著者
須合 俊貴 藤原 博伸 大河内 博 内山 竜之介 中野 孝教 鴨川 仁 荒井 豊明
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.101-115, 2020-05-13 (Released:2020-05-10)
参考文献数
51

大気汚染物質が都市型豪雨生成に及ぼす影響の解明を目的として、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)で降水の時系列採取を行った。さらに、都内および周辺地域の大気観測値を用いて地理情報システムによる都市型豪雨直前の大気汚染物質の空間解析を行った。2012年から2019年までの都市型豪雨の体積加重平均pHは4.41 (n=16) であり、その他の降雨より低かった。総主要無機イオン濃度は都市型豪雨と通常降雨で同程度であるが、都市型豪雨では酸性物質由来成分が高い割合を占めた (62.3%)。都市型豪雨中酸性物質由来成分は台風性豪雨に比べて緩やかな濃度減少を示し、継続的に雲内洗浄されている可能性が示唆された。一方、都市型豪雨によるH+沈着量、NO3-沈着量、SO42-沈着量は通常降雨のそれぞれ31、20、15倍であり、短時間に大量の酸性物質を地上に負荷していた。雨雲レーダー画像解析から、都市型豪雨には都心部で発達するパターン(直上パターン、東パターン)と、西部山間部から雨雲が輸送され、都心上空で発達するパターン(北西パターン)があることがわかった。都市型豪雨発生直前には発生地点付近でPM2.5高濃度域が形成されるが、豪雨発生前に消失していた。このことから、大気汚染物質が豪雨発生地点へ輸送・集積し、上空へ輸送されて積乱雲の形成および発達に関与していることが示唆された。
著者
内田 悦生 中野 孝教
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.149-169, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
46
被引用文献数
2

Skarns are rocks consisting mainly of calc-silicate minerals (skarn minerals) such as clinopyroxene and garnet, formed by hydrothermal metasomatism along the contact zone typically between limestone and granitic rock. They are sometimes associated with economical Pb–Zn, Mo, Cu, Fe, Sn, and W mineralization (skarn deposits). Skarns consist mainly of one or two skarn minerals, and often show a zonation. In case of skarns (endoskarns) derived from Al-rich rocks such as granitic rocks and sedimentary rocks, in addition to temperature and pressure, the supply of Ca from limestone controls the zonation. On the other hand, in case of skarns (exoskarns) derived from limestone, the supply of Si, Al, Fe and Mg from related granitic rock and other rocks, degassing of CO2, and redox state govern the zonation. The mineralized metal species in skarn deposits are determined by the granitic rock related to the skarn formation. Isotope analyses revealed that magmatic water supplied from the related granitic rock is greatly involved in the early stage of skarn formation, and influence of meteoric water tends to increase in the later stage.
著者
田畑 亜希子 横尾 頼子 中野 孝教 徳増 実
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2010 (Released:2010-08-30)

愛媛県西条市市之川とその支流および加茂川の河川水と河床堆積物の元素組成を調べ,河川水および河床堆積物への市之川鉱山の影響を明らかにした.市之川本流の河床堆積物中のSbやAsの濃度は,市之川鉱山付近よりも下流の地点で高かった.SbやAsを多く含む粒径の細かい砕屑物が市之川鉱山から運ばれて下流で堆積していると考えられる.市之川本流の河川水中のSb,As,Fe,SO4濃度は鉱山より下流の地点でより高くなり,市之川鉱山からの粒径の細かい堆積物に含まれる輝安鉱(Sb2S3)や硫ヒ鉄鉱(FeAsS)の風化や支流の流入が影響している.市之川本流の河床堆積物中の水溶性・交換性イオンの抽出量は粒径の細かい堆積物ほど多く,特にSb,As,SO4の抽出量は市之川鉱山付近よりもさらに下流の地点で多かった.加茂川でのSbとAsの河川水および河床堆積物中の濃度,水溶態・交換態の抽出量は,市之川合流直後よりもさらに下流の地点でより高く,市之川鉱山の影響がみられた.
著者
奥原 洋人 有馬 眞 中村 栄子 金子 慶之 中野 孝教
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.166-166, 2008

