著者
廣瀬 俊介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.139, 2023 (Released:2023-09-28)

造園学は、近代の市民社会における公共空間の創出を契機として創始された。公共空間は、民主主義や社会的に公正な資源配分からもたらされるが、造園学における史的研究の対象となる庭園には、各時代に権力と富を集中的に得た者たちが所有していたり、植民地で教化空間として用いられたりした例が含まれる。そして、造園学領域における既往の研究では、一部を除いて庭園の所有者と非所有者の間の非対称性を批判的に検討した例があまり見られない。ことに、わが国では前近代性を残存させた社会階級構造が成立し、富と権力の集中の結果でもある庭園の評価に基づく景観の価値形成が、社会階級構造の維持ひいては文化的再生産に結びつくことが懸念される。このような問題意識を持って、本研究は、造園学の研究と実践において庭園がどう扱われてきたかに着目し、そのことによる歴史認識が景観の価値形成とどう結びつき、そこにどのような問題が含まれるかについて考察するものである。
著者
廣瀬 俊介
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.15-21, 2016 (Released:2017-08-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2

人間が生き続けるためには持続社会を構築する必要がある.生態学的土地・資源管理は,持続社会構築の基礎条件として求められる.人間の関与を含めて生態系を総合的に研究する景観生態学は,動態である環境の確かな理解に向き,持続社会構築のために社会的装置を整備・運用・維持管理・更新することに応用できる.風土は,厳密には当地の生活者らに共有される「生活世界」観と見なせる.したがって,風土を考察する上では人文科学的研究が必要となり,そのことは主に自然科学を基盤に社会科学的検討を加えてきた景観生態学の総合環境科学的可能性を引き出す上で,重要な意義を持つと考えられる.本論では,景観生態学に風土研究を組み入れるための検討と,その先に行い得る持続社会の一部装置の実装としての生活環境のデザイン,ひいては風土形成のこれからへの関与に関して論考を試みる.
著者
廣瀬 俊介
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.23-28, 2016 (Released:2017-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1