著者
猪口 達也 後藤 大二郎 和田 一郎
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.229-242, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
12

本研究では, 主体的な学習を高める鍵となり得るメタ認知概念について, 社会性を加味した概念へと拡張し, それらの機能によって理科における資質・能力の育成に関わる問題解決活動の充実を図ることを目指した。具体的には, メタ認知概念の拡張に関して, Chiu & Kuo(2009)が提起した「社会的メタ認知(social metacognition)」の機能によってもたらされる5つの利益を援用し, 理科学習における問題解決活動の質の向上に関わる利益として捉え直した。その上で, それらの機能が問題解決活動にもたらす利益と併せて促進すると考えられる, 個人内メタ認知の活性化と科学概念構築の成立過程について, 小学校理科を事例に検討した。事例的分析の結果から, 社会的メタ認知の機能によってもたらされる5つの利益から, 問題解決活動の質の向上を捉えることが可能になった。さらに, 社会的メタ認知を通じた個人内メタ認知の機能の活性化が, 科学概念構築に寄与することが明らかになった。
著者
猪口 達也 後藤 大二郎 和田 一郎
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.3-13, 2019-07-31 (Released:2019-08-29)
参考文献数
11

本研究では,社会的文脈を考慮した科学概念構築に関わるメタ認知概念と,応答的教授(responsive teaching)との関連について検討した。具体的には,猪口・後藤・和田(2018)が指摘する,理科学習における社会的文脈を考慮した,個人内および社会的メタ認知の機能とその相互作用に着目した。加えて,Wood(2018)が提起する「応答的教授」を援用して,2つのメタ認知機能よって生起する動的な学習過程をアセスメントする視点と,それに呼応した教授としてのフィードバック機能を具体的に構想した。その上で,応答的教授と個人内および社会的メタ認知の機能の連関過程について,小学校理科を事例に検討した。結果として,応答的教授は,個人内および社会的メタ認知の機能を促進し,その連関過程を通じて,電磁石に関わる科学概念が構築されることが明らかとなった。それと連動して,根拠に基づき,より妥当な考えへと矛盾点を解消し,自己や教室全体の認知の再調整を繰り返す様態を捉えることが可能となった。
著者
後藤 大二郎 和田 一郎
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.367-377, 2019

<p>本研究では,対話的な学びの在り方として,子どもが協働的により妥当な考えを構築し,それを学級の文化として定着させ,自らのものとして活用していく様態を明らかにすることを目的とした。Stahl(2000)の協働的知識構築モデルを小学校理科授業に援用し,理科授業を計画・実践した。Stahlの「協働的知識構築(Collaborative Knowledge-Building)」のモデルは,個人の理解と協働的知識構築の2つの分別可能な段階からなる循環的な過程である。このモデルは,それぞれの場面と活動を11のフェーズに分けて示している。実践した授業は,小学校第3学年「かげと太陽」の単元である。このモデルを援用した授業を分析した結果,子どもが協働的知識構築を行い,学級としての「文化的人工物(cultural artifacts)」を生成し,さらにそれを活用して「文化的人工物」を更新していた。また,授業者の支援により各フェーズの移行を促したり,個人の理解と協働的知識構築の過程を往復したりしながら,協働的知識構築モデルが成立していることが明らかになった。 </p>