著者
天野 絵里子 岡野 恵子 稲石 奈津子 今井 敬吾
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-91, 2015-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
2
被引用文献数
1

京都大学では,2011年度より研究推進に携わる専門職としてリサーチ・アドミニストレーター(University Research Administrator: URA)を任用し,学術研究支援室と8つの部局URA室,2つのユニット付きURAからなるURAネットワークを構築してきた。URAによる主要な研究推進業務の1つとして研究資金獲得支援があげられる。本稿では,URAネットワークで実施している科研費申請支援,人文・社会科学系(人社系)研究者のための支援,ICTを活用した情報の集約と分析について紹介する。また,支援業務の中で浮かび上がってきた,学内でのナレッジの共有,よりプロアクティブな支援の必要性,人社系研究支援の検討などの課題について述べる。
著者
今井 敬吾 結縁祥治 阿草 清滋
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.47, no.16, pp.10-28, 2006-10-15
参考文献数
17

我々はプログラミング言語Haskellへ,型付き非同期局所化pi計算(typed Asynchronous Localized $\pi$-calculus; ALpi)を,ネットワークプログラミングのためのフレームワークとして埋め込む手法を提案する.本フレームワークは埋め込み言語として実装されることで以下の利点を持つ:(1) Haskellで構築されているため処理系が頑健である,(2) Haskellのリテラル,型や関数といった言語要素をフレームワークに組み込むことができる.さらに,ALpiのmobilityに対する制限はフレームワークの実装を簡単にする.本フレームワークでは,ALpiのプロセスはPiMonadと呼ばれるHaskellのモナドとして実装する.結果として,通信により引き起こされる副作用は型のPiMonadタグで区別される.ALpiのサブタイプ関係はHaskellの多引数型クラスで実現する.サブタイプ関係にある型の対は通信の方向を反映した3つの2引数型クラスに属する.本フレームワークを用いた例としてTCP/IPネットワーク上のインスタント・メッセンジャアプリケーションの構築例を示し,有用性と利点を述べる.We propose an embedding of the typed Asynchronous Localized pi-calculus (ALpi) into the programming language Haskell as a framework for network programming. The framework has following advantages due to the embedded language nature: (1) the framework is robust due to being built upon the Haskell framework, and (2) the framework can incorporate various Haskell language elements, such as literals, types, and functions, in the framework. Moreover, the limitation of mobility in ALpi simplifies the implementation of the framework. ALpi processes are implemented by means of a Haskell monad called PiMonad. As the result, side-effects caused by communications are distinguished by the tags of PiMonad in typing. The subtyping relations is realized by multi-parameter type classes in Haskell, where a pair of subtype-related types belongs to three binary type classes reflecting the directions of communication. We illustrate the usefulness and benefits of our framework with an example of an implementation of instance messenger application over TCP/IP network.
著者
横山 哲郎 今井 敬吾 曾 剛 冨山 宏之 高田 広章 結縁 祥治
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.54-69, 2009-03-23

動的電圧制御 (DVS: dynamic voltage scaling) は,プロセッサへの供給電圧とその動作周波数をプログラム実行時に変化させる技術であり,現在,多くの商用プロセッサに実装されている.本稿では,デッドラインなどの制約のあるリアルタイムシステムを対象に,DVS システムにおいて動的エネルギー消費のより少ないプログラムを開発する方法論の 1 つを提示する.DVS システムで実行されるプログラムに動的エネルギー消費の最適化が有効であるためには,残り予測実行時間の実行早期の正確な見積りを容易にすることが重要である.そのため,プログラムは何を計算するかに加えどう計算するかをうまく指定する必要がある.しかし,プログラム改変によるエネルギー消費の最適化はプログラムのモジュール性を著しく損なう.本稿では,プログラムから独立し,エネルギー消費の最適化戦略を開発する手法を提案する.提案手法により,エネルギー消費の最適化を行うときに元のプログラムの部分正当性が容易に保存され,元のプログラムおよびエネルギー消費の最適化を行うための評価戦略が独立してそれぞれモジュール性を有するようになった.遅延評価などのプログラミング言語の特徴や構成的アルゴリズム論における組化などを活用することにより半自動化が実現できたことが,本開発法の特徴の 1 つである.本稿では,整列,選択,文字列検索などの基本的なアルゴリズムに提案手法を適用する.また,電力モデルを備えた命令セットシミュレータ(ISS: instruction set simulator)において実験を行い,エネルギー消費がどれだけ最適化されたかを評価する.基本的なアルゴリズムにおいて,本稿のアプローチが有効であることから,複雑なアルゴリズムに対しても本手法が効果的であることが期待される.DVS (dynamic voltage scaling) is a technique for scaling the processor's supply voltages and working frequencies. Several commercially available processors provide voltage/frequency controls. We propose a development method for deriving dynamically energy efficient programs on DVS-enabled real-time systems, which have several constraints such as deadline. In order to improve energy efficiency of programs on DVS systems, it is necessary to accurately estimate remaining predicted execution time in the early phase of the execution of programs. Thus, how to execute codes is as important as what codes to execute. However, the revision of programs for energy efficiency seriously harms their modularity. We separate concerns of the development of energy optimization strategy from the development of programs. As the result, partial correctness of original programs is preserved, and each of original programs and energy optimization strategy has modularity, independently. Lazy evaluation of functional programming languages and tupling in constructive algorithmics are employed for realizing the semi-automation of our development method. Our techniques are applied to basic algorithms such as sorting, selection, and string matching. Their energy efficiency is evaluated by using an instruction set simulator (ISS) with a power model.
著者
小西 一之 堂地 修 岡田 真人 宮沢 彰 橋谷田 豊 後藤 裕司 小林 修司 今井 敬
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1075-1084, 1997-11-25
参考文献数
26
被引用文献数
4

