著者
得平 道英 木崎 昌弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.932-943, 2019 (Released:2019-09-04)
参考文献数
50
被引用文献数
2

メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders, MTX-LPD)はWHO分類2017ではother iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disordersに属する病態であり,少量MTX投与下の自己免疫性疾患に出現する。日本人に好発し,約2/3の患者においてMTX中止後LPDが消退する。様々なLPD亜型の出現を認め,亜型によりLPD消退率,再燃・再発率,予後などが異なる。末梢血リンパ球絶対数(absolute lymphocyte count, ALC)のLPD発症,消退,再燃・再発への関与が示唆されている。その発症,臨床経過には極めて多岐にわたる因子が関与していると考えられ,その解析には注意を要する。
著者
花見 恭太 大澤 久美子 扇田 智彦 森 茂久 得平 道英 黒田 一 田丸 淳一 糸山 進次
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.111-115, 2008 (Released:2010-10-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

背景 : RA 治療に MTX を使用した症例に悪性リンパ腫の発生することが知られている. 今回われわれは, MTX を用いた RA の治療中に発生した CHL 2 例を経験したので報告する.症例 : 症例 1 は 50 代女性, 6 年間の MTX 治療後, 右腋窩リンパ節の腫脹がみられ, 生検が行われた. 症例 2 は 60 代男性, 1 年間の MTX 治療後カリニ肺炎を発症, その後右鼡径部および左頸部リンパ節の腫脹がみられ, 左頸部リンパ節生検が行われた. 2 例ともに捺印細胞診では, 小型のリンパ球, 組織球などを背景に著明な核小体を有する大型の HRS 細胞を散在性に認めた. 組織学的にも HRS 細胞が散見されたが, それらは免疫組織学的に, 症例 1 では CD30 と CD15 が陽性, CD20 陰性, 症例 2 では CD30, CD79a が陽性, CD20 が一部の細胞に弱陽性, CD15 が陰性を示していた.結論 : 細胞学的には典型的な CHL の像であったが, 本 2 例は臨床経過を踏まえると, WHO 分類で免疫不全関連リンパ増殖症の亜型として分類される MTX 関連リンパ増殖症に相当するものと考えられた. また, 免疫組織学的に症例 1 は通常の CHL のパターンであったが, 症例 2 は Hodgkin-like LPD と診断すべきだったと考えられた. このような症例は複雑な臨床経過をたどることが多く, 診断には疾患背景をよく理解したうえでの総合的な判断が必要と考えられた.