著者
森脇 優紀 床井 啓太郎 安形 麻理 福田 名津子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、明治期日本の洋式帳簿製本と、明治期に製本技術を習得した技術者による1950年代の修復痕が残る西洋稀覯書の現物調査を中心に、聞き取り調査による情報収集や記録資料の解析も並行して行い、製本の歴史的変遷を再検討した。その結果、帳簿製本については、技術導入以降、需要が高まり民間での製造が急増したことで、西洋由来の技術は試行錯誤が繰り返されて変容し、現在の日本特有の形に至ったことが分かった。稀覯書の修復痕調査からは、明治の導入期以来の技術や知識が基本的な部分で継承されていることが確認できた。資料保存の面では、現在の「原形保存」の淵源となる考え方が既に1950年代に存在していたことが分かった。
著者
床井 啓太郎
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.36-43, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)

一橋大学社会科学古典資料センターは,西洋古典資料の専門研究図書館として,20年以上にわたって約8万冊におよぶ貴重書の保存対策を進めてきた。本稿では,センターで組織的な保存対策を始めるに至った経緯のほか,付設の保存修復工房で行っている資料の状態調査と保存処置,書庫の保存環境整備について紹介する。また,西洋古典資料の保存を担う中核的な人材の育成を目指す実務研修などの新たな取り組みについても触れ,センターにおける保存事業の今後の方向性を示す。