著者
田中 宏樹 後藤 由美 隈川 公昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AbPI1022, 2011

【目的】<BR> 立ち上がりは、目的動作や行為の一部として生活・活動範囲の拡大に関与する。股関節内転筋群は、骨盤の安定化やブリッジ機能といった作用が報告されており、体幹の安定性獲得に重要であり、立ち上がりにおいても重要な役割を果たすと考えられる。しかし、立ち上がりにおける股関節内転筋群の関与についての報告は少ない。そこで今回健常者を対象に、股関節内転筋群を作用させた立ち上がり時の骨盤や股関節への影響を明確にすることを目的とした。<BR>【方法】<BR> 現在整形外科的疾患・神経学的疾患を有さない、健常成人15名(年齢27.3±4.7歳、身長169.1±3.5cm、体重60.5±7.7kg)を対象とした。立ち上がりは、安楽坐位姿勢(以下normal)、股関節内旋位(internal rotation:以下internal)、Ballを挟んでの立ち上がり(adduction:以下add)の3種類で検討した。スタート肢位は、両上肢を体幹前面で組み、座面は大腿部が床面と水平な位置とし、膝関節90°、足底が全面接地可能な範囲とした。被験者の肩峰、上後腸骨棘、大転子、膝関節外側関節裂隙にマーカーを貼付し、各立ち上がりをビデオカメラにて撮影した。撮影した動画から1秒間に30フレームの連続した静止画を作成し、Image Jを使用して、肩峰-上後腸骨棘-大転子のなす角(以下 骨盤前傾角)と、上後腸骨棘-大転子-膝関節外側裂隙のなす角(以下 股関節屈曲角)を測定した。3種類の立ち上がりの骨盤前傾角・股関節屈曲角を反復測定一元配置分散分析で検討し、有意差を認めた場合には多重比較検定(Bonferroni)を用いて検定を行った。なお有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> すべての対象者には、本研究の主旨を口頭にて説明し参加同意の得られた者を対象とした。<BR>【結果】<BR> スタート肢位での骨盤前傾角は、normal 93.1±12.6°と比較し、internal 85.7±11.2°,add 87.3±10.4°では有意に低値を示した(P<0.01)。しかしinternal、add間においては骨盤前傾角に有意差を認めなかった。股関節屈曲角度においては3群間normal 162.3±12.6°,internal 177.6±51.4°,add 178.0±51.5°で有意差は認めなかった。<BR> 立ち上がり時の最大骨盤前傾角は、normal 73.7±12.0°と比較しinternal 67.5±11.5°,add 69.4± 12.3°では有意に低値を示した(P<0.01)が、internalとadd間では、有意差は認めなかった。最大股関節屈曲角においてはinternal 142.7±13.1°と比較しnormal 136.7±14.4°で有意に低値を示し(P<0.01)、またinternalとadd 139.5±12.5°間においても、addの方が有意に低値を示した(P<0.05)。しかしnormalとadd間においては股関節屈曲角に差を認めなかった。<BR>【考察】<BR> 今回測定を行った骨盤前傾角・股関節屈曲角は、角度が低値を示すほど、骨盤前傾及び股関節屈曲は大きくなる。今回の結果から、立ち上がり時のスタート肢位の骨盤前傾及び、最大骨盤前傾はともにinternal,addで骨盤前傾が大きかった。最大股関節屈曲では、normalとaddで大きくなった。<BR> 股関節内旋は、運動連鎖的に骨盤を前傾させる作用が報告されており、internalでのスタート肢位では、normalよりも骨盤前傾が大きくなったと思われる。また最大骨盤前傾角においても、股関節内旋による運動連鎖で骨盤前傾が大きくなったと考えられる。一方、最大股関節屈曲に関しては、股関節内旋位が股関節のclosed-packed-positionの1つに相当するため、股関節がしまりの肢位となり、股関節屈曲が制限され、normalよりも最大股関節屈曲が小さくなったと考えられる。<BR> 股関節内転筋群の開放運動連鎖は股関節内旋にも作用すると述べられている。したがって、スタート肢位でBallを挟んだ際は股関節内転筋群が活動することで、股関節が内旋し、運動連鎖的に骨盤を前傾させたものと考えられる。また最大骨盤前傾角においてもBallを挟み続けることで、運動連鎖が維持され、骨盤前傾がnormalよりも大きくなったと考えられる。最大股関節屈曲角においてはinternalよりaddの方が大きくなったが、立ち上がりでの股関節内転筋群の関与として、動作開始から離殿前までは股関節屈曲を補助すると述べられている。このことから、股関節内転筋群を収縮させることで股関節の補助的な屈曲に作用し、最大股関節屈曲に差が認められたと考えられる。<BR> 以上のことからinternalでの立ち上がりでは、骨盤前傾は増加するが股関節屈曲は制限されることが示された。またaddでの立ち上がりは、normalと同程度の股関節屈曲を維持し、骨盤を前傾させて立ち上がりを行うことが可能であることが示された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 今回のaddでの立ち上がりは、変形性膝関節症患者で見られる骨盤後傾で立ち上がりを行う症例に対して臨床的に応用できると考える。
著者
臼井 キミカ 上西 洋子 辻下 守弘 佐瀬 美恵子 白井 みどり 佐々木 八千代 兼田 美代 津村 智恵子 後藤 由美子 山本 美輪 山本 裕子 川井 太加子 鷹居 樹八子 柴田 幸子 杉山 百代 中村 里江 北沢 啓子 南部 純子 浅田 さゆり 才木 千恵 正田 美紀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究目的は、重度認知症高齢者の基本的な生活支援技術を明らかにして、その研修プログラムを開発し、重度認知症高齢者のQOLの向上を図ることであり、目的達成のために重度認知症高齢者を対象とした2カ月間の小集団回想法、6カ月間の手織りプログラム、5週間の生活支援技術に関する介入、及び国内外の看護職等への面接調査を通じて重度認知症高齢者への日常生活支援技術研修プログラムを作成し、複数回の研修を実施しそのプログラムが有効であることを評価した。