著者
田畑 亜希子 横尾 頼子 中野 孝教 徳増 実
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2010 (Released:2010-08-30)

愛媛県西条市市之川とその支流および加茂川の河川水と河床堆積物の元素組成を調べ,河川水および河床堆積物への市之川鉱山の影響を明らかにした.市之川本流の河床堆積物中のSbやAsの濃度は,市之川鉱山付近よりも下流の地点で高かった.SbやAsを多く含む粒径の細かい砕屑物が市之川鉱山から運ばれて下流で堆積していると考えられる.市之川本流の河川水中のSb,As,Fe,SO4濃度は鉱山より下流の地点でより高くなり,市之川鉱山からの粒径の細かい堆積物に含まれる輝安鉱(Sb2S3)や硫ヒ鉄鉱(FeAsS)の風化や支流の流入が影響している.市之川本流の河床堆積物中の水溶性・交換性イオンの抽出量は粒径の細かい堆積物ほど多く,特にSb,As,SO4の抽出量は市之川鉱山付近よりもさらに下流の地点で多かった.加茂川でのSbとAsの河川水および河床堆積物中の濃度,水溶態・交換態の抽出量は,市之川合流直後よりもさらに下流の地点でより高く,市之川鉱山の影響がみられた.
著者
高瀬 恵次 中野 孝教 徳増 実
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.9-17, 2021-02-26 (Released:2021-04-27)
参考文献数
13

愛媛県西条市の道前平野は西条平野と周桑平野からなる。両平野は寡雨な瀬戸内沿岸にあって地表水資源に乏しく,古くから地下水の利用がなされてきた。現在においても,生活用水の地下水依存度はほぼ100%で,地下水の保全と管理は市の重要な政策課題となっている。本報告ではこれまでの調査・研究成果をもとに,両平野における水利用,地下水を含む平野の水収支および地下水の水質の状況をまとめた。そして,両平野とも地下水涵養には水田からの浸透が重要な役割を果たしていること,国営の農業用水事業により流域外からの分水利用が行われている周桑平野に比べて,西条平野では農業用水の地下水依存度が高く,沿岸平野部では灌漑少雨期に地下水の急激な低下と塩水化が生じていることなどを示した。一方,周桑平野では平野周辺の果樹園等での肥料使用により,地下水の硝酸イオン濃度の高い地域が分布することも示した。