神奈川県北西部丹沢山地の渓流水の溶存成分について2001-2008年にわたり調査・分析を行い、各溶存成分の経年変化と地殻変動の関係について評価した。地殻変動の指標として地震回数を用いた。2001-2008年の間、渓流水のpHは約4年周期で有意に変動していることが認められた。岩石・土壌起源と考えられる溶存成分間の相関を評価した。渓流水質は基盤地質を良く反映し、深成岩地域において、HCO3⁻とMg²⁺、Ca²⁺の間に有意の相関が、丹沢層群地域ではSO₄2-とanion当量との間に正の相関が、足柄層群地域ではHCO3-とSO₄2-とCa²⁺及びMg2+濃度間に正の相関が見られた。さらに、深成岩地域の断層にそって鉱泉水が認められ、その近傍の渓流水には、SO₄²⁻とCa²⁺、Mg2+間で正の有意の相関が見られた。2001-2008年に丹沢山地の地震観測点で得られた震度1以上の有感地震回数と渓流水質の相関を評価した。地震回数とpHとの間に良い相関が認められた。渓流水質のpHは、震源の位置に関わらず、地震動の回数に大きく影響されていると考えられる。さらに、地震回数と各溶存成分濃度との間にも有意の相関が認められた。堆積岩地域において、地震回数と渓流水のHCO3⁻およびMg²⁺との間に同位相で正の相関が見られた。一方、深成岩や丹沢層群地域では地震発生から半年遅れて地震回数と渓流水の多くの陽イオン及びHCO3⁻との間に正の相関が見られた。更にSO₄2-濃度の高い鉱泉水地点ではSO₄2-との間に良い正の相関が見られた。 このような、渓流水質と地震活動の間に認められた相関は、鉱泉水から渓流水へのフローが地震活動により変動したか、あるいは、基盤岩に存在する割れ目の風化面が地震活動により更新され、岩石に含まれる各種イオンの溶脱が活発になったことを示唆している。
著者
鹿園 直建 荒川 貴之 中野 孝教
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.323-342, 2014-06-25 (Released:2014-07-03)
参考文献数
26
被引用文献数
2 6

Water samples (number of samples = 52) were collected from the vicinity of the southern foot of Mt. Fuji, central Japan, and were analyzed for major elements (Si, Al, Fe, Mg, Ca, Na, K, Cl-, HCO3-, NO3-, etc.) and other chemical properties (pH, EC, ORP, etc.). The results show that major element concentrations increase with decreasing elevation, particularly at a low-elevation site. In the Yoshihara area, located at the southwestern foot, anion and cation concentrations vary widely and increase from west to east. In this area, water samples with a high total concentration tend to contain a high NO3- concentration, suggesting NO3- pollution of the groundwater. By contrast, in the southeastern area, NO3- pollution was not recognized. Based on nitrogen isotopic and ionic concentration data, the high NO3- concentration in the southwestern area is considered to be due to inorganic fertilizer (e.g. (NH4)2SO4) used at tea farms. Analytical results show two groundwater flows in a high-elevation area along the Urui River and in the direction from a high-elevation site at the southwestern foot toward Susono City, and that they mix together at a low-elevation site. In the southeastern foot area, two groundwater flows derive from a high-elevation site on Mt. Fuji along the Gotenba mudflow and the Mishima lava flow. The latter groundwater mixes with groundwater derived from Ashitaka and the Hakone mountains.
著者
高瀬 恵次 中野 孝教 徳増 実
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.9-17, 2021-02-26 (Released:2021-04-27)
参考文献数
13

愛媛県西条市の道前平野は西条平野と周桑平野からなる。両平野は寡雨な瀬戸内沿岸にあって地表水資源に乏しく,古くから地下水の利用がなされてきた。現在においても,生活用水の地下水依存度はほぼ100%で,地下水の保全と管理は市の重要な政策課題となっている。本報告ではこれまでの調査・研究成果をもとに,両平野における水利用,地下水を含む平野の水収支および地下水の水質の状況をまとめた。そして,両平野とも地下水涵養には水田からの浸透が重要な役割を果たしていること,国営の農業用水事業により流域外からの分水利用が行われている周桑平野に比べて,西条平野では農業用水の地下水依存度が高く,沿岸平野部では灌漑少雨期に地下水の急激な低下と塩水化が生じていることなどを示した。一方,周桑平野では平野周辺の果樹園等での肥料使用により,地下水の硝酸イオン濃度の高い地域が分布することも示した。
著者
中野 孝教 荒矢 大輔 飯田 史哉 石本 達成 伊戸 康清 猪嶋 清文 今村 智子 江川 勇飛 小澤 弘幸 帰山 寿章 片瀬 靖規 酒井 元哉 佐藤 実 澤田 誠司 下島 浩平 野田 博幸 松田 智幸 松本 高志 山田 明弘 山田 佳裕 山下 勝行 岡野 修 岸本 圭祐 勝見 尚也 山中 勝 城間 吉貴 大河内 博
出版者
日本地学教育学会
雑誌
みんなの地学 (ISSN:24356441)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.10-15, 2020-06-30 (Released:2021-12-02)
参考文献数
10

