著者
後藤 純信 萩原 綱一 池田 拓郎 飛松 省三
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.8-18, 2012-02-01 (Released:2014-08-20)
参考文献数
24
被引用文献数
4

視覚誘発電位 (VEP) は, 誘発脳波計で容易に記録でき, 視覚路の情報処理機能をms単位 (高時間分解能) で評価できる。しかし, 異なる伝導率を有する容積導体を通して頭皮上から記録するため, 後頭葉の軽微な機能変化や機能の左右差を検出するには難がある。一方, 視覚誘発脳磁場 (VEF) は, 生体内の透磁率がほぼ等しく磁場のひずみが生じないため, 時間分解能のみならず空間分解能 (mm) にも優れ, 視覚野の一側性機能異常や軽微な左右の機能差などを鋭敏に検出できる。しかし, 微弱な磁場反応であるため磁気ノイズの混入やそれを遮蔽するための環境整備が必要不可欠である。刺激を工夫して視覚路の機能局在や機能障害の有無を検討するためには, VEPとVEFの長所と短所を知ることが必要である。本稿では, 両者を理解する上で必要な電場と磁場の基礎知識や視覚の生理学に基づく基本的記録法と解析法を解説する。さらに, これらの手法を基にした我々の臨床研究成果の一端を紹介する。
著者
岡 真一郎 池田 拓郎 吉田 誠也 近藤 遥奈 筒井 友美 田中 晴菜 後藤 和彦 光武 翼 後藤 純信
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-43, 2019-03-25 (Released:2019-04-23)
参考文献数
20

バーチャルリアリティ(VR)を用いたニューロリハビリテーションの基盤研究として,2つの実験を行った.実験1では,右頭頂葉と視運動性眼振(OKN)および立位姿勢制御の関連機構について検討した.右頭頂葉の一過性機能抑制には,経頭蓋直流電流刺激の陰極刺激を使用し,OKNと身体動揺を計測した.その結果,右頭頂葉の感覚情報処理は視運動性眼振および開眼時立位姿勢制御と関連していることが示された.実験2として,完全没入型のスマートフォン用ヘッドマウントディスプレイ(S-HMD)を使用し,視運動刺激(OKS)がバランス能力に与える影響について検討した.その結果,OKS後は静止立位および左右片脚立位の開閉眼条件での姿勢制御機能が向上した.運動先行型の脳機能を賦活するニューロリハビリテーションは,リハビリテーションの効果を高める可能性を有することが示された.民生用HMDは,VRによるニューロリハビリテーションを臨床現場へ広く普及させるためのデバイスとしてのポテンシャルを秘めている.今後,HMDを用いたニューロリハビリテーションの推進を期待する.
著者
池田 拓郎 佐々木 聖馬 岡 真一郎 後藤 純信
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.215-219, 2013-04-20
参考文献数
21

〔目的〕本研究では,巧緻運動(DM)と粗大運動(GM)における運動イメージの脳内活動の相違を検討した.〔対象〕健常若年成人10名(平均年齢21.3±1.1歳,男性10名).〔方法〕DMとGMを運動イメージ,自己ペースと外的ペース随意運動で行わせ,課題中の脳血流変化をNIRSで計測した.〔結果〕DMイメージ時は,自己ペースおよび外的ペース随意運動時と比べ全ての関心領域で有意なoxy-Hbの変化はなく,また,GMイメージ時と比べ左運動前野領域と左一次感覚運動野領域で有意なoxy-Hbの増加があった.〔結語〕手指に関与する神経細胞は,肩の神経細胞と比べて高密度に存在していることから,DMによる運動イメージは,GMによる運動イメージよりも脳血流が増加したのではないのかと示唆された.<br>
著者
後藤 純信 飛松 省三 坂本 泰二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、網膜変性による網膜機能障害を網膜全般の現象と捉え、網膜変性疾思の病態を明らかにするために、網膜色素変性症(RP)モデルのrdcラットやrdsマウス、錐体一杵体ジストロフィ症(CRD)モデルのCMYCマウスを用いて、1)杵体・錐体系細胞や網膜内層の経時的機能変化を網膜電図(ERG)で定量解析、2)光受容体細胞や網膜内層の経時的組織変化を細胞のアポトーシスを指標に解析、3)遮光や遺伝子導入による網膜残存機能の温存効果をERGと組織学的変化で検討した。本研究結果として、1)CMYCマウスの錐体細胞系ON型、OFF型双極細胞の機能が1ヶ月まで正常に近いが、6ヶ月では反応が消失、2)網膜内層の機能変化が早期より起こる、3)3ヶ月間の暗所飼育により網膜機能が通常飼育より保たれる、4)rcsラット網膜に、ウィルスベクターでFGFやその他の神経成長因子の遺伝子を導入したところ、長期間の機能温存を認める(Ikeda et al.,2003;Miyazaki et al.,2003)、5)暗所飼育CMYCマウスではベクター導入効果は明らかでなかった。以上より、杵体細胞や錐体細胞の機能変化は、網膜の外層と内層で多少の時間的ずれがあるものの、組織学的変性に準じて起こった。また、CMYCマウスやrcsラットの暗所飼育による網膜細胞変性の遅延(抑制)効果は明らかであったが、ベクターによる遺伝子導入効果は、種間で差があった。遺伝子導入は、現在眼科と共同研究を行なっており、手技等の改善により新しい治療法として近い将来確立できると思われる。本研究を通して、今までその詳しい病態や治療法のなかった網膜変性症に対し、初期からのサングラス等による光からの防御や遺伝子治療の可能性を提言できたことは、将来の網膜変性症治療への応用に向けて有意義な結果であったと考える。