著者
井上 大輔 宮本 定治 惠飛須 俊彦 藤尾 圭司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-193_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】腰椎椎間板ヘルニア(LDH)患者では多裂筋の組織学的変化が報告され、罹患側にて萎縮が生じる可能性が示されている。一方、MRI画像を用いて多裂筋の萎縮を示した報告も散見されるが、罹患高位と萎縮が生じる明確な部位については一定の見解が得られていない。また、多裂筋を除く傍脊柱筋を検討した研究は少なく、ヘルニアが傍脊柱筋に及ぼす影響は不明である。本研究の目的はLDH患者において傍脊柱筋の筋断面積(CSA)を測定し、罹患高位と萎縮との関連性を明らかにすることである。【方法】対象は 2013年4月から2018年4月に当院整形外科を受診した腰痛を有するLDH患者63名(L4-5:32名、L5-S1:31名、年齢36.8±8.3歳、罹病期間3.4±4.0ヶ月)であった。両側性の下肢症状、多椎間のヘルニア、腰部の手術既往を有する者などは除外した。CSAはMRI画像にてCraigらの報告に準じ、L1からL5の下部椎骨終板およびL5からS1の上部椎骨終板の計7スライスを用い、大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋、多裂筋を罹患側と非罹患側で計測した。得られた各CSAはL4上縁椎体面積で除し正規化した。統計処理は、各スライスの罹患側と非罹患側におけるCSAの比較をMann-WhitneyのU検定およびχ2適合度検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】L4-5ヘルニア患者ではL4、L5上縁、L5下縁、S1で、L5-S1ヘルニア患者ではL5上縁、L5下縁、S1で罹患側の多裂筋CSAは非罹患側と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。また、L4-5ヘルニア患者ではL4、L5上縁、L5下縁、S1で、L5-S1ヘルニア患者ではL5上縁、L5下縁、S1で罹患側の多裂筋が萎縮している割合が有意に高かった(p<0.01)。一方、大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋は全てのスライスにて罹患側と非罹患側で有意差を認めなかった。【結論(考察も含む)】L4-5およびL5-S1ヘルニア患者において罹患側の多裂筋に萎縮を認めた。多裂筋は棘突起と同高位の脊髄神経後枝内側枝から分節性に神経支配を受けるため、罹患高位に一致した萎縮が生じた可能性がある。LDH患者では多裂筋の筋線維サイズが罹患側で有意に減少すると報告されており、MRI画像上のCSAにおいても組織学的変化が反映されたと考えられた。また、本研究では罹患高位に隣接する多裂筋にも萎縮を認めた。対象者は全例で腰痛を有しており、不活動やreflex inhibitionにより萎縮が生じた可能性がある。一方、大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋は筋の形状や神経分布形態などの観点からヘルニアの影響は受けにくいと推察された。今回の検討により、腰痛を有する単椎間のLDH患者は、罹患側の罹患高位および隣接椎体の多裂筋に萎縮が生じる可能性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本発表はヘルシンキ宣言を遵守し、当院倫理審査委員会の承認(承認番号:第30-60号)を得ている。
著者
掛谷 佳昭 山本 洋司 渡辺 広希 惠飛須 俊彦
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-16, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
34

【目的】レンズ核線条体動脈(lenticulostriate artery:以下,LSA)領域のBranch Atheromatous Disease(BAD)患者に対する発症24時間以内の離床が運動機能および進行性脳梗塞に及ぼす影響について後方視的に検討すること。【方法】対象は2014年から2018年に当院へ入院したLSA領域のBAD患者とし,早期群と通常群の2群に分けた。年齢,性別,BMI,脳卒中危険因子,脳卒中既往歴,発症前modified Rankin Scale(mRS),入院時National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS),発症から立位開始までの時間,入院時および転帰時の下肢Fugl-Meyer Assessment(FMA),転帰時Barthel Index(BI),転帰時Functional Ambulation Categories(FAC),進行性脳梗塞の有無,進行性脳梗塞例の離床前後の収縮期血圧,リハビリ実施時間,実施回数について調査した。【結果】早期群17名,通常群13名であった。転帰時の下肢FMAは入院時と比較して両群共に有意に高値であった。BIは両群間に有意差を認めなかったが,自力歩行獲得例は通常群と比較し早期群で有意に多かった。進行性脳梗塞は両群間で有意差を認めなかった。【結論】LSA領域のBAD患者に対する発症24時間以内の離床は,安全かつ運動機能,歩行能力向上に繋がる可能性が示唆された。今後は研究デザインやサンプルサイズを考慮したさらなる研究の実施が必要になる。