- 著者
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志賀 勉
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
本研究は、居住収縮が進む戸建て住宅地における住宅・宅地ストックの社会的管理のあり方を検討するための基礎として、空宅地の用途転換と飛び地利用の実態を調査し、その特性を分析することを目的としている。本研究では、郊外戸建て住宅地と斜面住宅地を対象に行った調査結果をもとに、空宅地の用途転換の傾向と菜園利用における飛び地利用の特性について分析を行い、以下を明らかにした。1.空宅地の用途転換について:空宅地の用途転換では、空宅地の規模や立地条件等の物的属性が新たな用途を制約する。特に駐車場や農園への用途転換にはこの制約が大きく、戸建て住宅地の平均的な画地規模では用途転換のメリットが小さい。これに比べて、菜園は空宅地の物的属性の制約が小さく、小さな画地の用途転換にも向いている。2.菜園利用における飛び地利用の特性について:空宅地の菜園利用は、利用者数と土地所有の関係から利用型が分けられ、また、利用者の自宅から菜園までの経路距離と利用面積との関連が認められた。さらに、自宅庭の使い方と空宅地菜園の使い方は相互に関連しており、空宅地が自宅庭の延長として利用者に認識されていることが理解された。3.戸建て住宅地管理のあり方について:居住収縮の進む戸建て住宅地の全体的な管理を行うためには、地区住民のニーズや空宅地の属性等の詳細な情報を把握した上で、住宅・宅地ストックの管理方策を検討する必要がある。本研究で分析した飛び地利用は、点在する空宅地の管理方策として、所有者の管理負担を軽減し、かつ地区住民のニーズにマッチした有効な手段のひとつと考えられる。