を最近樹立した。インフルエンザとパラミクソウイルス感染症:インフルエンザウイルスのHAとNAに対するMAbを用い、本ウイルスの抗原変異と組換え体の起源を、またパラミクソウイルスのMAbを供試して本ウイルスのエピトームの安定性と抗原変異を明らかにした。ウシ白血病:作出した地方病性ウシ白血病腫瘍関連抗原のMAbは、野外発病牛の腫瘍細胞全例と反応し、本病の生前診断や予知に使用しうる可能性を示唆した。伝染性膵臓壊死症:作出した抗体産生細胞はいずれも継代不能あるいは微生物によるコンタミネーションのために維持しえず、研究は不成功に終った。