著者
小佐古 敏荘 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

研究は以下の2つの項目にわけて行なわれた。1.原爆爆発地点からの中性子の自由空気中の輸送現象の評価中性子の空中伝播特性を線量評価の観点から、主として大型計算機による中性子輸送計算法により評価した。計算に際してはレイエフェクト等の計算法に基づく誤差をさけるため最近のモンテカルロコードMCNPを用いた。2.広島の残留放射能の測定結果の解析評価広島の岩石中に残留する【^(152)Eu】の放射能測定を広島大学グループと共同でおこない、この結果を解析し原爆爆発時の中性子情報を得た。これらの結果は(1)広島大との共同の論文(1)形で米国Health Physics誌に投稿,印刷中(2)米国政府NCRP(放射線防護審議会)第23回年会で招待講演(1987年4月)(3)解析結果を中心とした論文とし米国Health Physics誌に投稿準備中である。(3)の論文の要旨を示すと‥‥「広島原爆の中性子線量再評価を元安橋橋柱の花崗岩中41.5cm深さの【^(152)Eu】残留放射能を用いておこない、爆心よりSSW方向1.32m地点における中性子線量(空気中ティシュカーマ)を15.5Gyであると実験的に評価した。これは従前のT65Dの値121Gy/12.5kt,Loeweらの値65.2Gy/15kt,Kerrらの値24.6Gy/12.5kt,DS86システムの値31.4Gy/15ktよりもさらに小さいものであった。これに対して広島原爆の弾頭部からの放出中性子の異方性を示す【IV】halenの実測データを用いた補正をおこなえば、これらは各々60.3Gy,27.1Gy,12.3Gy,13.1Gyとなることがわかり、地上での線量評価にはソース点での非等方効果を正しく評価する必要性が示された。また、ここでの実測値に元づくデータ、15.5Gyと、DS86のデータとから広島原爆の線源強度を推定すると17.7ktとなり、Kaulの最近の推定値17ktに近い数値となった。」‥‥となっている。
著者
小佐古 敏荘 志田 孝二 杉浦 紳之 岩井 敏 東郷 正美
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

(1)自然界にはバックグラウンド放射線が存在し、キャリブレーションファントムの測定においてはバックグラウンド放射線の安定化を図ることが、精度の良いホールボディカウンタ測定のためには極めて重要である。このため、自然放射線のうち変動幅が大きいと考えられるラドン(気中放射能)をとりあげ、ラドン濃度の変化がホールボディカウンタ測定値に及ぼす影響、気象条件や測定室・鉄室の換気条件とラドン濃度の関係を検討した。この結果、大地からの影響を受けにくい建屋屋上に呼気口を設け、高性能Hepaフィルターを通す形で十分換気を行うことにより、安定したバックグラウンド測定条件を得ることができることが判明した。(2)体内被曝線量評価システムは、昨年度、開発したデータ処理プログラムのアウトプットとして得られる核種、体内負荷量の情報に加え、体内動態モデルとして国際放射線防護委員会(ICRP)が刊行物No.30で提示したモデルを採用し、そこから得られる初期負荷量、線量換算係数を組み合わせて構築した。(3)本計測システムの実用条件への適用性の評価のため、点線源、人体模擬ファントム(K-40,Cs-137)および人体についてそれぞれ測定し、放射性物質の位置・分布状態の違いによる16本の光電子増倍管を通して得られるエネルギースペクトルへの影響について検討を行った。その結果、点線源の測定結果から得られたスペクトル形状の変化、人体模擬ファントムと人体の測定結果の比較から、広く低濃度で分布する人体内の放射性物質の定量が可能であり、詳細な位置情報もある程度推定できることが明らかとなった。
著者
小佐古 敏荘 西村 和雄 沢田 一良 平野 尚 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は陽子ビ-ムによる簿層放射化法を用いたトライボロジ-計測法を、基礎実験、応用計測の両面から確立しようとするものである。研究においては以下の諸項目にわたって検討を加えた。(1)タンデムバンデグラ-フ加速器を用いた簿層放射化法の検討7MeVの陽子ビ-ムを鉄材料に照射し、^<56>Fe(p,n)^<56>Co,^<57>Fe(p,n)^<57>Co,^<58>Fe(p,n)^<58>Coの反応を起こさせ、数ケ月の短半減期放射化コバルトを鉄表面数十μmに作った。照射は大型散乱槽内で行い、照射ジグを作り照射野を特定できる形にし、照射電流もモニタできる測定系を整えた。(2)鉄試料中の放射化生成物分布の測定(1)で放射化されたテストピ-スに純Ge放射線検出器を用いて、生成核種を測定した。また(1)研磨装置を用いて〜1μm位づつ研磨して、減衰γ線をGe検出器で測定し、摩耗量対放射線減衰の校正曲線を作成した。(ii)標準デ-タとして、鉄の箔(約10μm)を購入しこれを積層させて放射化し、鉄内放射化分布を調べた。(3)上記の(2)の鉄研磨デ-タと箔の実験結果を比較の上、^<56>Co/^<57>Co,^<56>Co/^<58>Coの比の形で摩耗量が表せるよう実験デ-タを整理し、解折計算を行い,汎用な校正関数を作成した。(4)本方法を実際の機械摩耗部分に適用してみるために、自動車エンジン部品摩耗試験のためのテストベンチを作成した。(5)(4)のテストベンチのカムノ-ズ摩耗部に対して、陽子ビ-ムによる簿層放射化法を用いたトライボロジ-試験を実施した。試験に当っては、最適コリメ-タの検討、検出器の最適配置、自動計測システムの構築、オンラインデ-タ処理プログラムの開発などをおこなった。(6)本方法の総合的検討をおこない、実用に供せられる形でのまとめを行なった。
著者
小佐古 敏荘 四方 隆史 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は100MeV以上の電子、陽子、重イオンの高エネルギ-加速器からの放射線遮蔽をリ-ス項、遮蔽特性の観点から、数値計算及び実験の双方から系統的に研究を進めようとするものである。研究は以下の3項目に関して進められ検討された。(1)高エネルギ-放射線種々の物質の遮蔽特性の数値計算による検討遮蔽に用いられる各種物質の基本的な遮蔽減衰特性を求めるために、1次元S_N輸送計算コ-ドANISNを用いて解析計算をおこなった。使用した中性子断面積はDLCー87/HILOで、中性子エネルギ-は400MeVからThermalまでである。散乱ルジャンドル展開項はP_3まで、S_Nの角度分点はS_<16>である。入射中性子は単エネルギ-のものを考え、3m厚の無限平板体系に垂直入射の条件で入射させた。鉛、鉄、重コンクリ-ト、コンクリ-ト、大理石、パラフィン、水などについての計算を行い、線量当量の空間分布図の形で結果を得た。(2)大型加速器施設(理化学研究所リングサイクロトロン)における実験重イオンビ-ムによる放射線の発生測定のためには、ガンマ線用に電離箱を、中性子用に放射化箔(C、Al、Au、Ag、Ni、In等)および減速材型中性子検出器を用い、生成量及び角度分布測定を試みた。タ-ゲット条件としては、Nイオンビ-ムを核子当り135HeVに加速したものを鉄の厚いタ-ゲットに入射したものを設定した。遮蔽デ-タとしては、主として減速材型検出器を用いて、コンクリ-ト壁の透過デ-タ、迷路部のストリ-ミングデ-タを中心に測定した。(3)高エネルギ-放射線の発生項の評価上記条件下での高エネルギ-粒子発生についてはモンテカルロ計算コ-ドNMTCにより評価し、総合的な形で、実験値との差異、計算上の問題点を検討した。