著者
椙村 春彦 志賀 淳治 森 亘
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.171-180, 1987

ほぼ半年以上にわたり,臨床的に慢性肝疾患が存在したことが推定或いは病理学的に確認されている症例で,末期に劇症肝炎様の経過をたどり死亡し,剖検にふされた症例を病理学的に検討した.背景となる慢性肝疾患にはB型肝炎ウイルスキャリアー,慢性肝炎,肝硬変,バンチ病,ルポイド肝炎,アルコール性肝障害,トロトラスト沈着症があり,手術・輸血・アルコール多飲,重篤な感染症などを契機に劇症化していた.B型肝炎ウイルス陽性例の劇症化例で調べた範囲では組織中のデルタ抗原はみとめられなかった.病理学的には広汎性或いは亜広汎性の肝細胞の脱落が主たる変化であったが,循環障害性の要因が重要かと思われる地図状壊死,小葉中心静脈周囲のつよい壊死,血栓などが散見された.ステロイド長期投与,他臓器の血栓性病変,エンドトキシン血症などを勘案すると,肝における臓器型シュワルツマン反応として説明し得る症例もあった.