著者
後藤 裕司 玉井 光成 鈴木 徳彦 池田 哲也
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.103-110, 2012

本研究は、放牧地における肉用牛の腟内に留置した腟内温度計を用いて、腟内温度測定による発情発見方法について調査し、乗駕行動の観察および万歩計システムによる発情発見方法との比較を行い、その実用性を検証した。黒毛和種経産牛4頭の腟内に腟内温度計を留置し、牛温恵システム(REMOTE社)を用いて5分毎に腟内温度を計測した。3ヵ月間の計測結果よりデータが1時間内に1度も得られることなく、受信エラーが発生した時間数は、合計88時間(1.06時間/日)であった。試験期間中に16回の発情を確認し、腟内温度は発情前日には低く、発情日に高くなり発情周期中で変化した。発情の検出は、基準日数、上昇温度、継続時間の各条件に基づき、腟内温度の全データをシミュレーションした。その結果から発情発見率、正確率、発情発見精度を求めて、最適条件と発情検出能力について評価した。発情発見の最適基準は、基準日数3日、上昇温度0.4℃、継続時間4時間の条件であった。また、3種類の発情発見方法(膣内温度、乗駕行動、万歩計システム)を比較した結果、発情発見率に差は見られなかったが、発情発見の正確率は、腟内温度および乗駕行動が万歩計システムより有意に高くなった。以上の結果より、腟内温度計を用いて膣内温度を計測することで放牧牛の発情発見がより正確に実施できることが示された。
著者
小西 一之 堂地 修 岡田 真人 宮沢 彰 橋谷田 豊 後藤 裕司 小林 修司 今井 敬
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1075-1084, 1997-11-25
参考文献数
26
被引用文献数
4

持続性黄体ホルモン製剤であるCIDR-B(以下CIDR)を用いて発情周期を制御したウシのFSHによる過剰排卵処理について,Estradiol-17&beta; Valerate (EV)を投与したときの効果を黒毛和種未経産牛を用いて調べるとともに,短期間に実施した連続過剰排卵処理の影響を調べた.黒毛秘種未経産牛16頭を試験牛とし,無作為にEV投与区とEV非投与区(対照区)に分けた.試験牛には発情周期にかかわらずCIDRを膣内に装着し,その翌日にEV投与区にはゴマ油2mlに溶解したEV 5mgを,対照区にはゴマ油2mlを頸部筋肉内に注射した.これらの投与後5日目から過剰排卵処理を開始した.FSH計20AUを3日間の漸減法により筋肉内注射し,FSH投与開始後3日目にCIDRを除去するとともにクロプロステノール750&mu;gを筋肉内注射することにより発情を誘起した.人工授精を約12時間間隔で20行い,発情開始後7日目に非外科的に胚の回収を行った.以上の処理を1クールとし,EV投与区と対照区を交互に反転しながら4クール行った.採胚間隔は28日とした.なお,第3および第4クールは16頭のうち12頭で行った.第1および第2クールでは超音波断層装置によりCIDRの装着から除去まで1日おきに卵巣の動態を観察した.第4クールまでの12頭の過剰排卵処理成績について,EV投与と処理回数の2元配置により分散分析を待った.EV投与により回収卵数は有意に増加した(P<0.05).処理回数の影響はま黄体数でのみ有意であった(P<0.05).また,第1と第2クール分,第2と第3クール分,第3と第4クール分の連続する2クール分の成績をまとめた結果,いずれの場合も対照区の回収卵数が10あるいは8個未満のウシでは,反転させたEV投与区では採胚成績は有意に改善された.しかし,対照区の回収卵数が10あるいは8個以上のウシでは反転させたEV投与区での成績は対照区と差は認められなかった.第1および第2クールの卵巣の追跡では,過剰排卵処理開始時において,対照区に比べ,反転させたEV投与区の大卵胞(径82nm以上)数は有意に少なかった.以上より,CIDRを用いた過剰排卵処理ではEVを併用投与することにより,卵巣中の大卵胞数が抑制されるとともに,過剰排卵処理成績が改善されることが示唆された.