著者
成尾 英仁 中摩 浩太郎 渡部 徹也 鎌田 洋昭 西牟田 瑛子 松崎 大嗣
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.211-228, 2019

<p>薩摩半島南東端に位置する開聞岳(924m)では,平安時代の貞観十六年(AD 874)と仁和元年(AD 885)に噴火が発生した.開聞岳東方の指宿市街地に位置する敷領遺跡・橋牟礼川遺跡では,貞観十六年テフラに対比されるKm12a3~4(紫コラ)下位から,噴火で被災した遺構・遺物が発見されており,噴火災害の様相と当時の人々の対応が明らかになってきた.本論では,遺跡内外でのKm12a3~4の堆積状況と「日本三代実録」の記録とを対比し,居住地域や耕作地が埋没するなどの災害が生じたこと,噴火途中で降雨によるラハールが発生したことなど,記録と発掘結果が整合することを示した.Km12a3~4が厚く堆積した地域では,噴火後に復旧作業を実施しなかったか,途中で断念し集落を完全に放棄した.一方,分布主軸からはずれた地域では復旧がなされ,噴火後の政治・経済の中心となったと推定される.</p>
著者
成尾 英仁 小林 哲夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.287-299, 2002-08-01
参考文献数
37
被引用文献数
5 11

薩摩・大隅半島南半部と南方海域に位置する種子島・屋久島において,6.5ka BPに鬼界カルデラで発生したアカホヤ噴火に伴った地震の痕跡が多数見つかった.地震の痕跡は,薩摩・大隅半島南半部では砂や軽石・シルトが噴き出す噴砂脈であるが,種子島・屋久島では礫が噴き出した噴礫脈である.噴砂脈は薩摩半島中南部と大隅半島中部のシラス台地上に集中しており,シラス(入戸火砕流堆積物:A-Ito)の二次堆積物から発生するものが主体である.一方,噴礫脈は種子島・屋久島の海岸段丘面上に存在しており,礫に富む段丘堆積物から派生したものと,基盤をつくる熊毛層群の風化・破砕された礫から発生したものとがある.<br>これら噴砂・噴礫脈の発生時期であるが,種子島・屋久島地域での噴礫の発生は火砕流噴火の直前~同時期の1度だけであったが,薩摩・大隅半島南半部での噴砂は噴礫の発生と同時期だけでなく,鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah)の降下中にも発生した.<br>すなわち,最初の巨大地震は,種子島・屋久島地域から薩摩・大隅半島南半部にわたる広い範囲で噴礫・噴砂を発生させたが,2度目の地震は数時間ほど後に発生し,震源はより北部に移動した可能性が大きい.