著者
廣松 勲
出版者
富山大学ヘルン(小泉八雲)研究会
雑誌
ヘルン研究 (ISSN:24328383)
巻号頁・発行日
no.2, pp.31-35, 2017-03

複数の言語文化を横断したラフカディオ・ハーンの生涯において、マルティニック島での生活は比較的短い期間であった(1887年から1889年)。とはいえ、旧首都であるサン・ピエールに滞在したハーンは、ルイジアナや日本でのように民話や諺等の聞き書きを続けながら、当該地域の19世紀末の言語・文化・社会に関する貴重な資料を残した人物として知られている。本発表では、このようなマルティニックの社会文化的背景を確認した上で、この時代のハーンが残した作品群について簡単に紹介を行った。次に、当該地域におけるハーン受容の一つの事例として、ハーンのマルティニック滞在に関する作品を発表した作家・民族学者イナ・セゼール(Ina Césaire)の小説『私はシリリア、ラフカディオ・ハーンの女家庭教師:1888年、マルティニック島サン・ピエールにおける言葉のやり取り』について、内容と形式の両面から分析を行った。
著者
廣松 勲
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度は、マルティニック島の作家ラファエル・コンフィアンとハイチ系ケベック移民作家ダニー・ラフェリエールの小説作品を中心にして、研究活動を続けた。同時に、分析上の方法論の精緻化を目的として、トランスカルチャーという鍵概念および社会批評分析(Sociocritique)関連の書籍を収集・分析してきた。まず、昨年度の研究対象であったパトリック・シャモワゾーとエミール・オリヴィエに関する研究は、論文や研究発表として公表した。「社会批評分析」という方法論については、受け入れ研究者である堀茂樹先生のゼミが制作した論文集に、研究論文として投稿した。本論文「文学研究における社会」では、文学研究において「社会的なるもの」がいかに読まれてきたのかを検討することで、「社会批評分析」の系譜を辿った。この方法論の再検討は、トランスカルチャーが文体・テーマ・思想を介していかにテクストに書き込まれているのをより説得的に分析するために、非常に重要なものであった。次に、本年度の研究対象であるコンフィアンとラフェリエールに関しては、新刊が5冊程度刊行されたこともあり、それらを収集した上で、研究対象となる作品の選定を改めて行うことになった。いずれも多作の作家であり、新作刊行も予想してはいたものの、この再選定の作業には、予定以上の時間を要してしまった。とはいえ、本年度の研究結果は、今後、以下の2つの学会において公表する予定である。まず、ラフェリエールに関しては、彼を含めたケベック移民作家に関する口頭発表を、2014年5月25日にお茶の水女子大学にて開催予定の「日本フランス語フランス文学会全国大会」において行う予定である。今回の発表は、「カナダ文学の現在 : ケベックを中心に」と題されたワークショップの一環である。次に、コンフィアンに関しては、2014年11月1日に韓国の高麗大学において開催予定の「Association d'études de la culture et des arts en France (CFAF)」において発表を行う予定である。