持続性黄体ホルモン製剤であるCIDR-B(以下CIDR)を用いて発情周期を制御したウシのFSHによる過剰排卵処理について,Estradiol-17&beta; Valerate (EV)を投与したときの効果を黒毛和種未経産牛を用いて調べるとともに,短期間に実施した連続過剰排卵処理の影響を調べた.黒毛秘種未経産牛16頭を試験牛とし,無作為にEV投与区とEV非投与区(対照区)に分けた.試験牛には発情周期にかかわらずCIDRを膣内に装着し,その翌日にEV投与区にはゴマ油2mlに溶解したEV 5mgを,対照区にはゴマ油2mlを頸部筋肉内に注射した.これらの投与後5日目から過剰排卵処理を開始した.FSH計20AUを3日間の漸減法により筋肉内注射し,FSH投与開始後3日目にCIDRを除去するとともにクロプロステノール750&mu;gを筋肉内注射することにより発情を誘起した.人工授精を約12時間間隔で20行い,発情開始後7日目に非外科的に胚の回収を行った.以上の処理を1クールとし,EV投与区と対照区を交互に反転しながら4クール行った.採胚間隔は28日とした.なお,第3および第4クールは16頭のうち12頭で行った.第1および第2クールでは超音波断層装置によりCIDRの装着から除去まで1日おきに卵巣の動態を観察した.第4クールまでの12頭の過剰排卵処理成績について,EV投与と処理回数の2元配置により分散分析を待った.EV投与により回収卵数は有意に増加した(P<0.05).処理回数の影響はま黄体数でのみ有意であった(P<0.05).また,第1と第2クール分,第2と第3クール分,第3と第4クール分の連続する2クール分の成績をまとめた結果,いずれの場合も対照区の回収卵数が10あるいは8個未満のウシでは,反転させたEV投与区では採胚成績は有意に改善された.しかし,対照区の回収卵数が10あるいは8個以上のウシでは反転させたEV投与区での成績は対照区と差は認められなかった.第1および第2クールの卵巣の追跡では,過剰排卵処理開始時において,対照区に比べ,反転させたEV投与区の大卵胞(径82nm以上)数は有意に少なかった.以上より,CIDRを用いた過剰排卵処理ではEVを併用投与することにより,卵巣中の大卵胞数が抑制されるとともに,過剰排卵処理成績が改善されることが示唆された.
著者
今井 敬子
出版者
日本・美術による学び学会
雑誌
美術による学び (ISSN:24356573)
巻号頁・発行日
vol.2, no.7, pp.202107, 2021 (Released:2021-05-11)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止策のため、世界各国の地域において人々は自宅待機し、博物館・美術館は相次いで休館している。このような状況下で、閉館中の美術館はどのような役割を担えるのだろうか?国内外の美術館におけるHP 上での活動について紹介する。 (※原稿内容は、2020 年4 月初旬から19 日のまでの間に収集した情報を元にしている。)
著者
今井 敬子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.3-11, 2007-04-30 (Released:2017-03-24)

『日本占領下のマラヤ1941-1945』を翻訳出版した筆者が、原著作におけるアーカイブズの利用について紹介する。統計類により、戦争前、英領マラヤは繁栄していたが、日本占領下、経済が崩壊したこと、国民は食糧不足に苦しんだことを立証。また、現地事務所の議事録・書簡類からは、統治者、被統治者が実際に事態にどのように対処していたかを窺い知ることができた。
著者
今井 敬子 岩田 礼
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、将来的な中国語デイスコース論の構築のために、基礎的な作業と理論的な検討を進めることを目的にスタートした。デイスコース("談話"とも称される)という観点からの言語研究は、文レベルの文法研究(統語論)の形式主義、抽象主義による限界を見極めた上で近年盛んになった研究分野であり、言語主体のありかた(思考、主観)、言語環境(文脈)、言語使用の背景(文化・社会)などへも目を向けて言語を捉えようとする立場である。中国語でも近年、デイスコース研究への関心が増しているが、本格的な研究はこれからといった段階である。当該期間中に行われた本研究の実際とその成果は以下のようにまとめることができる。本研究ではデイスコースを、表現内容の上でまとまりをもつ複数の文の集合体と捉え、その使用実態と機能を観察した。実際の発話からデータ(音声データおよびそれを文字化したデータ)を収集し分析するという実証的な方法をとった。まず、デイスコースというまとまりを成立させる代表的な手段として、連接語について観察した結果、ごく限られた連接語(因果、逆接など)の目立った多用があり、さらに因果関係を表す連接語の調査を進め、作用域の広さ、多重的な因果関係、表現類型の選択使用と話題の展開のしかたとの関わりを分析、さらには、本来の意味(因果関係の表示)を失い、発話を単に繋いだり終結させたりする機能が見られた。このように実際のデータの中での連接語は、談話の継続、展開、終結などに密接に関与していることから、デイスコース標識として再認識されるべきであろう。本研究ではまた、シナリオのせりふにおける人称代名詞の使用実態を調査し、登場人物間のコミュニケーションのありかたと人称代名詞の選択使用の相互関係を明らかにした。また、声調という音声的特性について、そのピッチの変動を、個別言語、発話主体という両者の面から観察・分析した。なお、残された課題も多い。特に、デイスコースと「視点」の関係性、主題展開の方式につての研究が成果を出せぬまま現在に至ったことが残念である。今後は、これらのテーマについて研究を継続していく計画である。