著者
広瀬 正浩
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.80-93, 2017-11-15 (Released:2018-11-15)

小説の読者は文字を目で追いながら、想像上の音声的な発信主体「語り手」の存在を感じ、それが語る幻の声を聴き取る。このとき読者は、想像上の存在である語り手に向き合う、「聴き手」の身体を獲得する。だが、この聴き手としての経験とはどのようなものなのか。この問題を考える手掛かりとして、シチュエーションCDという現実的な音声の表現に注目する。シチュエーションCDは一人称小説と類比的な関係にある。本稿では、この二つの表現の受容者がそれぞれどんな発声主体と向き合い、どんな身体を獲得するのかを検証する。そして、この聴き手についての考察が、虚構世界に没入する者の経験を問う上で重要であることを確認する。
著者
広瀬 正浩
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.80-93, 2017

<p>小説の読者は文字を目で追いながら、想像上の音声的な発信主体「語り手」の存在を感じ、それが語る幻の声を聴き取る。このとき読者は、想像上の存在である語り手に向き合う、「聴き手」の身体を獲得する。だが、この聴き手としての経験とはどのようなものなのか。この問題を考える手掛かりとして、シチュエーションCDという現実的な音声の表現に注目する。シチュエーションCDは一人称小説と類比的な関係にある。本稿では、この二つの表現の受容者がそれぞれどんな発声主体と向き合い、どんな身体を獲得するのかを検証する。そして、この聴き手についての考察が、虚構世界に没入する者の経験を問う上で重要であることを確認する。</p>
著者
広瀬 正浩
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.56-65, 2008-11-10 (Released:2017-08-01)

一九八〇年代に柄谷行人が掲げた「交通」という概念を音楽的実践の契機と捉えた坂本龍一は、アルバム『NEO GEO』(一九八七年)のコンセプトとして、地球上の様々な音楽や文化的生産物が互いに等価であるような多元的な世界像を構想した。だがそれは、資本主義に依拠した世界市場を支え、商品の供給源として旧植民地アジアを再属領化することであった。「交通」は、戦争を容認し、植民地主義的な思考を導くという暴力的な側面を持っていたのである。