人間社会は岩石や水,生物,大気などの様々な自然資源を開発し利用することで発展してきたが,それに伴い環境は変化し時に汚染や災害など生存にかかわる問題を引き起こしてきた.地学は持続可能な社会を支える必須な学問であるにもかかわらず,高校地学の履修者は少なく,教師も研究者も減少している.人間と自然の関係は複雑だがシームレスにつながっており,共に地域的な多様性に富むという特徴がある.地球環境研究は社会変革につながる学際研究,大学は地域貢献,自治体は地域創生が求められるようになってきた.ここでは健全な水循環の実現に向けて,大学と小学校が連携しながら,地域性が強い水資源を観測・調査している福井県大野市の例を紹介し,生徒の環境リテラシーの向上と地学研究を協働して推進する地学教育の可能性を考えてみたい.
著者
安仁屋 政武 青木 賢人 榎本 浩之 安間 了 佐藤 和秀 中野 孝教 澤柿 教伸
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

エクスプロラドーレス氷河の前面にある大きなモレインの形成年代を推定すべく周辺で合計15点の^<14>Cによる年代測定試料を採取した。大きなモレインの6つの試料の年代は9250BPから820BPである。このデータからは形成年代に関して確定的なことは言えないが、モレインの堆積構造、試料の産出状況、植生、年輪などから14-17世紀頃の小氷期に形成されたと解釈した。氷河観測では、D-GPS静的測位を用いた氷河流動測定、 D-GPS動的測位を用いた氷河表面形態の測量、5MHzアイスレイダーによる氷厚測定を行った。流動は各期に氷河上の巨礫を反復測定し、末端部付近では50m、アイスフォール下部では140m程度の水平流動を得た。また、末端部付近では著しい上方向の流動があることが観測された。レイダーによる氷河末端付近の氷厚は260〜300mと推定された。氷河流域の年間水収支を算出し、それにより氷河の質量収支を推定した。2004年12月から末端付近に自動気象・水文観測ステーションを設置し、観測を継続している。また、夏季(2004年12月)、冬季(2005年8月)の双方で、氷河上の気象要素分布・表面熱収支・融解量分布などの観測を実施して、氷河融解の特性を明らかにした。2004年12月から2005年12月までの1年間における末端付近の平均気温は7.4℃、降水量は約3300mm、さらに氷河流出河川の比流出量は約6600mmであった。ペリート・モレーノ氷河において、中流部の表面高度測量および歪速度観測、カービングフロント付近の氷河流動の短期変動観測および写真測量、融解観測、氷河湖水位観測、中流部におけるGPS記録計による年間流動の観測、氷河脇山腹における長期写真記録および温度計測を行なった。近年上昇していた中流部の表面高度が2004年〜2005年で減少していた。この地域に2004-2005年の期間にストレイングリッドを設置してひずみや上昇速度を観測したが、大きな下降速度が計算された。また移動速度は0.8〜1.2m/dayの値が観測された。氷河末端部の測量からは、1.5m/dayを超える速度が多くの地点で観測された。
著者
渡辺 幸一 朴木 英治 久米 篤 青木 一真 中野 孝教 石田 仁 松木 篤 岩坂 泰信 松木 篤 田中 泰宙
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高所に出現する弱い黄砂(バックグランド黄砂)の動態やその自然環境へ及ぼす影響を評価するため、立山において、エアロゾル粒子、微量気体成分、降水、霧水、積雪などの観測・分析を行うと共に、植生への影響について検討した。年度による程度の違いはあるものの、毎年秋期に「バックグラウンド黄砂」の影響がみられることがわかった。立山山の植生は、大気汚染物質だけでなく、黄砂粒子の影響も大きく受けている可能性が示唆された。また、立山での観測と並行して、回転翼航空機による富山県上空大気観測も行った。観測結果から、高所では高濃度の光化学オキシダント物質に植生が晒させやすいと考えられる。