著者
志田 寛
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.107-111, 2010 (Released:2012-04-01)
参考文献数
16

代表的なプロバイオティクスであるLactobacillus casei YIT 9029(乳酸菌シロタ株)は、生きて腸管内に到達し、腸内フローラの制御や代謝産物の産生を介して整腸効果を示すばかりでなく、宿主免疫系に働きかけて様々な保健効果を発揮する。特に、発癌リスク低減効果やNK活性回復効果を支持するデータが多くの動物試験や臨床試験で得られている。近年、アレルギー疾患の制御にプロバイオティクスを利用しようとする試みが様々な菌株を用いて行われており、L. casei YIT 9029は本分野の研究において先駆けとなったプロバイオティクス株のひとつである。本総説では、インターロイキン-12(interleukin-12; IL-12)産生誘導を介するTh1/Th2バランスの制御がプロバイオティクスによるアレルギー抑制機序のひとつであることを明確に示した研究例に加え、L. casei YIT 9029含有乳酸菌飲料の花粉症患者に対する臨床試験の成績について紹介する。